自分は、ろくに武力ももたぬ北の小国の皇太子だ。たしかに、皇子同士としての力は、ラウル王子に遠く及ばない。
(だけど……)
人の力は、そんなものだけでは決まらないはずだ。
国ももたず、山に臥せ、野を旅していても、だれに屈することもなく、おのれの力ひとつを信じて、顔をあげていられる人だっているのだ。
皇太子の衣の下にある、素裸の自分よ、強くあれ――と、チャグムは思った。
強大な者の前に引き出され、民を救うために膝を折ることになったとしても、心の芯だけは、決して折るまい。
(上橋菜穂子 『蒼路の旅人』)
守り人シリーズ6作目。
これもとっても面白かったです!
昔から子供が主人公の話はあまり得意でない私が、チャグムが主人公の『虚空の旅人』や今作をこれほど楽しめるのは、物語にぐいぐい惹きこむ上橋さんの文章はもちろんのこと、キャラクターがとっても魅力的だから。
ぐんぐんカッコよく育っているチャグムは言うまでもなく、彼を支えるシュガや今作のヒュウゴのような大人の素敵キャラが必ず出てきてくれるので、私のような読者でも大満足です(悪役キャラの方は少々平べったい印象がありますが…)。
この久しぶりに出会えた素晴らしく私好みのシリーズも、残すところあと1作と外伝のみかぁ。。
さびしいなぁ。
「だけど、まあ、あんたが、この娘を見殺しにできなかった気持ちは、わからないでもない。あんたも、孤児だったわけだしさ。似たような境遇の子を、放っておけなかったわけだろ?甘いよねぇ、あんた。一見強面だけど、そういうところはさ……」
「たしかにね。――でも、他人をあっさり見捨てるやつは、自分も他人からあっさり見捨てられるからね」
(上橋菜穂子 『神の守り人』)
守り人シリーズ5作目。
バルサとタンダの関係が、ものすごーく好きです。
なので今回のお話は、ものすごーくニヤニヤしてしまいました*^^*
ところでこの文庫版の解説は児玉清さんが書かれているのですが、児玉さんって前に木内昇さんの作品にも書評を書かれていたりして、なんとなく自分と似た匂いを感じる今日この頃。
まあ週刊ブックレビューを担当されているので、書評など山ほど書いていらっしゃるのでしょうが。
今日現在で新潮文庫はこの次の『蒼路の旅人』までしか出ていないので、残りの『天と地の守り人』と『流れ行く者』は図書館で借りようと先程ネットから予約したのですが(買うなら文庫本なので)、この本って当たり前と言っては当たり前だけれど”児童書コーナー”にあるのですね。。。-_-
予約するとき、一瞬う…となってしまったわ。。。
しかし試しに『指輪物語』を検索してみたところそちらも児童書コーナーだったので、ちょっぴりほっとした三十路過ぎな私です。。。
もっともツ▲ヤで『ムーミン』のアニメを大人借りしたときのことを思えば、これくらいは楽勝です。まああれは母親が子供のために借りていると思われたでしょうが(実際はフィンランド旅行の予習に借りた)。