この度の木村氏と切込隊長氏の一件について、前の記事に触れた弁護士の小倉先生がご自身のブログの中で述べられております。専門家としての見方ですので、勉強になります。是非皆さんもお読みになって下さい。
小倉先生のブログにある「当事者間で紛争を解決するためのトレーサビリティ」です。また、「匿名告発の意義」以降の記事を読んで頂くとよいと思います。
小倉秀夫の「IT法のTop Front」
落合先生のブログは左のブックマーク欄に入れてありますので、そちらから見て下さい。
記事は「内部告発」(12/9)です。
これ以前より、小倉先生と落合先生(ご本人が気にかけておられるようでしたが、切込隊長氏の記事中の「落合氏」とは全くの別人です、笑)はブログの中で告発の匿名性について論じておられました。私も十分な理解をもって読めていたわけではありませんが、私なりの考えはありました。
告発についてですが、「真摯な正義に基づく告発」、「根拠の無い告発」、「悪意に満ちた虚偽の告発」等が混ざり合って存在しています。ネット上では、個人が特定できない場合もあり、掲示板やブログ等においてもいわれの無い誹謗中傷や風説がないとは言えません。
前の記事に書いた例のように、時として甚大な風評被害をもたらす結果となることもあり得るのです。このような時に、法的措置を速やかにとることができない場合には、著しい不利益を被告発者側が被ることになってしまいます。このような事態を未然に防ぐかもしくはある程度抑制的に作用するような仕組みがあったほうが、紛争や問題の発生は少なくできると思われます。その点で、小倉先生はトレーサビリティについて言及されています。
一方、完全な匿名(トレーサビリティを有しないということ)告発が、社会にとって全く意味をなさないのか、という問題もあります。このことについて落合先生は、「匿名による無責任な言論、というものを擁護するつもりはないが、意義のある言論の中には、匿名でしかできないものもあると思うし、そういった言論すら排除しかねない理論は、健全な社会を築いて行く上で、危険ではないかと危惧する。」と述べられています。
小倉先生は「真摯な告発に匿名性の保護はあまり役立たない」、むしろ「内部告発者への不利益処分の原則禁止を法定しなければ意味をなさない」と述べています。また外部型告発については、「被告発者は告発者に対して名誉毀損等に基づき民事的または刑事的な制裁を加えるように裁判所等の公的機関に要請することくらいしかできません(それとて、企業が様々なバッシングを受ける覚悟がないとできないことは、東芝事件からも明らかです)から、自分が告発者であることが明らかになったとしてもそれほどの問題はありません(真摯な告発については、告発事実を真実と信ずるに足りる相当な事由があれば、制裁を受けずに済みますし)。」
私は専門家でもなんでもありませんので、正しいことが言えるわけではありませんが、思ったことについて書いておきます(小倉先生のコメント欄にも記入させて頂きました)。
特定業界ならば、実名で内部告発することによって、その個人は二度とその業界で仕事が出来なくなることも多々あると思います。「法」で守られるとしても、よほど精神力が強くないと周囲から避けられたり無視されたりとかに耐え切れないのでは?会社をクビになるのと、わけが違います。牛肉偽装事件かハム偽装の時に、告発した冷蔵業者はその後倒産しました。取引先がみんな避けたからです。個人の利益が守られたとしても、周囲や取引先が一緒に仕事をしてくれなくなる事を、法が守ってくれるとは思えません。そんな危険を冒してまで告発しない、という風潮となります。その結果が各種の隠蔽事件の根元にあるような気がするのです。そうした社会風潮を改善するのは困難でしょうから、とりあえず出来る事は匿名でも内部告発することによって、さらなる被害拡大を防ぐ方が社会的利益は大きいと思うのですが。
このような事例ばかりではなく、今まで書いていた医療過誤の問題にも多少あてはまる面があるのではないかとも思っています。内部告発によって明らかにされる事実も場合によってあると思いますが、もしもそれが実名での告発ならば告発者は到底その職場で仕事ができなくなるかもしれません。たとえ法によって不利益処分が禁止されていても、無理ではないかと感じます。その為に今まで多くの医療過誤が隠蔽されてきたのではないかと考えています。
匿名性を全てに確保すると、風評被害を防げない。匿名性を保護せずにトレーサビリティを確保すると紛争自体を減らせるか当事者間での解決が行い易くなるが、真摯な告発は行いにくい状況も想定される。
この解決法は専門家に考えて頂くしかないのではないかと思います。私が考えてみた方法がありますが、単にアイディアだけと思って下さい。
