現代児童文学

国内外の現代児童文学史や現代児童文学論についての考察や論文及び作品論や創作や参考文献を、できれば毎日記載します。

石川宏千花「拝啓パンクスノットデッド様」

2022-04-30 18:09:31 | 作品論

 第61回日本児童文学者協会賞を受賞した作品です。

 シングルマザーの母親(父親はもともと不明)から半ばネグレクトされていて(最低限の生活費は送られてきています)、バイトを掛け持ち(飲食店と個人経営の百均)して、中2の弟(こちらも父親は不明。主人公の父親とは違うかもしれない)の面倒をみている高1の少年が主人公です。

 彼の唯一の夢は、いつの日か弟とパンクのバンドを組むことです。

 本人はベースがけっこう弾けて、弟はボーカルができます。

 後は、ギターとドラムのメンバーが必要です。

 ひょんなことから、軽音部の紹介で、野外音楽会に出場できることになります。

 一緒に出場するメンバーを探していた主人公は、バイト先の大学生の紹介で、彼の属するサークルのバンドでベースを弾く代わりに、ギターとドラムのメンバーを得られます。

 クライマックスは当然音楽会での演奏ですが、それまでのいろいろなトラブル(母親が弟だけを引き取りにくる。親代わりに面倒を見てくれていた母親のバンド仲間の男性との行き違い。ギターを担当してくれることになっていた女子大生との関係(彼女はコミュニケーションが苦手で、実はバンド経験がまったくなくて、一緒に演奏するのは無理だった。そんな彼女に、主人公は淡い恋心を抱いていた)など)を経験する中で、主人公が成長していく姿を巧みに描いています。

 作者はもともとエンタメ系の書き手だったようで、ストーリーの盛り上げ方や、キャラの立て方などが非常にうまく、読者を飽きさせません。

 そうしたエンタメ性の強いストーリーの中で、ネグレクトやコミュニケーション障害などの今日的なテーマをしっかり描いています。

 また、パンクやバンドなどの知識が豊富で深いようで(私はパンクにはそれほど詳しくないので、すべてを正しく評価できませんが)、ストーリーのリアリティを保証しています。

 

 

 

 

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オリエント急行殺人事件

2022-04-23 10:40:00 | 映画

 1974年公開のアメリカ映画です。

 1934年に出版されたアガサ・クリスティの代表作(容疑者全員が犯人だったという奇抜なラストで有名です)の映画化です。

 名探偵エアキュール・ポアロ役のアルバート・フィニーをはじめとして、リチャード・ウィドマーク、ローレン・バコール、ショーン・コネリー、イングリット・バークマン、アンソニー・パーキンス、マーティン・バルサム、ヴァネッサ・レッドグレイヴといった綺羅星のごとくのオールスターキャストで、重厚に映像化されました。

 なお、2017年にも再び映画化されていますが、そのできは前作に遠く及びません。

 

 

 

 

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宇宙兄弟

2022-04-14 15:24:57 | 映画

 2012年公開の日本映画です。

 人気コミックスを、小栗旬と岡田将生を主役の兄弟にして、実写映画化しました。

 四十巻に渡る大長編を二時間強の映画にまとめたので、原作の時間設定を無視して、兄(六太)のJAXA受験と弟(日々人)の月着陸を同時期にするなどの改変が行われたため、賛否両論あるようです。

 ただし、幼いころの宇宙への挑戦の夢を実現していく二人の様子は、よく描かれていたように思えます。

 JAXAやNASAの協力のもと、打ち上げ基地や打ち上げの様子は迫力をもって描かれていました。

 ただ、月の表面での活動においては、重力が六分の一な様子があまり感じられませんでした。

 最後に、エピローグのようにして描かれた二人同時の月着陸には、それまでがピンチ(兄の受験での苦戦や弟の月面での事故など)の連続だっただけに、安心させられました。

 

 

 

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少女ポリーナと7つの迷宮

2022-04-12 15:58:37 | 映画

 2019年公開のウクライナ、ベルギー、フランスの合作映画です。

 ウクライナの映画スタジオを舞台に、主人公のポリーナがそこで知り合った仲間たちと不思議な冒険をします。

 映画自体は、子供向けを意識したのか単純化されすぎてていて、大人の観客には物足りません。

 しかし、ロシアによるウクライナ侵攻後に見たので、この映画の舞台の平和な国が侵略者に蹂躙されているのだと思うと、感慨深いものがあります。

 実社会でも、この映画のようにハッピーエンドになることを祈らざるを得ません。

 

 

 

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ミナリ

2022-04-01 18:25:10 | 映画

 2020年公開のアメリカ映画です(ただし、ほとんどのセリフは韓国語です)。

 韓国から移住してきた家族(両親と小学生ぐらいの姉と弟、そこに母方の祖母が加わる)が、なれない農場経営や息子の心臓の病気などで苦労しながらも懸命に生きていく姿を、彼らの喜怒哀楽を通して描いています。

 祖母役のユン・ヨジョンがアカデミー賞の助演女優賞を受賞するなど、アメリカでは高い評価がされていますが、正直言って期待外れでした。

 エピソードが断片的で、全体的なつながりが弱いです。

 特に、農場を優先するか、家族を優先するかで、対立していた夫婦の問題がラストで投げ出されたままで終わったのには、拍子抜けがしました。

 また、ユン・ヨジョンは好きな女優さん(「ブーメラン・ファミリー」では訳アリの母親役を飄々と演じていました(その記事を参照してください)など)なのですが、この映画での演技が賞に値するとは、とても思えませんでした。

 

 

 

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