私は診療で「臨床漢方小児科学」(西村甲著、南山堂)のフローチャートを参考にさせていただいています。
乳児(0〜2歳)アトピー性皮膚炎では、
第一選択:黄耆建中湯
第二選択:黄耆建中湯+十味敗毒湯
第三選択:黄耆建中湯+治頭瘡一方 or 黄耆建中湯+消風散
※ 皮疹が上半身に強いときは治頭瘡一方を、上半身に強くないときは消風散を選択
となっています。
しかし、このように処方してもなかなか手応えがありません。
そこで、上記漢方方剤について調べてその特徴を把握し、どのような考えでフローチャートが作られているのか自分なりに検証してみることにしました。
各方剤については以前のブログをご参照ください;
□ 「小児アトピー性皮膚炎に「黄耆建中湯」(98)は有効か?」
□ 「小児アトピー性皮膚炎に「十味敗毒湯」(6)は有効か?」
□ 「小児アトピー性皮膚炎に「消風散」(22)は有効か?」
□ 「乳児の顔面湿疹に「治頭瘡一方」(59)は有効か?」
私が調べた範囲で上記方剤の特徴を一覧表にまとめてみました;
※ より大きく見たい方はこちらをクリック;
病邪(風熱湿)は中医学の概念です。
中医学理論を単純化すると、
1.気・血・津液・精
2.臓腑(五臓六腑)
3.病因
①内因
②病邪(外因と病的産物の総称)
・外因:六淫・・・風・寒・暑・湿・燥・熱(火)
・病的産物:気滞、血瘀、痰飲
となりますが、病因→ 病邪→ 外因と辿ると六淫にたどり着きます。
「風・熱・湿」はアトピー性皮膚炎の急性期/増悪期の病態を適切に表現していると思われるので評価に入れました。簡単に言うと「風邪(カゼではなくフウジャと読みます)≒かゆみ」「湿邪≒ジクジク」「熱邪≒発赤」でしょうか。
ちょっと気になるのが「乾燥肌」の扱いです。
六淫の中に「燥」という項目があるのですが、アトピー性皮膚炎の乾燥肌の原因を外因の「燥」でなく、「血虚」(人体の構成物である血が足りない)で表現しているのです。
つまり、
・湿疹のジクジクは外因である「湿」由来
・湿疹のカサカサは人体の「血」が足りない状態
という考えです。不思議ですね。
ただ、これらの概念が治療に直結し、それが有効であるからさらに不思議です。
以下に各方剤の生薬構成と対象とする病態(証)を列記します。いくつも専門用語が並んで面食らいますが、日本漢方はこの多層構造による病態把握が特徴なので仕方ありません。
なお、TCMとは Traditional Chinese Medicine の略です。
【黄耆建中湯】(98)
(芍薬6.0;黄耆4.0;桂枝・甘草・大棗・生姜各3.0;膠飴20.0)
八綱分類:裏寒虚証
病邪(風熱湿):ー
気血水:気虚、血虚
TCM:補気固表、緩急止痛、温中補虚
【十味敗毒湯】(6)
(柴胡・桔梗・川芎・防風・茯苓・樸樕・生姜各3.0;独活・荊芥・甘草各2.0)
八綱分類:表○実証 ・・・寒熱は「寒」と書いてあるものと「熱」と書いてあるものがありましたので中間?
