診療に難渋する思春期の起立性調節障害。
不登校の合併率も高く、小児科医の手に余る例が多いのが現状です。
私は心身一如という概念で診療する漢方医学に活路を見出すべく、
いろいろ調べています。
日本漢方では気血水の異常と捉えて、
それを補正する漢方薬を使うことが基本です。
さて、現代の中国医学である中医学ではどう捉え、
どう治療しているのか、興味があります。
その深遠な世界を覗いてみましょう。
紹介する記事を書いている幸井俊高Dr.は、
日本の医師免許はお持ちでないようですが、
中国の中医学の医師免許を持っている貴重なDr.です。
以前から時々、疾患解説を覗かせてもらっていますが、
中医学の五臓論が出てくるので煙に巻かれて混乱して理解にたどり着かないことが多いので、実は苦手です。
<ポイント>
・起立性調節障害を血(栄養)や気(エネルギー)の不足と異常な水液によるものと考えます。そこで関係するのが、脾と、痰飲です。
・脾は消化吸収や代謝をつかさどり、気血の源を生成します。起立性調節障害で不足しがちな血や気の元を作っているのが脾です。
・脾は消化吸収や代謝をつかさどり、気血の源を生成します。起立性調節障害で不足しがちな血や気の元を作っているのが脾です。
・痰飲は、人体の正常な生理活動に必要な水液である津液(しんえき )が、水分代謝の失調などにより異常な水液と化した病理的産物です。立ちくらみ、めまいなどは、この痰飲が人体への負担となって生じているものです。
・食欲不振、腹痛などの症状が見られるようなら「脾気虚(ひききょ)」証です。飲食物の消化吸収や栄養代謝機能が低下しているため、体内の気血が不足し、血圧が下がると、起立性調節障害になります。
・疲労倦怠感や食欲不振、手足がだるいなどの症状がみられる場合は、「中気下陥(ちゅうきげかん)」証で、中気下陥とは気の機能の1つである固摂(こせつ)作用が低下している状態(平滑筋など筋肉の緊張低下に近い状態)です。
・立ちくらみ、めまいなどの症状が顕著で、大きな舌、白く湿った舌苔が見られるなら、「痰飲」証です。
・動悸、息切れ、疲労倦怠感、めまいなどの症状がみられる場合は「心気虚(しんききょ)」証です。血液循環障害や慢性的な疾患、体調不良、心身虚弱などで心気を消耗すると、この証になり起立性調節障害となります。
・漢方では、主に五臓の脾の機能を高めたり、体内の痰飲を除去したりすることで治療を進めます。
(治療例1)痰飲証
・立ちくらみ、動悸、大きな舌、白く湿った舌苔 → 苓桂朮甘湯(39)
・口渇、尿があまり出ない、頭痛、むくみ → 五苓散(17)
・胃腸が弱く、めまいが生じやすいタイプ → 半夏白朮天麻湯(37)
(治療例2)脾気虚
・食欲不振、腹痛 → 四君子湯(75)
・吐き気、咳、喘息、べっとりと厚い舌苔 → 六君子湯(43)
・腹痛を起こしやすく、お腹が冷えるとすぐ下痢をする → 小建中湯(99)
(治療例3)気虚(中気下陥)
・血圧を保てない、手足がだるい、胃下垂 → 補中益気湯(41)
(その他)心気虚
・桂枝加竜骨牡蛎湯(26)
病態をまとめると、
・血虚 (← 脾気虚)
・気虚 (← 脾気虚):中気下陥(固摂作用低下):疲労倦怠感や食欲不振、手足がだるい
・痰飲:めまい、立ちくらみ
・脾気虚:食欲不振、腹痛
・心気虚:動悸、息切れ、疲労倦怠感、めまい
もっと整理すると、
・脾気虚 → 血虚・気虚 → 血圧低下 → OD
・痰飲(水毒)
・心気虚
に集約され、各患者さんにより各要素のバランスが違う、
と言えそうです。
※ 「痰飲」は日本漢方では「水毒・水滞」が近いと思います。
※ 「中気下陥」は気の固摂作用低下ですから、気虚ですね。
※ 五臓の心は、心臓を含めた血液循環系(血脈)と、人間の意識や判断、思惟などの人間らしい高次の精神活動(神志:しんし)をつかさどります。
※ 「固摂作用」は臓器を定位置に保持し、血液が脈管外に漏れ出るのを防ぎ、汗・尿・便・精液などがけじめなく漏れないように統制する機能です。
…なんだか「虚」の塊のようです。
思春期の起立性調節障害患者さんは、
“エネルギーの固まり”という思春期のイメージからかけ離れ、
心身共に消耗・憔悴しきっているのですね。
これを治すのは大変そう。
