新型コロナの第6波は子どもに感染が拡大したことが特徴です。
2022年2月に入ると、
小児科開業医の私のところにも毎日のように濃厚接触者や検査希望者が来院され、
そのうち半分くらいがPCR陽性に出ます。
亜急性期には柴胡剤を使ってます、と前回書きました。
日本医事新報社HPにTV出演の多い平畑先生(ヒラハタクリニック)の動画があり、
「コロナ後遺症に上咽頭擦過療法(EAT)が有効」
という、ホンマカイナ?的治療の紹介の他に、
「コロナ後遺症を漢方薬で治療している」
という興味深いお話がありました。
長期に続く倦怠感には、
私だったら補中益気湯を処方するかな、
と考えそうなところ、
意外なことにあまり手応えはないそうです。
一番処方頻度が高いのが加味帰脾湯とのこと。
不眠やうつ傾向に使う方剤ですね。
勉強になりました。
平畑先生のHP内に、
コロナ後遺症(long-covid)への治療一覧がありますので、
漢方に関する部分を抜粋して紹介させていただきます。
□ 倦怠感
・加味帰脾湯:気分の落ち込み・不安・不眠がある人、慢性上咽頭炎がある人に。
・十全大補湯:若い人に(30代まで?)
・人参養栄湯:40代以上?
□ 気分の落ち込み
・加味帰脾湯など
□ 思考力の低下(ブレインフォグ)
・証に合った漢方
□ 頭痛
・川芎茶調散:耳より前の頭痛に
・釣藤散:後頭部痛、頭が詰まる感じに
・七物降下湯:頭が火照る方に
・呉茱萸湯:迷ったらとりあえずこれ
・葛根湯:肩こり・首こりを伴う方に
・桂枝湯:コリがあって弱っている方に
・半夏白朮天麻湯:冷えのある方、めまいのある方に
□ 息苦しさ、呼吸苦
・半夏厚朴湯:胸やのどが詰まる方に
・六君子湯:嘔気があるときに
□ 体の痛み
・当帰湯:胸痛に
・桂枝加朮附湯:全身の痛み(特に上半身)
・疎経活血湯:夜に強くなる下肢の痛みに
・大防風湯:疎経活血湯が向かない下肢の痛みに
□ 不眠
・酸棗仁湯:疲れすぎて眠れない方に
・柴胡加竜骨牡蛎湯:比較的元気で、悪夢を見がちな方に
・桂枝加龍骨牡蛎湯:元気がない方に
□ 動悸
・真武湯:冷えとむくみのある方に
・炙甘草湯:弱っている方に
□ 食欲不振
・六君子湯:嘔気があるときに
・四君子湯:嘔気がない場合に
※ 六君子湯倍量投与もあり。保険が心配なら六君子湯+四君子湯もあり
□ 咳
・麻杏甘石湯
・五虎湯
・麦門冬湯:のどが渇く方に。お湯に溶かしてちびちび飲むとよい。
□ 光過敏・音過敏
・抑肝散加陳皮半夏を治るまで飲む(数ヶ月)
総じて、特殊な薬を使っているわけではなく、
症状あるいは証に合った方剤をオーソドックスに用いている印象ですね。
以前、平畑先生の著作「新型コロナ後遺症完全対策マニュアル」を
購入して読んだことがあるのですが、
漢方に関する記載は少なく、
そのときはあまりピンと来なかった記憶があります。
症例をたくさん経験して、徐々に適切な治療像が定まってきたのでしょう。
東京都作成の新型コロナ感染症後遺症リーフレットも紹介されていました。