病邪(風熱湿):風・湿・寒
気血水:水毒/水滞
TCM:祛風化湿、清熱解毒
【治頭瘡一方】(59)
(連翹・朮各4.0;防風・川芎各3.0;忍冬・紅花・荊芥各2.0;甘草1.5;大黄1.0)
八綱分類:表熱実証
病邪(風熱湿):風・湿・熱
気血水:瘀血
TCM:祛風、清熱解毒、活血化湿
【消風散】(22)
(石膏5.0;当帰・地黄・朮・木通各3.0;防風・牛蒡子各2.0;知母・胡麻・甘草各1.5;蝉退・苦参・荊芥各1.0)
八綱分類:表熱実証
病邪(風熱湿):風・熱・湿
気血水:血虚、水毒
TCM:祛風、清熱化湿、養血潤燥
各項目でフローチャートの流れを見ると・・・
【八綱分類】
裏寒虚証 → 裏寒虚証+表○実証 → 裏寒虚証+表熱実証
(黄耆建中湯) (十味敗毒湯) (治頭瘡一方/消風散)
乳児アトピー性皮膚炎患者の基本を「裏寒虚証」(体の内部が冷えて弱っている状態)と考え、それを補っても回復が少ない場合は体表近くの病変をターゲットにした方剤を追加(順番は寒熱中間→ 熱証)という考え方です。
乾燥肌〜軽度の湿疹として治療開始し、効きが悪ければ徐々にひどい湿疹をターゲットにした方剤へ変更、つまりステップアップし治療を強めていく方法ですね。
しかし現場で毎日診療している私にとって、このフローチャートは少し違和感があります。
乳児アトピー性皮膚炎の始まりは顔面頭部であり、赤くて乾いてときに浸出液を認めることが普通です。
なので、乳児早期には治頭瘡一方を選択した方が効果が期待できるのではないかと思います。治頭瘡一方は古くから「胎毒を下す」(乳児早期の湿疹用)とされてきた方剤です。
それで効果があれば廃薬に持って行き、その過程で「この赤ちゃんのベースには裏寒虚証があり長期戦になりそう」と判断すれば黄耆建中湯を併用開始するのがよいかと。
それから、十味敗毒湯と治頭瘡一方/消風散の違いは「寒熱中間」と「熱証」です。
本来は赤みが目立たない皮疹中心なら十味敗毒湯を選択し、赤みが目立つ場合は治頭瘡一方/消風散を選択すべきであり、フローチャートの順番では使いこなせないと思います。
【八綱分類】(武井案)
虚証+寒証 → 黄耆建中湯
実証+寒証 → 十味敗毒湯
実証+熱証 → 治頭瘡一方/消風散
【六淫・六気】
なし → 風・湿・寒 → 風・湿・熱
(黄耆建中湯) (十味敗毒湯) (治頭瘡一方)or(消風散)
黄耆建中湯は外邪についての記載が見当たりませんでした。
十味敗毒湯と治頭瘡一方/消風散の違いは寒熱で、十味敗毒湯は寒(〜寒熱中間?)、治頭瘡一方/消風散は熱。
これもフローチャートとしては不思議で、ターゲットが寒の湿疹(赤みが乏しい)→ 熱の湿疹(赤みが強い)となっていますが、赤いか赤くないかは一見して明瞭ですから、それに応じて方剤を選択すればよいのではないかと思います。
【六淫】(武井案)
黄耆建中湯 → 赤みのない皮疹 → + 十味敗毒湯
赤みのある皮疹 → + 治頭瘡一方/消風散
【気血水】
気虚・血虚(黄耆建中湯)
↓
気虚・血虚(黄耆建中湯)+水毒(十味敗毒湯)
↓
気虚・血虚(黄耆建中湯)+瘀血(治頭瘡一方)
あるいは
気虚・血虚(黄耆建中湯)+血虚・水毒(消風散)
気血水では興味深い展開になりました。
まずベースに気虚・血虚(黄耆建中湯)が存在すると想定し、これは最後まで継続するという指示です。
改善が悪ければ水毒(ジクジク)を目標にした十味敗毒湯を追加し、
これでもよくならなければ、ターゲットを水毒から瘀血(治頭瘡一方)へ変えるか、血虚・水毒対策を強化する目的で消風散へ変える、というフローです。
イメージとしては、カサカサの皮膚の虚弱児に黄耆建中湯を開始し継続、ジクジクが目立つなら十味敗毒湯を追加、効いているけど今ひとつなら消風散へ変更、手応えがなく苔癬化が目につくなら治頭瘡一方、でしょうか。
でも水毒より瘀血が目立つなら、十味敗毒湯に回り道しないで治頭瘡一方を選択した方がよいのでは?
私が並び替えるとすれば、
【気血水】(武井案)
黄耆建中湯→ ジクジク→ +十味敗毒湯 → 十味敗毒湯を消風散へ変更
→ 苔癬化 → +治頭瘡一方
【TCM】 Traditional Chinese Medicine
補気固表・緩急止痛・温中補虚(黄耆建中湯)
↓
+袪風化湿・清熱解毒(十味敗毒湯)
↓
+祛風・清熱解毒・活血化湿(治頭瘡一方)
あるいは
+疏風・清熱化湿・養血潤燥(消風散)
中医学的には、黄耆建中湯以外の3つすべてに入っている単語が3つあります。
1.祛風(あるいは疏風):かゆみを取る作用
2.化湿:湿を取り去る作用
3.清熱:熱を冷ます作用・・・十味敗毒湯は「寒」の方剤であったはずですが(?)