▢ 起立性調節障害に効く漢方(1)起立性調節障害の考え方と漢方処方
幸井 俊高=薬石花房幸福薬局(東京都千代田区)代表、薬剤師、中医師
(2023/03/27:DI online)より抜粋;
起立性調節障害(OD:Orthostatic Dysregulation)は、自律神経系の失調により、循環器系の調節がうまくいかなくなる疾患です。起立時の血圧低下や、心拍数の上昇の調節に時間がかかり、立ちくらみ、朝起きられないなどの症状が生じます。小学校高学年から高校生(10〜16歳)に多く見られます。
・・・
よく見られる症状は、朝起きられない、立ちくらみ、疲れやすい、長時間立っていられない、立ち上がったときに気分が悪くなる、午前中は調子が悪い、顔色が青白い──などです。だるさ、めまい、頭痛、動悸、失神、息切れ、食欲不振、腹痛、乗り物酔いしやすいといった症状も見られます。
症状は、立位や座位で増悪し、臥位(がい:寝た状態)で軽減します。また、午後や夜になると元気になる傾向があります。ただし、重症例では臥位でも症状が重く、起き上がれないこともあります。朝起きられないために遅刻や欠席が増え、不登校や引きこもりになる割合が多いことが知られています。
原因としては、自律神経系の失調が挙げられます。人は起立すると重力により血液が下半身に集まり、血圧が低下します。このとき自律神経系の1つである交感神経が興奮して下半身の血管を収縮させて心臓へ戻る血液量を増やし、血圧を維持します。この自律神経系の機能が低下すると、血圧が低下したままとなり、様々な症状が表れます。
小学校高学年から高校生という第二次性徴期のホルモンバランスの変化や、精神的、肉体的な変化も関係していると考えられています。精神的なストレス、特に学校や家庭でのストレスも、大きな要因の1つです。季節や気候の変化、生活リズムの乱れ、無理なダイエットや摂食障害による筋肉量の低下なども関係してきます。
治療法について、西洋医学では、主にミドドリン塩酸塩(商品名メトリジン他)などの昇圧薬を用いて血圧を上昇させる対症療法が行われます。一方、漢方では、起立性調節障害を血(栄養)や気(エネルギー)の不足と異常な水液によるものと考えます。そのため、自律神経系を整え、血や気を増やし、血圧の低下が起こらないように体質を強化することで、治療していきます。そこで関係するのが、脾(ひ)と、痰飲(たんいん)です。
脾は五臓の1つで、消化吸収や代謝をつかさどり、気血の源を生成します。起立性調節障害で不足しがちな血や気の元を作っているのが五臓の脾です。
痰飲は、人体の正常な生理活動に必要な水液である津液(しんえき )が、水分代謝の失調などにより異常な水液と化した病理的産物です。立ちくらみ、めまいなど起立性調節障害で生じる症状の多くは、この痰飲が人体への負担となって生じているものです。
従って漢方では、主に五臓の脾の機能を高めたり、体内の痰飲を除去したりすることで、起立性調節障害の治療を進めます。
食欲不振、腹痛などの症状が見られるようなら、「脾気虚(ひききょ)」証です。五臓の脾の機能(脾気)が弱い証です。飲食物の消化吸収や栄養代謝機能が低下しているため、体内の気血が不足し、血圧が下がると、起立性調節障害になります。漢方薬で脾気を強めることにより、起立性調節障害の治療を進めます。
疲労倦怠感や食欲不振、手足がだるいなどの症状がみられる場合は、「中気下陥(ちゅうきげかん)」証です。中気下陥とは、気の機能の1つである固摂(こせつ)作用が低下している状態です。固摂作用は、臓器を定位置に保持し、血液が脈管外に漏れ出るのを防ぎ、汗・尿・便・精液などがけじめなく漏れないように統制する機能を指します。平滑筋など筋肉の緊張低下に近い状態です。ベースには「脾気虚」証があります 。固摂作用が弱いため、血圧を維持できず、起立性調節障害が生じます。気の固摂作用を高める漢方薬を用いて、起立性調節障害を治療します。
立ちくらみ、めまいなどの症状が顕著で、大きな舌、白く湿った舌苔が見られるなら、「痰飲」証です。痰飲が人体への負担となると、起立性調節障害になります。痰飲を取り除く漢方薬を用い、起立性調節障害の治療にあたります。
