漢方学習ノート

漢方医学の魅力に取りつかれた小児科医です.学会やネットで得た情報や、最近読んだ本の感想を書き留めました(本棚3)。

更年期のメンタルヘルス(更年期指導士レクチャー4)

2023年09月09日 16時18分06秒 | 漢方
「更年期指導士」のWEBセミナー、4つ目はメンタルヘルスです。
小児科医の私にとっては、ピンとこない分野ですが…
講演を聞いてもやはりピンときませんでした。

わからないなりに、ポイントを拾ってみました。

<ポイント>
・心身症とは「身体疾患の中で、その発症や経過に心理・社会的因子が密接に関与し、
器質的ないし機能的障害が認められる病態」であり、精神疾患ではない。
・意外な心身症:本態性高血圧、心筋梗塞、糖尿病、甲状腺機能亢進症、腰痛症…
・「更年期におけるメンタルヘルス対策として、日頃から日常のストレスに対処できる生活環境の改善や社会的な要素にも注目した包括的な対応が求められている」って言われても何のことやら…。
・心理的ストレッサーでやっかいなのは「デイリーハッスルズ」。
・更年期障害の心理的症状と更年期うつ病とは別の病気、しっかり鑑別することが必要。


以降は、備忘録としてのメモ書きです。

▢ 更年期とは?
・閉経(12か月以上の無月経)の前後5年間が関与
・閉経の前5年間を「閉経移行期」、後5年間を「閉経後」と呼ぶ。

▢ 更年期症状と更年期障害
・更年期症状:多種多様な症状で器質的な変化に起因しない
・更年期障害:日常生活に支障をきたす

▢ 心身症とは?
・身体疾患の中で、その発症や経過に心理・社会的因子が密接に関与し、
器質的ないし機能的障害が認められる病態。
(代表的な心身症)
✓呼吸器系:喘息、過換気症候群
✓循環器系:本態性高血圧、狭心症、心筋梗塞、不整脈
✓消化器系:過敏性腸症候群、胃・十二指腸潰瘍
✓内分泌・代謝系:糖尿病、甲状腺機能亢進症
✓皮膚科系:アトピー性皮膚炎、慢性蕁麻疹、円形脱毛症
✓整形外科系:腰痛症、頚肩腕症候群
✓婦人科系:月経前症候群、月経異常、更年期障害

▢ 更年期症状・障害の増悪因子
・更年期症状の増悪に、心理社会的因子が87%関与。
・多くの更年期障害の発症・症状の強さに心理社会的因子が関与。

▢ メンタルヘルスのイメージ
・日本の一般的な認識は、メンタルヘルス=心の健康、メンタルへする対策=うつ病などの病気を予防
・WHOの定義では、メンタルヘルス対策=a state of well-being、メンタルヘルスが良好な状態とは“健康な状態”(自身の可能性を認識し、日常のストレスに対処でき、生産的かつ有益な仕事ができ、さらに自分が所属するコミュニティに貢献できる)
・更年期におけるメンタルヘルス対策として、日頃から日常のストレスに対処できる生活環境の改善や社会的な要素にも注目した包括的な対応が求められている。

▢ ストレスとは?
・ストレッサーを考えてみる
→ 分自身にとって何がストレッサーになっているのかに気づくこと。
・ストレス状態を考えてみる
→ 自分の中で、ストレス状態があるときにはどんな心身への反応が起こるのかを今一度フル返って考えること。

▢ ストレスと心身への影響
(第一段階)警告反応期→ 神経系活動上昇
(第二段階)抵抗期  → 抵抗力大
(第三段階)疲弊期  → 慢性化・再発
…ストレス耐性には限界がある。

▢ 主な心理的ストレッサー
・カタストロフィ:強い衝撃をもたらす出来事
(例)地震、津波、等
・ライフイベント:生活環境から受ける刺激
(例)家族との離別、引っ越し、等
デイリーハッスルズ:日常のちょっとした出来事
(例)流しが汚い、トイレの便座が上がっている、等
…注意すべきは「デイリーハッスルズ」で、意識しないと気付くことができない種類のストレス。