湿疹においては、六淫(六気)の中で風湿熱邪が病態のメインであることの証左ですね。
それから、十味敗毒湯は柴胡剤なので「解毒」、消風散には血虚対策の「養血」があり、方剤の特徴が出ています。
それらを加味すると、黄耆建中湯ベースに追加処方を検討する際は、
【TCM】(武井案)
黄耆建中湯+
解毒したい(柴胡剤を使いたい)→ +十味敗毒湯
活血したい(瘀血を治したい) → +治頭瘡一方
養血したい(血虚対策を強化) → +消風散
という選択に整理できると思います。
最後まで悩ましいのが十味敗毒湯の寒熱ですね。
以上、乳児アトピー性皮膚炎への漢方治療を私なりに再構成した結果を列挙してみます;
【八綱分類】
虚証+寒証 → 黄耆建中湯
実証+寒証 → 十味敗毒湯
実証+熱証 → 治頭瘡一方/消風散
【六淫・六気】
黄耆建中湯 → 赤みのない皮疹 → + 十味敗毒湯
赤みのある皮疹 → + 治頭瘡一方/消風散
【気血水】
黄耆建中湯→ ジクジク→ +十味敗毒湯 → 十味敗毒湯を消風散へ変更
→ 苔癬化 → +治頭瘡一方
【TCM】
黄耆建中湯をベースに
解毒したい(柴胡剤を使いたい)→ +十味敗毒湯
活血したい(瘀血を治したい) → +治頭瘡一方
養血したい(血虚対策を強化) → +消風散
上記を無理矢理まとめると、(武井案)はこうなりました;
<乳児アトピー性皮膚炎への漢方治療>
(虚証)黄耆建中湯
(実〜中間証)黄耆建中湯+下表の方剤から選択
乳児(0〜2歳)アトピー性皮膚炎では、
第一選択:黄耆建中湯
第二選択:黄耆建中湯+十味敗毒湯
第三選択:黄耆建中湯+治頭瘡一方 or 黄耆建中湯+消風散
※ 皮疹が上半身に強いときは治頭瘡一方を、上半身に強くないときは消風散を選択
となっています。
しかし、このように処方してもなかなか手応えがありません。
そこで、上記漢方方剤について調べてその特徴を把握し、どのような考えでフローチャートが作られているのか自分なりに検証してみることにしました。
各方剤については以前のブログをご参照ください;
□ 「小児アトピー性皮膚炎に「黄耆建中湯」(98)は有効か?」
□ 「小児アトピー性皮膚炎に「十味敗毒湯」(6)は有効か?」
□ 「小児アトピー性皮膚炎に「消風散」(22)は有効か?」
□ 「乳児の顔面湿疹に「治頭瘡一方」(59)は有効か?」
私が調べた範囲で上記方剤の特徴を一覧表にまとめてみました;
※ より大きく見たい方はこちらをクリック;
病邪(風熱湿)は中医学の概念です。
中医学理論を単純化すると、
1.気・血・津液・精
2.臓腑(五臓六腑)
3.病因
①内因
②病邪(外因と病的産物の総称)
・外因:六淫・・・風・寒・暑・湿・燥・熱(火)
・病的産物:気滞、血瘀、痰飲
となりますが、病因→ 病邪→ 外因と辿ると六淫にたどり着きます。
「風・熱・湿」はアトピー性皮膚炎の急性期/増悪期の病態を適切に表現していると思われるので評価に入れました。簡単に言うと「風邪(カゼではなくフウジャと読みます)≒かゆみ」「湿邪≒ジクジク」「熱邪≒発赤」でしょうか。
ちょっと気になるのが「乾燥肌」の扱いです。
六淫の中に「燥」という項目があるのですが、アトピー性皮膚炎の乾燥肌の原因を外因の「燥」でなく、「血虚」(人体の構成物である血が足りない)で表現しているのです。
つまり、
・湿疹のジクジクは外因である「湿」由来
・湿疹のカサカサは人体の「血」が足りない状態
という考えです。不思議ですね。
ただ、これらの概念が治療に直結し、それが有効であるからさらに不思議です。
以下に各方剤の生薬構成と対象とする病態(証)を列記します。いくつも専門用語が並んで面食らいますが、日本漢方はこの多層構造による病態把握が特徴なので仕方ありません。
なお、TCMとは Traditional Chinese Medicine の略です。
【黄耆建中湯】(98)
(芍薬6.0;黄耆4.0;桂枝・甘草・大棗・生姜各3.0;膠飴20.0)
八綱分類:裏寒虚証
病邪(風熱湿):ー
気血水:気虚、血虚
TCM:補気固表、緩急止痛、温中補虚
【十味敗毒湯】(6)
(柴胡・桔梗・川芎・防風・茯苓・樸樕・生姜各3.0;独活・荊芥・甘草各2.0)
八綱分類:表○実証 ・・・寒熱は「寒」と書いてあるものと「熱」と書いてあるものがありましたので中間?