動悸、息切れ、疲労倦怠感、めまいなどの症状がみられる場合は、「心気虚(しんききょ)」証です。五臓の心(しん)の機能(心気)が弱い体質です。心は、心臓を含めた血液循環系(血脈)と、人間の意識や判断、思惟などの人間らしい高次の精神活動(神志:しんし)をつかさどります。血液循環障害や慢性的な疾患、体調不良、心身虚弱などで心気を消耗すると、この証になり起立性調節障害となります。寝ている間に夢をよく見て、興奮しやすいようなタイプです。この証の場合は、心気を漢方薬で補うことで心の機能を強化し、起立性調節障害を治療します。
日常生活では、規則正しい生活を送ることが大切です。眠くなくても夜更かしせず、就寝が遅くならないようにしましょう。食事は、旬の新鮮な食材を中心に、バランスよく摂取しましょう。十分な水分と適度な塩分摂取も大切です。またウオーキングなどの運動により、下半身の筋力低下を防ぎ、さらに筋肉をつけるようにしましょう。
よく見られる症状は、朝起きられない、立ちくらみ、疲れやすい、長時間立っていられない、立ち上がったときに気分が悪くなる、午前中は調子が悪い、顔色が青白い──などです。だるさ、めまい、頭痛、動悸、失神、息切れ、食欲不振、腹痛、乗り物酔いしやすいといった症状も見られます。
症状は、立位や座位で増悪し、臥位(がい:寝た状態)で軽減します。また、午後や夜になると元気になる傾向があります。ただし、重症例では臥位でも症状が重く、起き上がれないこともあります。朝起きられないために遅刻や欠席が増え、不登校や引きこもりになる割合が多いことが知られています。
原因としては、自律神経系の失調が挙げられます。人は起立すると重力により血液が下半身に集まり、血圧が低下します。このとき自律神経系の1つである交感神経が興奮して下半身の血管を収縮させて心臓へ戻る血液量を増やし、血圧を維持します。この自律神経系の機能が低下すると、血圧が低下したままとなり、様々な症状が表れます。
小学校高学年から高校生という第二次性徴期のホルモンバランスの変化や、精神的、肉体的な変化も関係していると考えられています。精神的なストレス、特に学校や家庭でのストレスも、大きな要因の1つです。季節や気候の変化、生活リズムの乱れ、無理なダイエットや摂食障害による筋肉量の低下なども関係してきます。
治療法について、西洋医学では、主にミドドリン塩酸塩(商品名メトリジン他)などの昇圧薬を用いて血圧を上昇させる対症療法が行われます。一方、漢方では、起立性調節障害を血(栄養)や気(エネルギー)の不足と異常な水液によるものと考えます。そのため、自律神経系を整え、血や気を増やし、血圧の低下が起こらないように体質を強化することで、治療していきます。そこで関係するのが、脾(ひ)と、痰飲(たんいん)です。
脾は五臓の1つで、消化吸収や代謝をつかさどり、気血の源を生成します。起立性調節障害で不足しがちな血や気の元を作っているのが五臓の脾です。
痰飲は、人体の正常な生理活動に必要な水液である津液(しんえき )が、水分代謝の失調などにより異常な水液と化した病理的産物です。立ちくらみ、めまいなど起立性調節障害で生じる症状の多くは、この痰飲が人体への負担となって生じているものです。
従って漢方では、主に五臓の脾の機能を高めたり、体内の痰飲を除去したりすることで、起立性調節障害の治療を進めます。
食欲不振、腹痛などの症状が見られるようなら、「脾気虚(ひききょ)」証です。五臓の脾の機能(脾気)が弱い証です。飲食物の消化吸収や栄養代謝機能が低下しているため、体内の気血が不足し、血圧が下がると、起立性調節障害になります。漢方薬で脾気を強めることにより、起立性調節障害の治療を進めます。
疲労倦怠感や食欲不振、手足がだるいなどの症状がみられる場合は、「中気下陥(ちゅうきげかん)」証です。中気下陥とは、気の機能の1つである固摂(こせつ)作用が低下している状態です。固摂作用は、臓器を定位置に保持し、血液が脈管外に漏れ出るのを防ぎ、汗・尿・便・精液などがけじめなく漏れないように統制する機能を指します。平滑筋など筋肉の緊張低下に近い状態です。ベースには「脾気虚」証があります 。固摂作用が弱いため、血圧を維持できず、起立性調節障害が生じます。気の固摂作用を高める漢方薬を用いて、起立性調節障害を治療します。
