chuo1976

心のたねを言の葉として

「望郷の詩」    島村静雨

2017-02-13 05:24:14 | 文学

「望郷の詩」    島村静雨

 

 

俺は孤独の旅に出て

十五年振りに追憶の町に還って来た。


何の用もなく

誰に会いたい意思も持たず

ただ ふらふらと足が向いて

ふるさとの町にたちどまっている。


そうだ この十五年の間に

大きな戦争があって

この町も戦争で焼けて

昔ここに住んだ人々も散りじりになった。


俺も戦争で

あの血なまぐさい戦場で

身も心も痛み果て

うらぶれた姿で還って来た。


ふるさとも

親しかった多くの友も失って。


俺はおおっぴらに敷居もまたげない家と

生きていても自由に会えもしない肉親と

路で往き合っても昔のように

気安く語れない友のいる

想い出の町に来ている。


━━この町はもう俺のふるさとではなかった。白い風が俺の周囲を吹くばかりだ━━


俺は

追憶だけを温めて

明日はまた 知らない街を旅する。

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