スイート・イースト 不思議の国のリリアン
劇場公開日:2025年3月14日

サウスカロライナ州の高校3年生リリアンは、彼氏のトロイ、親友のテッサ、何かとトロイにちょっかいを出してくるアナベルたち同級生と、修学旅行でワシントンD.C.を訪れている。はしゃぐクラスメイトを、ひとり冷めた目で眺めている、どこか物憂げなリリアン。夜、皆で抜け出して行ったカラオケバーで、陰謀論に憑りつかれた若い男による銃乱射事件に巻き込まれてしまう。その場にいたド派手なパンク・ファッションのケイレブに導かれ、店のトイレに逃げ込むと、大きな鏡の裏に“秘密の扉”があった。それは地下通路へと繋がっていた・・・。
監督コメント
『スイート・イースト 不思議の国のリリアン』は、アメリカの空に放たれたフレア(発光弾)のような作品です。アメリカがこの映画を生み出しました。
私たちは、自分たちの故郷に関連する何かを作りたかったのです。実際、アメリカは古い国ですが、その背中は力強く、筋肉はたくましく、関節はしなやかです。私たちがこの先、どこへ向かうのか、ワクワクしませんか?
私たちは深刻に捉えすぎているのではないでしょうか。
本作は、アメリカ映画史への言及により、独自の意義を示唆しています。
私たちは愛国者であり、アメリカは個性と色彩に富んだ国なのです。
物語のヒロインはリリアン。彼女は私たちの国のように、賢明でありながらも世間知らずに見えることがあります。
彼女はまだ自分の道を模索している若い女性なのか? それとも、最も早く立憲民主主義が確立された国のように、すっかり成熟しているのだろうか?これは成長を描いたロードムービーなのか? それとも、自分が誰なのか100%分からないまま、自分を貫いていく物語なのか?
重要なのは、確信が持てないということ。なぜなら、確信によって足元をすくわれるからです。
ショーン・プライス・ウィリアムズ
藤田直哉 キネ旬の星トリ評
★ノスタルジックな少女趣味の画調と衣装でヒロインの魅力を写しながら、アメリカン・ニューシネマを思わせる撮影方法や編集と旅で、現代アメリカのさまざまな政治的問題や集団を次々に見せる、野心的な作品。懐古的な画面と衣装と女性の美の描き方なのに、オルタナ右翼の陰謀論・ピザゲート事件を思わせる事件から物語が転がりだす。ジャンルや時代を錯誤した独自のハイブリットなスタイル自体が、過去志向と未来志向の混濁する現代アメリカに即した批評性を発揮し見事。