立ちくらみ、めまいなどの症状が顕著で、大きな舌、白く湿った舌苔が見られるなら、「痰飲」証です。痰飲が人体への負担となると、起立性調節障害になります。痰飲を取り除く漢方薬を用い、起立性調節障害の治療にあたります。
動悸、息切れ、疲労倦怠感、めまいなどの症状がみられる場合は、「心気虚(しんききょ)」証です。五臓の心(しん)の機能(心気)が弱い体質です。心は、心臓を含めた血液循環系(血脈)と、人間の意識や判断、思惟などの人間らしい高次の精神活動(神志:しんし)をつかさどります。血液循環障害や慢性的な疾患、体調不良、心身虚弱などで心気を消耗すると、この証になり起立性調節障害となります。寝ている間に夢をよく見て、興奮しやすいようなタイプです。この証の場合は、心気を漢方薬で補うことで心の機能を強化し、起立性調節障害を治療します。
日常生活では、規則正しい生活を送ることが大切です。眠くなくても夜更かしせず、就寝が遅くならないようにしましょう。食事は、旬の新鮮な食材を中心に、バランスよく摂取しましょう。十分な水分と適度な塩分摂取も大切です。またウオーキングなどの運動により、下半身の筋力低下を防ぎ、さらに筋肉をつけるようにしましょう。
■ 症例1
「小学校6年の娘が起立性調節障害になりました。朝起こしに行くと、体がだるい、頭が重い、と言ってなかなか起きなくなりました。頑張って学校に行っても、動悸や立ちくらみがひどく、保健室で横になることも多いようです」
「小学校6年の娘が起立性調節障害になりました。朝起こしに行くと、体がだるい、頭が重い、と言ってなかなか起きなくなりました。頑張って学校に行っても、動悸や立ちくらみがひどく、保健室で横になることも多いようです」
午前中は気分が優れませんが、午後になると元気が出てきて、友だちと遊んでいます。活動的になるのが午後からと遅いせいか、夜は目がさえて、なかなか眠れないようです。舌は淡紅色で大きく、白く湿った舌苔が付着しています。
立ちくらみ、動悸、大きな舌、白く湿った舌苔などが見られることから、この患者さんは、「痰飲」証です。痰飲が負担となり、起立性調節障害になったのでしょう。
痰飲証の場合は、痰飲を取り除く漢方薬を用い、起立性調節障害の治療にあたります。この患者さんには、苓桂朮甘湯を服用してもらいました。服用を始めて2週間後、動悸や立ちくらみが減ってきました。1カ月後、朝の頭痛がずいぶん減りました。2カ月後、朝起きられないことはほとんどなくなりました。
同じ痰飲証でも、口渇、尿があまり出ない、頭痛、むくみなどの症状がみられるなら、五苓散を用います。胃腸が弱く、めまいが生じやすいタイプには、半夏白朮天麻湯を使います。
立ちくらみ、動悸、大きな舌、白く湿った舌苔などが見られることから、この患者さんは、「痰飲」証です。痰飲が負担となり、起立性調節障害になったのでしょう。
痰飲証の場合は、痰飲を取り除く漢方薬を用い、起立性調節障害の治療にあたります。この患者さんには、苓桂朮甘湯を服用してもらいました。服用を始めて2週間後、動悸や立ちくらみが減ってきました。1カ月後、朝の頭痛がずいぶん減りました。2カ月後、朝起きられないことはほとんどなくなりました。
同じ痰飲証でも、口渇、尿があまり出ない、頭痛、むくみなどの症状がみられるなら、五苓散を用います。胃腸が弱く、めまいが生じやすいタイプには、半夏白朮天麻湯を使います。
▢ 起立性調節障害に効く漢方(2)集会中に倒れた起立性調節障害の中学生
(2023/03/30:DI online)より抜粋;
・・・
■ 症例2
「起立性調節障害です。目が覚めても頭痛や腹痛で、なかなか布団から出られません。全校集会などで立っていると立ちくらみが生じやすく、先日とうとう集会中に体育館で倒れてしまいました」
「起立性調節障害です。目が覚めても頭痛や腹痛で、なかなか布団から出られません。全校集会などで立っていると立ちくらみが生じやすく、先日とうとう集会中に体育館で倒れてしまいました」
中学3年生の男性です。起きた直後は食欲がなく、時間がたってからでないと食事ができません。病院で処方された昇圧薬を服用して、なんとか登校できていましたが、このところ遅刻する日が増えてきました。受験を控えているので心配です。疲れやすく、声に力がないタイプです。舌は腫れぼったくて白く、その上に白い舌苔が薄く付着しています。
