「紅葉」 島田等
バスの中で
どこのどの樹の紅葉が美しいといったのはやはり女だった
男は合槌をうつだけだ
美しいものがきわまるとき
狼狽(うろた)えるのは男の方だ
女にはかりそめということがない
闇であり
鬼でもあるのは
「紅葉狩」の女たちにかぎるまい
八十種もあるという赤い色の中から
ゆめゆめ一つを撰んではならぬ
散る前の華やぎは
ついの願望
いまも紅葉にこりない人に
鬼は舞う
「紅葉」 島田等
バスの中で
どこのどの樹の紅葉が美しいといったのはやはり女だった
男は合槌をうつだけだ
美しいものがきわまるとき
狼狽(うろた)えるのは男の方だ
女にはかりそめということがない
闇であり
鬼でもあるのは
「紅葉狩」の女たちにかぎるまい
八十種もあるという赤い色の中から
ゆめゆめ一つを撰んではならぬ
散る前の華やぎは
ついの願望
いまも紅葉にこりない人に
鬼は舞う