『光のノスタルジア』と『Mothers Of The Disappeared』 関川宗英
1973年、チリで軍事クーデターが発生、ピノチェト軍事政権が誕生する。
その後、左翼運動にかかわっていた人々への弾圧がはじまる。
逮捕者は政府発表で54万人、うち9000人が国外に追放された。また、チリの人口の1割にもなる100万人が国外に亡命した。そして、処刑、あるいは行方不明となった犠牲者は3000人以上になったと言われている。
ピノチェト政権の弾圧により、行方不明になった子どもや弟の骨を、砂漠で探す女性たちがいた。
『光のノスタルジア』(パトリシオ・グスマン 2010年)という美しい映画には、その女性たちが登場する。
左翼狩りによって処刑された人たちは、アタカマ砂漠に捨てられたという。
ピノチェト政権は1990年に崩壊する。
それから20年後の2010年に、『光のノスタルジア』は発表された。
アタカマ砂漠で遺族の骨を探す女性たちは、ピノチェト政権が崩壊してから20年、ずっと行方不明となった遺族を探していることになる。
チリで遺族の骨を捜し続ける女性たちを、U2が歌っている。
『Mothers Of The Disappeared』
(Bono / U2)
Midnight, our sons and daughters
Were cut down and taken from us
Hear their heartbeat
We hear their heartbeat
真夜中、息子や娘達が
私達から引き離され奪われた
彼らの鼓動を聞いて下さい
私達にはその鼓動が聞こえるのです
In the wind we hear their laughter
In the rain we see their tears
Hear their heartbeat
We hear their heartbeat
風に笑い声が聞こえ
雨に涙が見える
彼らの鼓動を聞いて下さい
私達にはその鼓動が聞こえるのです
Night hangs like a prisoner
Stretched over black and blue
Hear their heartbeats
We hear their heartbeats
夜が囚人の様に
青黒いあざに覆いかぶさる
彼らの鼓動を聞いて下さい
私達にはその鼓動が聞こえるのです
In the trees our sons stand naked
Through the walls our daughters cry
See their tears in the rainfall
林の中に息子達が裸で立っている
壁越しに娘達が泣いている
雨の降る中に彼らの涙が見える
『Mothers Of The Disappeared』はチリのピノチェト政権下における行方不明者とその母親たちについて歌っている。
タイトルを意訳すると「姿を消した男の母親たち」。
1998年の「POPMART」ツアーの開催地のひとつ・チリの首都サンティアゴでは行方不明になった母親たちをステージに上げ、行方不明事件についてステージ上から訴えかける場を設けている。
ボノはピノチェトに、「これらの女性に子供たちの骨はどこにあるのか教えて」と訴えたという。
行方不明になった愛する息子の顔写真を掲げる母親たち。
ボノは優しくしかし強く訴えかけるように『Mothers Of The Disappeared』を歌う。
2006年の「Vertigo」ツアーではアルゼンチンのブエノスアイレスで、「POPMART」ツアーでステージに上った母親の代表とU2のメンバーが再会。
The Edgeが南米アンデス地方の民族楽器・チャランゴを弾いて『Mothers Of The Disappeared』を演奏。
ボノは『世界で最も美しい母たちへ』と冒頭で語っている。
https://www.youtube.com/watch?v=wkWhKO4Lr8A&feature=emb_logo
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