竹心の魚族に乾杯

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黄色い天然鮎のカロテノイドについて

2009年02月10日 21時08分16秒 | やまめ研究所
ちょっとこのところ、長たらしい文章が続いたんで、ここらでお口直しということで!

以前紹介した「エビ・カニはなぜ赤い」ですけど、タイトルからして甲殻類に関する本かと思いきや!実に、天然の鮎に関する記述が載っていますんで、引用させていただきます。




(1) アユのカロテノイド

アユのカロテノイドはゼアキサンチンが主成分で40~90%にもおよんでいる。アユに近縁のキュウリウオ科のワカサギ、チカ、シシャモ、キュウリウオや、シラウオ科のシラウオについてもアユの場合と非常によく似たカロテノイドのパターンで、ゼアキサンチンが主成分(50~92%)になっている。
また、ガロキサンチンは琵琶湖産アユに認められているが天然の海で生まれたアユにはないカロテノイドである。釣ったアユが琵琶湖産のアユを放流したものなのか、海産なのか、知りたい場合は、ガロキサンチンの存否が化学的な指標になるだろう。

(2) 黄斑のカロテノイドはどこから来た?

アユの体色を作っているカロテノイドは、すべてアユが食べている藻類に由来している。アユは一般に珪藻を食べると言われている。しかし例外もある。高知県では河川にはえる藻の主力は珪藻ではなく、藍藻(らんそう)類の一種、ビロウドランソウであり、アユもこれを食べている。藍藻が優先種となるのは高知の川の水温が高いためだ。高知県の河川では石の表面とアユの腹腔内は同じ褐色をしているが、その物質の本体は珪藻ではなく藍藻だったというわけである。
ところで、アユのカロテノイドはゼアキサンチンが主体となっていることは先にも述べたが、アユの特徴である体表の黄斑もゼアキサンチンである。
アユのカロテノイドは餌に含まれているものから来ている。高知県の河川に生える藍藻中にはゼアキサンチンが少量含まれているので、これがアユに取り込まれて、特異的に効率よく吸収蓄積されたと考えれば、黄斑がゼアキサンチンの色であることはうなずける。
しかし、古くからアユと関わりの深い京都府など、南国高知以外の川などでは、水温が低いため、藻類の中でも珪藻が主体となっている。この事実から考えると、アユにおけるゼアキサンチンの存在が理解できなくなってしまう。というのは、珪藻のカロテノイドはフコキサンチンが主成分で、ゼアキサンチンは全く存在しないからだ。

(3) アユが藍藻を育てる

この謎の真相は次のように明らかになった。中央水産研究所では、アユの摂餌行動と河川の石に付着する藻類についての、大変興味深い研究を行っている。それによると、アユが棲んでいる河川の石には初めは珪藻が付着している。しかし、アユが珪藻を食べてしまうため、次第に珪藻に代わって糸状藍藻が優先するようになると言う。すなわち、アユの餌環境は自らの摂餌による影響を受けることが明らかになってきたのである。アユの摂餌行動が藍藻の増殖を促進し、結果として藍藻に含まれているゼアキサンチンをアユが取り込み、黄斑の形成に役立つことになるというわけだ。(松野隆男「エビ・カニはなぜ赤い」、成山堂書店、2004年)




まだまだ「鮎は珪藻を食べる」っていう説も有力です。でもやっぱりこれを読むと、天然のヤマメも天然の鮎も、黒い石を釣るべし!なのかな~と思います。

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