「誰も知らない小さな国」で、現代児童文学(定義などは他の記事を参照してください)のスタートを飾ったと言われている佐藤さとる(創作だけでなく、「ファンタジーの世界」のような啓蒙的な専門書の著作もあります)が編集したアンソロジーの巻頭作です。
この作品の初出は、1970年6月に出版された作者の短編集「ユングフラウの月」です。
主人公(作者の分身と思われます)と狐の親子との交流を、彼の山小屋(別荘)を舞台にして描いています。
作者自身が好きなアウトドアライフと動物ファンタジーを融合させた、作者独自のおしゃれな短編になっています。
野外調理用のスウェーデン鍋や固形スープなどともに、がんもどきを登場させるなど、和洋折衷のユニークな作品世界を展開しています。
編者は、巻末の解説でこの作品について、
「こんなタイプの作品を書く作家は、おそらくこの人をおいてほかにいないのではないかと思う。澄んだシロホンの音色のようにハイカラな作風だが、その底には江戸以来の日本人のユーモアが漂っていて、思わずひきこまれてしまう」
と、書いていますが、全く同感です。