ある程度根拠や事実に基づいているならば、外部型告発は告発者が罰を受けるわけではないのでトレーサビリティがあってもよいかもしれません。告発内容は例えば企業の製品とか管理体制とか欠陥とか色々あるでしょうが、風評被害はやはり放置できないし、告発者側に著しく不利な状況ではないので、トレーサビリティ容認とします。
次に内部型告発ですが、これが問題です。匿名性が完全に確保されていなければ告発者が尻込みしてしまい、告発を止めることで社会的利益を損なう場合もあり得る。従来のように個人が掲示板やブログに書く場合にはトレーサビリティを容認することとします。それが立場的に困難であるという場合には、ある種「目安箱」のような特定の機関を作っておき、そこに告発してもらうことにしてはどうでしょうか?「真摯な告発」の告発者は、周囲に自分であることが認知されなければほぼ問題なく、「目安箱」と告発者の間にはトレーサビリティが存在してもよいと思うのです。そのかわり「目安箱」は絶対に告発者情報を漏らすことがあってはならないのです。これをどのように担保するかは分りません(方法論として)。また、「目安箱」は各捜査機関や行政機関に通告して、適切な処置をしてもらうように働きかけねばなりません。その時に告発者の匿名性が絶対に確保されるか自信はありません。絶対に漏らさないということになると、捜査機関が動けないという状況があるのでしょうか?また「目安箱」機関は、ある程度告発情報の真偽について検証できないと通告できないでしょう。ニセモノ情報は、告発者と「目安箱」の間にトレーサビリティが存在するので概ね抑制されると思うのですが。
現在消費者の相談などを受けているセンター組織がありますが、あれに似ているかもしれません。センターは「振り込み詐欺(おれおれですね)」情報や危険な「ダイエット食品」の警告や不当な「訪問販売」とか、「架空請求」への対処等有益な活動をしていますし、違法と思われる特定業者については、告発したり注意すべき業者として公表したりしていますから、社会的貢献度が非常に大きいと思います。
このセンターは寄せられた情報源を漏らすわけでもなく、またとんでもない風評を出したりしませんから、ある程度バランスよく機能していると思います。これに類する「目安箱」組織があれば、真摯な内部告発者が極端に臆することなく告発に踏み切れる可能性が出てくるのではないかと思うのですが。どうでしょうか?
小倉先生のブログにある「当事者間で紛争を解決するためのトレーサビリティ」です。また、「匿名告発の意義」以降の記事を読んで頂くとよいと思います。
小倉秀夫の「IT法のTop Front」
落合先生のブログは左のブックマーク欄に入れてありますので、そちらから見て下さい。
記事は「内部告発」(12/9)です。
これ以前より、小倉先生と落合先生(ご本人が気にかけておられるようでしたが、切込隊長氏の記事中の「落合氏」とは全くの別人です、笑)はブログの中で告発の匿名性について論じておられました。私も十分な理解をもって読めていたわけではありませんが、私なりの考えはありました。
告発についてですが、「真摯な正義に基づく告発」、「根拠の無い告発」、「悪意に満ちた虚偽の告発」等が混ざり合って存在しています。ネット上では、個人が特定できない場合もあり、掲示板やブログ等においてもいわれの無い誹謗中傷や風説がないとは言えません。
前の記事に書いた例のように、時として甚大な風評被害をもたらす結果となることもあり得るのです。このような時に、法的措置を速やかにとることができない場合には、著しい不利益を被告発者側が被ることになってしまいます。このような事態を未然に防ぐかもしくはある程度抑制的に作用するような仕組みがあったほうが、紛争や問題の発生は少なくできると思われます。その点で、小倉先生はトレーサビリティについて言及されています。
一方、完全な匿名(トレーサビリティを有しないということ)告発が、社会にとって全く意味をなさないのか、という問題もあります。このことについて落合先生は、「匿名による無責任な言論、というものを擁護するつもりはないが、意義のある言論の中には、匿名でしかできないものもあると思うし、そういった言論すら排除しかねない理論は、健全な社会を築いて行く上で、危険ではないかと危惧する。」と述べられています。
