私は、旅行に行く前に写真を集めたガイドブックをあまり読まない(現地では読む)が、何らかのその土地に関する本を読んでから想像力を膨らませて出かけることが好きだ。ガイドブックの写真は現地で生でみる感動が薄れるような気がするからだ。しかし今回はトルコがメジャーかつ土地も歴史も幅広過ぎるのでしばらく何も読む気がおきなかった。前置きが長くなったが、今回はオルハン・パルク(Orhan Pamuk)の「イスタンブール」を読んだ。そこで今回の旅のテーマは、ヒュズン(憂愁)を感じることと決めた(もちろん誰にも言わなかったし、私の旅行記全体をそれで染めるつもりもない)。
初日のイスタンブールは、雨だった。時差ボケの影響で明け方早く目が覚める。ヒルトンホテルから眺めると、薄暗く、西洋的な建物が殆どであるにも関わらずどこか時が止まったような風景。それでいて海と丘が美しく調和し、地形的にも歴史の中で重要な位置を占めるにふさわしい堂々たる場所である。トルコは雨が多いし、土砂降りになる。折りたたみ傘は必須である。私は持っていかなかったのでホテルの傘を借りなかったら、観光中ひどい目にあっていたところだ。
写真は、最終日のボスフォラス海峡クルーズ中にルメリ・ヒサールで撮った写真である。この付近は、昔高級別荘地であったが、木造だったためにすべて燃えたり、倒壊したということに思いを馳せながら潮風に吹かれる。さすがに木造は無いが、海峡の両岸には超高級なヤル(別荘)が今も建ち並んでいる。1棟60億円というヤルもあるようである。
ボスポラス海峡のヨーロッパ側とアジア側を結ぶ電車はなく、オリエント急行の駅もそれぞれ別れているのは有名な話であるが、現在海峡を渡るトンネルを建設中とのことだ。日本の大成建設が頑張っているが、少し掘り進むと遺跡が出てくるので、いつ完成するかは神のみぞ知るということらしい。
2009 GW