病邪(風熱湿):風・湿・寒
気血水:水毒/水滞
TCM:祛風化湿、清熱解毒
【治頭瘡一方】(59)
(連翹・朮各4.0;防風・川芎各3.0;忍冬・紅花・荊芥各2.0;甘草1.5;大黄1.0)
八綱分類:表熱実証
病邪(風熱湿):風・湿・熱
気血水:瘀血
TCM:祛風、清熱解毒、活血化湿
【消風散】(22)
(石膏5.0;当帰・地黄・朮・木通各3.0;防風・牛蒡子各2.0;知母・胡麻・甘草各1.5;蝉退・苦参・荊芥各1.0)
八綱分類:表熱実証
病邪(風熱湿):風・熱・湿
気血水:血虚、水毒
TCM:祛風、清熱化湿、養血潤燥
各項目でフローチャートの流れを見ると・・・
【八綱分類】
裏寒虚証 → 裏寒虚証+表○実証 → 裏寒虚証+表熱実証
(黄耆建中湯) (十味敗毒湯) (治頭瘡一方/消風散)
乳児アトピー性皮膚炎患者の基本を「裏寒虚証」(体の内部が冷えて弱っている状態)と考え、それを補っても回復が少ない場合は体表近くの病変をターゲットにした方剤を追加(順番は寒熱中間→ 熱証)という考え方です。
乾燥肌〜軽度の湿疹として治療開始し、効きが悪ければ徐々にひどい湿疹をターゲットにした方剤へ変更、つまりステップアップし治療を強めていく方法ですね。
しかし現場で毎日診療している私にとって、このフローチャートは少し違和感があります。
乳児アトピー性皮膚炎の始まりは顔面頭部であり、赤くて乾いてときに浸出液を認めることが普通です。
なので、乳児早期には治頭瘡一方を選択した方が効果が期待できるのではないかと思います。治頭瘡一方は古くから「胎毒を下す」(乳児早期の湿疹用)とされてきた方剤です。
それで効果があれば廃薬に持って行き、その過程で「この赤ちゃんのベースには裏寒虚証があり長期戦になりそう」と判断すれば黄耆建中湯を併用開始するのがよいかと。
それから、十味敗毒湯と治頭瘡一方/消風散の違いは「寒熱中間」と「熱証」です。
本来は赤みが目立たない皮疹中心なら十味敗毒湯を選択し、赤みが目立つ場合は治頭瘡一方/消風散を選択すべきであり、フローチャートの順番では使いこなせないと思います。
【八綱分類】(武井案)
虚証+寒証 → 黄耆建中湯
実証+寒証 → 十味敗毒湯
実証+熱証 → 治頭瘡一方/消風散
【六淫・六気】
なし → 風・湿・寒 → 風・湿・熱
(黄耆建中湯) (十味敗毒湯) (治頭瘡一方)or(消風散)
黄耆建中湯は外邪についての記載が見当たりませんでした。
十味敗毒湯と治頭瘡一方/消風散の違いは寒熱で、十味敗毒湯は寒(〜寒熱中間?)、治頭瘡一方/消風散は熱。
これもフローチャートとしては不思議で、ターゲットが寒の湿疹(赤みが乏しい)→ 熱の湿疹(赤みが強い)となっていますが、赤いか赤くないかは一見して明瞭ですから、それに応じて方剤を選択すればよいのではないかと思います。
【六淫】(武井案)
黄耆建中湯 → 赤みのない皮疹 → + 十味敗毒湯
赤みのある皮疹 → + 治頭瘡一方/消風散
【気血水】
気虚・血虚(黄耆建中湯)
↓
気虚・血虚(黄耆建中湯)+水毒(十味敗毒湯)
↓
