菅原伝授の通し、夜の部に行ってきました。
あまり評判を聞かない夜の部ですが、意外に楽しむことができました(事前の期待度が大きくなかったためもありますけど^^;)。
でも本当に、花形らしい若さと意気込みが感じられて、意外に良かったのですよ。
【車引(くるまびき)】
梅王丸(愛之助)、松王丸(染五郎)、桜丸(菊之助)。
三人とも美しい~ 舞台の上がキラキラ~
若さってやっぱりいいね^^
桜、梅、松の衣装も華やか。
十代や二十代の若手のおっかなびっくりさもなく、三人とも思いを込めて演じているのが伝わってきて、でも観ていて肩が凝ることもなく。楽しめました♪
【賀の祝(がのいわい)】
菊ちゃん(桜丸)キレー。。。
こんなキレイな旦那or息子ならそりゃあ八重(梅枝)も白太夫(左團次さん)も辛かろう・・・、と先月も感じたことをまた感じた。
こんなに若くてキレイなのに死んじゃうなんて・・・ 醜い年寄りは死んでいいってことではないが。
松王丸(染五郎)が「明日からは前髪を落として」云々って言ったときにものすごい違和感があったんですけど、そっかまだ若いのね、この三つ子(もしかしなくても10代とか・・・?)。初めて見た松王丸がニザさまだったからな
でもお父さんは70歳なのよね、遅い子供なのか。
ん?でも松王丸の子(小太郎)って結構大きいですよね。・・・一体何歳のときの子なの。。
切腹する菊ちゃんって今まで何度か観ましたが(仮名手本、三千両初春駒曳、弁天etc)、今回、よかったなぁ。
折れた桜の枝も、最初は不吉さを、次第に悲しさを演出していて効果的。
いざ、と刀を手にする直前、泣き伏している八重にそっと視線をやるのね・・・ 八重への愛情が感じられて切なかった・・・。
これじゃあ八重も止めたくなるよね、今ならまだ止められるのにって思っちゃうよね・・・。加茂堤ではチュとかやっちゃう明るいカップルだったのに、どうしてこうなっちゃったんだろうね・・・まぁ二人が浅慮だったせいもあるんだけども。
で、介錯として父親がチン(何ていうの?あれ)してあげると、嬉しそうに微笑するんだよね・・・
桜丸が刀を腹に突き立てる瞬間は、父ちゃんは背中をまるめて後ろを向いてしまうのね。父親なら息子の最期をしっかり見ててやりなさいよ(先月の組討みたいに)って思っちゃったけど、白太夫は武士じゃないからかな。辛くてとても見ていられなかったのかな。
左團次さんの白太夫は、強い哀れさは感じなかったけれど、最後に梅王丸(愛之助)が父親に顔が見えるように桜丸の体を抱き起こして両手を合わせてあげたとき、花道を行きかけたところをはっと駆け寄って戻った姿に胸をつかれました。その前、追い出した松王丸(染五郎)を花道で見送るときもふと寂しそうな顔を見せて・・・。松王丸も、「もういい歳なんだから体を大事に・・・」って言いかけるんだよね(言うのやめちゃうけど)・・・。親子ってあったかくていいねぇ。。
このパパも可哀想だよね・・・。可愛い息子達と過ごすことを楽しみにしていた70歳のお祝いの日に、その息子達とお別れすることになってしまったのだから・・・。なんて残酷・・・。梅王とだけはまた会う機会はあったりするのかな・・・あるといいなぁ・・・。
あとは、やっぱり孝太郎さん(千代)が大人な演技でよかったなぁ。折れた桜を見つけるところも楽しかった笑。新悟くん(春)も、古風な感じでなかなかよかったと思いました。blogだとあんなキャラなのに^^;
ところでこの段の松王&梅王のチャラぶり(二人でクルっと回って的な)は元々の演出なのだろうか、それとも染ちゃんによる強調もあるのだろうか。ニザさんと染ちゃんの四谷怪談が完全別物だったトラウマがあるので、ちょっと染ちゃんのこの手の場面が信用できなくて
【寺子屋(てらこや) ~寺入りよりいろは送りまで~】