▢ 更年期障害で見られる諸症状
(血管運動症状)寝汗、ホットフラッシュ、発汗、冷や汗、暑さ/寒さの感覚、睡眠困難
(心理的症状)抑うつ、不安、イライラ、興奮しやすい、集中困難、気分の揺れ
(身体症状)肩こり、疲労感、頭痛、めまい、腰痛、胃腸の不快
(性的症状)性への興味消失、性交疼痛、膣の渇き
…「心理的症状」は「更年期うつ病」と鑑別することが重要

▢ 更年期うつ病の原因
・うつ病は神経伝達物質異常による症候群。
・卵巣機能(エストロゲン)低下により神経伝達物質の代謝に影響を与える。
・更年期の諸症状からうつ病の発症につながる。
・家庭や社会での環境変化、心理社会的ストレス
(例)子どもとの関係性の変化、夫婦の関係性の変化、同世代の友人の大病、
 親の介護・看取り・死別、定年後の経済・生活の変化
  ↓
 喪失感、人生への不満、老年を迎える実感、身近となる死、将来の生活不安

▢ リスクファクター
・女性ホルモン関連の既往/依存症:PME/PMDD、周産期うつ病、子宮摘出術
・生活習慣・健康:うつ病の既往、身体疾患の存在、喫煙、運動不足
・心理社会的:パートナーがいない、一人っ子、社会的ストレス

▢ うつ病の診断:D-SIGECAPS 5
D:Depression
S:Sleep
I:Interst
G:Guilt
E:Energy
C:Concenytation
A:Appetite
P:Psychomotor
S:Suicide
5:9項目中5項目以上
…診断項目があること、2週間以上続くことを認識すべし

▢ 更年期うつ病のtips
・更年期にはうつ病が発症しやすい。
・更年期障害の症状を合併していることが多い。
・薬物療法や精神療法が治療の中心。
・HRTは抗うつ効果があり、抗うつ薬の効果増強も見込める。
・閉経後の中高年女性にはSSRIよりもSNRIの方が効果があるという報告あり。

▢ Bio-psycho-social model
(身体的問題)頭痛、食欲不振、関節痛、動悸、等
(心理的問題)抑うつ、イライラ、不安感、不眠、等
(社会的問題)借金、留年、失業、離婚、引っ越し、人間関係トラブル、周りの理解、等

▢ 心理・社会的因子として取り上げるべき項目
1.受診の動機(本人の意思か、家族による勧めか)
2.身体症状に対する患者と家族の受け止め方・対応
3.それまでの治療・経過に対する患者と家族の反応
4.環境、家族構成、生活内容、経済状態の変化(発病時、現在)
5.適応様式(心理的防衛機制を含む)
6.幼児期からの親子関係、友人関係、性格、学歴、職歴、結婚生活など
7.精神的発達段階における出来事と対応
8.ストレスの解消のための方法(趣味、娯楽、スポーツなど)

▢ 心療内科における薬物療法の位置づけ
・ストレス状況場面を乗り越えサポートする。
・身体症状と精神症状の悪循環を断つ。
・心理療法の導入を容易にする。
・使用される薬剤:抗うつ薬、抗不安薬、漢方薬

▢ 更年期障害の精神症状に対する薬物療法
・SSRIやSNRIはホットフラッシュへの効果もある。
・Paroxetine は米国FDAでホットフラッシュに対する非ホルモン療法として認可され、HRT不能例や使用困難な例に対しても使用を考慮することができる。
・更年期女性にはSNRIの方が有効。

▢ まとめ-1
・心身症とストレス、メンタルヘルス→ストレス、心理社会的な影響を考慮
・更年期に認められやすい精神症状→更年期におけるうつ病との鑑別
・精神症状の評価の仕方→医療面接、質問紙などを活用
・女性の生涯におけるメンタルヘルストラブルの相関→PMSや周産期うつ病との関連性
・更年期障害への心身医学的マネージメント→包括的な治療につながる

▢ まとめ-2
・更年期症状/更年期障害としての形でストレスからの影響が出ているのではないか。
・その反応が出たときに、どのようにして対処するのか自分なりの方法を見つけておく。難しい場合には、遠慮せずに周囲に助けを求める。


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