駱駝の声 政石蒙
秋の夜には駱駝が鳴いた。そんなふうに駱駝は鳴かないとひとは言ったが、私の孤独な魂に触れたあの鳴き声は、駱駝の鳴き声でなくてはならなかったのだ。
孤独に耐えきれなくなって漏らすため息のように、鳴くことで一層深まる孤独を噛みしめてでもいるように嫋々と、駱駝は夜を鳴いたのだ。私はひとりぼっちの隔離小屋のベッドで心の濡れる思いで聞いた。駱駝の声がそんなに切ないものであったのか。人にうとまれ、嫌われながら、尚も生きている私自身の生が切なかったのであろうか。駱駝の声は暗い曠野の果てから流れてきて私の魂に突き刺さったのだ。
生きるということがどんなに切ないものであろうと、切なさのあるために生は尊厳なのであろうか。秋の夜の駱駝の声は、私だけが知っている。