小倉先生は「真摯な告発に匿名性の保護はあまり役立たない」、むしろ「内部告発者への不利益処分の原則禁止を法定しなければ意味をなさない」と述べています。また外部型告発については、「被告発者は告発者に対して名誉毀損等に基づき民事的または刑事的な制裁を加えるように裁判所等の公的機関に要請することくらいしかできません(それとて、企業が様々なバッシングを受ける覚悟がないとできないことは、東芝事件からも明らかです)から、自分が告発者であることが明らかになったとしてもそれほどの問題はありません(真摯な告発については、告発事実を真実と信ずるに足りる相当な事由があれば、制裁を受けずに済みますし)。」
私は専門家でもなんでもありませんので、正しいことが言えるわけではありませんが、思ったことについて書いておきます(小倉先生のコメント欄にも記入させて頂きました)。
特定業界ならば、実名で内部告発することによって、その個人は二度とその業界で仕事が出来なくなることも多々あると思います。「法」で守られるとしても、よほど精神力が強くないと周囲から避けられたり無視されたりとかに耐え切れないのでは?会社をクビになるのと、わけが違います。牛肉偽装事件かハム偽装の時に、告発した冷蔵業者はその後倒産しました。取引先がみんな避けたからです。個人の利益が守られたとしても、周囲や取引先が一緒に仕事をしてくれなくなる事を、法が守ってくれるとは思えません。そんな危険を冒してまで告発しない、という風潮となります。その結果が各種の隠蔽事件の根元にあるような気がするのです。そうした社会風潮を改善するのは困難でしょうから、とりあえず出来る事は匿名でも内部告発することによって、さらなる被害拡大を防ぐ方が社会的利益は大きいと思うのですが。
このような事例ばかりではなく、今まで書いていた医療過誤の問題にも多少あてはまる面があるのではないかとも思っています。内部告発によって明らかにされる事実も場合によってあると思いますが、もしもそれが実名での告発ならば告発者は到底その職場で仕事ができなくなるかもしれません。たとえ法によって不利益処分が禁止されていても、無理ではないかと感じます。その為に今まで多くの医療過誤が隠蔽されてきたのではないかと考えています。
匿名性を全てに確保すると、風評被害を防げない。匿名性を保護せずにトレーサビリティを確保すると紛争自体を減らせるか当事者間での解決が行い易くなるが、真摯な告発は行いにくい状況も想定される。
この解決法は専門家に考えて頂くしかないのではないかと思います。私が考えてみた方法がありますが、単にアイディアだけと思って下さい。
ある程度根拠や事実に基づいているならば、外部型告発は告発者が罰を受けるわけではないのでトレーサビリティがあってもよいかもしれません。告発内容は例えば企業の製品とか管理体制とか欠陥とか色々あるでしょうが、風評被害はやはり放置できないし、告発者側に著しく不利な状況ではないので、トレーサビリティ容認とします。
次に内部型告発ですが、これが問題です。匿名性が完全に確保されていなければ告発者が尻込みしてしまい、告発を止めることで社会的利益を損なう場合もあり得る。従来のように個人が掲示板やブログに書く場合にはトレーサビリティを容認することとします。それが立場的に困難であるという場合には、ある種「目安箱」のような特定の機関を作っておき、そこに告発してもらうことにしてはどうでしょうか?「真摯な告発」の告発者は、周囲に自分であることが認知されなければほぼ問題なく、「目安箱」と告発者の間にはトレーサビリティが存在してもよいと思うのです。そのかわり「目安箱」は絶対に告発者情報を漏らすことがあってはならないのです。これをどのように担保するかは分りません(方法論として)。また、「目安箱」は各捜査機関や行政機関に通告して、適切な処置をしてもらうように働きかけねばなりません。その時に告発者の匿名性が絶対に確保されるか自信はありません。絶対に漏らさないということになると、捜査機関が動けないという状況があるのでしょうか?また「目安箱」機関は、ある程度告発情報の真偽について検証できないと通告できないでしょう。ニセモノ情報は、告発者と「目安箱」の間にトレーサビリティが存在するので概ね抑制されると思うのですが。
現在消費者の相談などを受けているセンター組織がありますが、あれに似ているかもしれません。センターは「振り込み詐欺(おれおれですね)」情報や危険な「ダイエット食品」の警告や不当な「訪問販売」とか、「架空請求」への対処等有益な活動をしていますし、違法と思われる特定業者については、告発したり注意すべき業者として公表したりしていますから、社会的貢献度が非常に大きいと思います。
このセンターは寄せられた情報源を漏らすわけでもなく、またとんでもない風評を出したりしませんから、ある程度バランスよく機能していると思います。これに類する「目安箱」組織があれば、真摯な内部告発者が極端に臆することなく告発に踏み切れる可能性が出てくるのではないかと思うのですが。どうでしょうか?