寺入りは初めて観ましたが、いいですね。小太郎の死の重みがより感じられて。
松緑の源蔵は、初めは「せっかく通しなんだから夜も染&梅枝で観たかったなー」とか、「去年の勘九郎は感情豊かで良かったなー」とか思いながら見ていたのですけど、松王丸(染五郎)の出のあたりから、こういう源蔵も面白いかも、と思い始めました。
勘九郎は昔からずっと寺子屋の先生をしていたように見えたけど、松緑は今は寺子屋やってるけど前は違うのだろうな、何か言わない事情があるのだろうな、といった感じがして、それが結構いい味に見えました(寺子屋の先生に全然見えないともいう笑)。それと松王丸と源蔵が同年代の役者だと舞台のバランスがいいというか、松王だけが立派に見えないから二人の間により緊張感が出るというか。まぁ松緑が気合いバリバリだったせいもありますけど。
優しさが表に出ながらも子供を殺める勘九郎もよかったけれど、感情を内に殺して子供を殺める今回のような源蔵も結構心動かされますねぇ。
あとはあの平坦な台詞の言い方がもうすこしどうにかなってくれるとよいのですケド。。
染五郎に貫禄がありすぎなかったのも意外と効果的で(こんなこと言われても本人は嬉しくないかもしれないが)、庶民の出に自然と見えました。
松王もまだ若いお父さんなんだよねぇ・・・。
三つ子の中で一番可哀想だったのは松王かもしれないなぁ、仕えたくもない主人に仕えなきゃならなくて、一番恩を返したい人に仇で返すことしかできなくて(寺子屋までは)、あえて親から勘当までされて・・・・・と。でも松王は、桜丸が不憫だって言って泣くんだよね・・・。優しいよねぇ・・・。たしかに桜丸も不憫だけど、桜丸はほら、ちょっぴり自業自得なところもあるからねぇ。
さっき(@賀の祝)まではあんなに楽しそうに梅王と兄弟喧嘩してたのになぁ・・・(キャラ違うレベルだけど)。
まぁそういうあまり重みを感じない松王だったので、ところどころ場をもたせられていなかったですけれど。空咳の場面とか。
「にっこりと笑ふて」「笑いましたか」はもう、私は誰がやっても泣けるのかもしれない・・・。今回も泣いた。
でも子供への愛情は仁左衛門さんの方が強く伝わってきました。
焼香の前に「待ってました」「たっぷりと」って大向こうがかかっていたけれど、あれは義太夫のいろは送りに対してなのかな。仁左衛門さんの寺子屋のときにはかかっていなかったけど。場面が場面だからこの掛け声はものすごい違和感・・・。
今回も焼香の香りが幕見席まで届いていました。この香りも良い演出効果がありますよね。
というわけで全体の風情や重厚感や見応えは仁左衛門さん&玉三郎さんの寺子屋が圧倒的でしたけれど、こういう寺子屋も意外と悪くないなぁ、アリかもなぁ、と感じることができた寺子屋でした。
そうそう、壱太郎(戸浪)も昼よりはよかったです。とはいえやっぱり今後に期待、かなぁ^^;
でも近くの席の男性の寺子屋終了後の第一声が「壱太郎がすごくよかった!上手い!」でしたから、好みの問題、、、なのかなぁ。うーん。
以上、『菅原伝授手習鑑』という演目に対する花形の敬意と熱意が伝わってきた、予想していたよりずっと気持ちのいい夜の部でした。
先日の昼の部の後は「もう大御所世代がいなくなったら歌舞伎観るのやめようかな・・・」と思ったけれど、いなくなってもたまに見に来ようかな、な満足感はちゃんともらうことができました。いつかは「雀の涙な年金でも絶対に観つづける!」と思わせてくださいまし。その頃には染ちゃんや菊ちゃんも年金組ですけど。てか歌舞伎役者の年金ってどうなってるんだろうか。
今月はもう一回昼の部いきます♪
※歌舞伎美人:菊之助インタビュー
歌舞伎茶屋で買った、隈取蒸しパン(卵味) しっとり美味でした(^_^)