未病(健康と病気の中間)をテーマにした喜多敏明Dr.のレクチャー動画。
今回は“頭痛”編を見てみました。
喜多Dr.の解説は歯切れがよいので、私はファンの一人です。
啓蒙に熱心な漢方専門医は大きく二つのタイプに分かれ、
漢方用語を使わないでわかりやすく説明することを目標にする先生と、
漢方理論をわかりやすく整理して解説する先生に分かれます。
初心者は前者の方が入りやすいのですが、
ある程度慣れてくると、壁にぶつかります。
このエキス剤が紀奈ない場合、次の一手は?
・・・その背景の理論を知らないと複数の漢方方剤の使い分けができないのです。
喜多Dr.は後者です。
今回も気血水理論を用いて明快に解説しています。
さらに、現代医学の要素も取り入れているので、
西洋医学を学んで医師免許を取得した世代の私でも、
頭に入りやすいです。
その中で「なるほど!」と感じたこと;
・西洋医学の痛み止めを飲むと血流が悪くなるので頭痛の頻度が増える。
・漢方薬を飲むと気血水バランスがよくなるので頭痛の頻度が減る。
という目からうろこが落ちるコメントでした。
だから漢方薬をベースに流し、鎮痛剤を併用、その使用頻度が減っていくのが理想的、
を目標にするという理由がわかりました。
▶ 慢性頭痛の種類と頻度
・頭痛の有病率は39.6%(15歳以上)、片頭痛が8.4%、緊張型頭痛が22.4%、残りはその他(群発頭痛、三叉神経痛など)
▶ 頭痛の分類
1.一次性(機能性):片頭痛、緊張型頭痛、群発頭痛、三叉神経痛など
・部位:こめかみ、目の奥
・性状:拍動性、ズキズキ
・随伴症状:閃輝暗点(8.4%のうち2.6%にあり、5.8%にはない)、吐き気・嘔吐
2.二次性(症候性):くも膜下出血、脳腫瘍など
・部位:後頭部、頭全体
・性状:締め付け感、重い感じ
・随伴症状:肩こり、めまい
▶ 頭痛の誘因
【片頭痛】
① 肩こり(72%)
② ストレス(71%)
③ 睡眠(58%)・・・睡眠不足、睡眠過多
④ 月経(51%)・・・月経前、月経中
⑤ 天候(49%)・・・雨の前日、低気圧、台風接近
⑥ におい(16%)・・・香水、洗剤、タバコ
【緊張型頭痛】
① 悪い姿勢、骨格の歪み
② 肩こり、首の痛み
③ 歯のかみ合わせ
④ 目の疲れ
⑤ ストレス、睡眠障害
→ 対策として、姿勢を正す、ほぐす、リラックス、適度な運動など
▶ 緊張型頭痛の非薬物療法(慢性頭痛の診療ガイドライン2013より)
・・・ストレスの関与しない慢性頭痛はない → 心身医学的アプローチが必要
A. 精神行動療法
1.筋電図バイオフィードバック
2.認知行動療法
3.リラクゼーション
4.催眠療法
B. 理学療法
1.運動プログラム(頭痛体操)
2.マッサージ、頚部指圧
3.超音波、電気刺激
4.姿勢矯正
5.顎部の機能異常に対する治療
6.温冷パック
C. 鍼灸
▶ 頭痛体操
・1日2分で効果あり
【片頭痛】「コマ体操」
【緊張性頭痛】「肩回し体操」
▶ 片頭痛に影響する食品
A. 片頭痛を誘発する食品(誘発する成分)
① 赤ワイン(ヒスタミン、チラミン)
② チョコレート(チラミン)
③ チーズ(チラミン)
④ 柑橘類(チラミン、オクトパミン)
⑤ 加工肉:ハム、ソーセージ(亜硝酸ナトリウム)
⑥ ファストフードのうま味調味料(グルタミン酸)
B. 片頭痛によい食品(よい成分)
① 緑黄色野菜:ほうれん草(マグネシウム)
② 海藻:ヒジキ(マグネシウム)
③ 大豆食品:納豆(マグネシウム)
④ ナッツ類:アーモンド(マグネシウム)
⑤ うなぎ(ビタミンB2)
⑥ レバー(ビタミンB2)
▶ 片頭痛の治療薬(西洋医学)
(急性期用)
1.アセトアミノフェン:カロナール®
2.非ステロイド系抗炎症薬:バファリン®、ロキソニン®
3.トリプタン系片頭痛薬:イミグラン®、ゾーミッグ®ほか
4.エルゴタミン製剤:クリアミン®配合錠
(予防薬)
5.カルシウム拮抗剤:ミグシス®
6.抗てんかん薬:デパケン®
★ 市販薬のみ使用者:56.9%!
▶ 緊張型頭痛の治療薬(西洋医学)
1.アセトアミノフェン:カロナール®
2.非ステロイド系抗炎症薬:バファリン®、ロキソニン®
3.筋弛緩薬:テルネリン®
4.抗不安薬:デパス®
5.三環系抗うつ薬:アミトリプチリン®
▶ 治療経過の比較:西洋薬 vs. 漢方薬
A. 西洋薬
・鎮痛剤による頭痛治療を続けていると、血流が悪くなる(漢方的には“瘀血”)。
・薬の効果が減弱してくるため、頭痛の回数が増え、鎮痛剤の使用回数が増える悪循環に陥る(薬物乱用頭痛)。
・1か月に10日以上の服用を3か月以上続けると危険。
B. 漢方薬による頭痛治療
・続けていると、体質(気血水の異常)が改善され、頭痛の回数が減ってくる。
・機能性の頭痛に対しては漢方薬が第一選択薬。
・ただし、体質改善の漢方薬はゆっくり効いてくるので、鎮痛剤との併用が現実的。
▶ 頭痛の漢方医学的病態分類
・気血水の巡りが悪いと頭痛が発生する(誘因)
→ 気血水の異常を改善すれば頭痛が出現しなくなる。
A. 気の異常
① 気逆タイプ → 発作的(≒片頭痛)
② 気うつタイプ → 持続的(≒緊張型頭痛)
B. 血の異常
③ 瘀血タイプ → 生理前後、肩こり
C. 水の異常
④ 水滞タイプ → 雨の前日、低気圧(=天気痛)
★ 天気痛:気圧の変化によって頭痛が出現する。気圧の変化に対する自律神経による調節が破綻する。
▶ 頭痛に頻用される漢方薬
① 気逆タイプ(≒片頭痛) → 呉茱萸湯(31)
② 気うつタイプ(≒緊張型頭痛) → 釣藤散(47)
③ 瘀血タイプ → 桂枝茯苓丸(25)
④ 水滞タイプ(=天気痛) → 五苓散(17)
<参考>
▢ 未病と漢方:頭痛(喜多敏明Dr.)