What A Wonderful World

毎日の暮らしの中で、心惹かれたことを語ります。

マイケル・ブース 『英国一家ますます日本を食べる』 (亜紀書房)

2014年11月01日 21時45分42秒 | 図書館で借りた本
 イギリス・サセックス生まれのトラベル&フードジャーナリストのマイケル・ブースさんと、奥様&二人のお子さんたちの日本美食旅行記の第二弾です。たぶん、いろんなところで、すっごく面白い!という書評が溢れていると思うので、肝心の食リポとまったく関係の無い部分なのに、この本の中で私が一番心打たれた文章を書き出します。

☆P95~「9 失われた魂の森 高野山・精進料理」より引用

 これほどまでに落ち着かない落ち着かない場所を訪れたのは初めてだったが、子どもたちが不穏な雰囲気を感じ取り始めたのがわかったので、楽しそうな顔をしておくしかなかった。森の中ほどまで進んだところで、リスリン(奥様)の顔をちらりと見た。彼女も同じく何食わぬ顔をしていたけれど、足元を照らすろうそくの揺らめく光で、彼女の目が真っ暗な下生えの草むらをじっと見ているのがわかった。命を失くした子どもの石のように表情の無い顔が、揺れる光を浴びてこっちを見つめ返す。

 そのときだ。エミル(次男君)がそばにいないことに気がついた。

(中略)

 ようやく見つかるまでに、1年が過ぎたかと思えるほど長い間捜し続けたが、実際は5分足らずのことだった。それほど遠くへは行っていなかった。エミルはお地蔵さんの頭に手を置いてしゃがみこみ、話しをしていた。

「なんて話しかけてたの、エミル?」僕は、努めて明るくそう訊いた。

「一緒にお話していただけだよ」息子はそう答えた。「あの女の子ね、寂しいって」

 最後に渡る御廟橋の手前には、参拝者が水をかけて溺死した赤ん坊や水子を供養する水向地蔵があり、橋を渡って奥へ行くと灯籠堂があって、そのさらに奥には弘法大師の入定したという御廟がある。

(中略)

そばを流れる川の水音以外、何も聴こえなかった。僕らは灯籠堂を簡単にのぞいただけで、大急ぎで引き返した。走らないようにと、必死でこらえながら。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

30年も前の話ですが、高校の修学旅行で京都へ行きました。そのなかで、化野の念仏寺を訪れたんですが、まったく霊感の無い私でも、ここは入ったらいけない場所だと直感しました。全身の毛が総毛だつ感じ。他国人のマイケルさんも、きっと同じ感覚だったんだろうと思います。マイケルさんの日本食の感想を読んで、とても親近感を抱くのは、こういう「畏れ」への感覚に共感したからでしょうね。



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