chuo1976

心のたねを言の葉として

「河童と蛙」   草野心平

2012-04-29 05:26:34 | 文学
「河童と蛙」   草野心平

 

るんるん るるんぶ

るるんぶ るるん

つんつん つるんぶ

つるんぶ つるん

 

河童の皿を月すべり。

じゃぶじゃぶ水をじゃぶつかせ。

かほだけ出して。

踊ってる。

 

るんるん るるんぶ

るるんぶ るるん

つんつん つるんぶ

つるんぶ つるん

 

大河童沼のぐるりの山は。

ぐるりの山は息をのみ。

あしだの手だのふりまはし。

月もじゃぼじゃぼ沸いてゐる。

 

るんるん るるんぶ

るるんぶ るるん

つんつん つるんぶ

つるんぶ つるん

 

立った。立った。水の上。

河童がいきなりぶるるっとたち。

天のあたりをねめまはし。

それから。そのまま。

 

るんるん るるんぶ

るるんぶ るるん

つんつん つるんぶ

つるんぶ つるん

 

もうその唄もきこえない。

沼の底から泡がいくつかあがってきた。

兎と杵の休火山などもはっきり映し。

月だけひとり。

動かない。

 

ぐぶうと一と声。

蛙がないた。

 

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