気虚・血虚(黄耆建中湯)+瘀血(治頭瘡一方)
あるいは
気虚・血虚(黄耆建中湯)+血虚・水毒(消風散)
気血水では興味深い展開になりました。
まずベースに気虚・血虚(黄耆建中湯)が存在すると想定し、これは最後まで継続するという指示です。
改善が悪ければ水毒(ジクジク)を目標にした十味敗毒湯を追加し、
これでもよくならなければ、ターゲットを水毒から瘀血(治頭瘡一方)へ変えるか、血虚・水毒対策を強化する目的で消風散へ変える、というフローです。
イメージとしては、カサカサの皮膚の虚弱児に黄耆建中湯を開始し継続、ジクジクが目立つなら十味敗毒湯を追加、効いているけど今ひとつなら消風散へ変更、手応えがなく苔癬化が目につくなら治頭瘡一方、でしょうか。
でも水毒より瘀血が目立つなら、十味敗毒湯に回り道しないで治頭瘡一方を選択した方がよいのでは?
私が並び替えるとすれば、
【気血水】(武井案)
黄耆建中湯→ ジクジク→ +十味敗毒湯 → 十味敗毒湯を消風散へ変更
→ 苔癬化 → +治頭瘡一方
【TCM】 Traditional Chinese Medicine
補気固表・緩急止痛・温中補虚(黄耆建中湯)
↓
+袪風化湿・清熱解毒(十味敗毒湯)
↓
+祛風・清熱解毒・活血化湿(治頭瘡一方)
あるいは
+疏風・清熱化湿・養血潤燥(消風散)
中医学的には、黄耆建中湯以外の3つすべてに入っている単語が3つあります。
1.祛風(あるいは疏風):かゆみを取る作用
2.化湿:湿を取り去る作用
3.清熱:熱を冷ます作用・・・十味敗毒湯は「寒」の方剤であったはずですが(?)
湿疹においては、六淫(六気)の中で風湿熱邪が病態のメインであることの証左ですね。
それから、十味敗毒湯は柴胡剤なので「解毒」、消風散には血虚対策の「養血」があり、方剤の特徴が出ています。
それらを加味すると、黄耆建中湯ベースに追加処方を検討する際は、
【TCM】(武井案)
黄耆建中湯+
解毒したい(柴胡剤を使いたい)→ +十味敗毒湯
活血したい(瘀血を治したい) → +治頭瘡一方
養血したい(血虚対策を強化) → +消風散
という選択に整理できると思います。
最後まで悩ましいのが十味敗毒湯の寒熱ですね。
以上、乳児アトピー性皮膚炎への漢方治療を私なりに再構成した結果を列挙してみます;
【八綱分類】
虚証+寒証 → 黄耆建中湯
実証+寒証 → 十味敗毒湯
実証+熱証 → 治頭瘡一方/消風散
【六淫・六気】
黄耆建中湯 → 赤みのない皮疹 → + 十味敗毒湯
赤みのある皮疹 → + 治頭瘡一方/消風散
【気血水】
黄耆建中湯→ ジクジク→ +十味敗毒湯 → 十味敗毒湯を消風散へ変更
→ 苔癬化 → +治頭瘡一方
【TCM】
黄耆建中湯をベースに
解毒したい(柴胡剤を使いたい)→ +十味敗毒湯
活血したい(瘀血を治したい) → +治頭瘡一方
養血したい(血虚対策を強化) → +消風散
上記を無理矢理まとめると、(武井案)はこうなりました;
<乳児アトピー性皮膚炎への漢方治療>
(虚証)黄耆建中湯
(実〜中間証)黄耆建中湯+下表の方剤から選択