食欲不振、腹痛が見られることから、この患者さんの証は「脾気虚」です。脾気が弱いため体内の気血が不足し、起立性調節障害になったのでしょう。
この体質の場合は、漢方薬で脾気を強めることにより、起立性調節障害の治療を進めます。四君子湯を服用してもらい、服用を始めて2週間後、朝の食欲が出てきました。1カ月後に腹痛の頻度が減り、3カ月後には、頭痛や立ちくらみもほとんど生じなくなりました。
同じ脾気虚証で、吐き気、咳、喘息、べっとりと厚い舌苔などの症状もあるようなら、六君子湯を用います。また、腹痛を起こしやすく、お腹が冷えるとすぐ下痢をするようなタイプには、小建中湯が向いています。
食欲不振、腹痛が見られることから、この患者さんの証は「脾気虚」です。脾気が弱いため体内の気血が不足し、起立性調節障害になったのでしょう。
この体質の場合は、漢方薬で脾気を強めることにより、起立性調節障害の治療を進めます。四君子湯を服用してもらい、服用を始めて2週間後、朝の食欲が出てきました。1カ月後に腹痛の頻度が減り、3カ月後には、頭痛や立ちくらみもほとんど生じなくなりました。
同じ脾気虚証で、吐き気、咳、喘息、べっとりと厚い舌苔などの症状もあるようなら、六君子湯を用います。また、腹痛を起こしやすく、お腹が冷えるとすぐ下痢をするようなタイプには、小建中湯が向いています。
■ 症例3
「起立性調節障害で、朝は2台の目覚まし時計を使っていますが、なかなか起きられません。学校に遅刻することが多く、休むことも少なくありません」
「起立性調節障害で、朝は2台の目覚まし時計を使っていますが、なかなか起きられません。学校に遅刻することが多く、休むことも少なくありません」
16歳の女性です。めまいが強く、体調が良くないときは頭痛もあります。手足がだるく、息切れしやすく、食欲がなくて人より小食です。便は慢性的に軟らかく、よく下痢をします。胃下垂です。月経周期は短めで、経血量がかなり多いのも悩みです。舌は淡紅色をしています。
この患者さんの証は、「中気下陥」です。気の固摂(こせつ)作用が弱いため、血圧を維持できず、起立性調節障害が生じたのでしょう。手足がだるい、胃下垂などはこの証の特徴です。
この証の場合は、漢方薬で気の固摂作用を高め、起立性調節障害を治療します。患者さんには、補中益気湯を服用してもらいました。服用を始めて1カ月後、めまいが減りました。2カ月後、食欲が出てきて、以前よりたくさん食べるようになってきて、下痢することも減りました。3カ月後、ふらつきや息切れをしなくなり、遅刻や欠席が減ってきました。5カ月後、月経の周期、経血量ともに安定してきました。8カ月後には血圧が正常域にまで上がり、朝も普通に起きられるようになり、遅刻や欠席することなく通学できるようになりました。久しぶりに会う人に、顔色が良くなったね、と言われたようです。
今回紹介した症例のほかに、「心気虚」証には、桂枝加竜骨牡蛎湯など、心気を補う漢方薬で心の機能を強化し、起立性調節障害を治療します。
この患者さんの証は、「中気下陥」です。気の固摂(こせつ)作用が弱いため、血圧を維持できず、起立性調節障害が生じたのでしょう。手足がだるい、胃下垂などはこの証の特徴です。
この証の場合は、漢方薬で気の固摂作用を高め、起立性調節障害を治療します。患者さんには、補中益気湯を服用してもらいました。服用を始めて1カ月後、めまいが減りました。2カ月後、食欲が出てきて、以前よりたくさん食べるようになってきて、下痢することも減りました。3カ月後、ふらつきや息切れをしなくなり、遅刻や欠席が減ってきました。5カ月後、月経の周期、経血量ともに安定してきました。8カ月後には血圧が正常域にまで上がり、朝も普通に起きられるようになり、遅刻や欠席することなく通学できるようになりました。久しぶりに会う人に、顔色が良くなったね、と言われたようです。
今回紹介した症例のほかに、「心気虚」証には、桂枝加竜骨牡蛎湯など、心気を補う漢方薬で心の機能を強化し、起立性調節障害を治療します。
今回の幸井Dr.解説は、すんなり頭に入ってきました。
ただ疑問点があります。
最初に「脾気虚が原因で気血両虚証になる」と述べている割には、
血虚の治療薬に言及がないのはなぜ?
脾気虚を治療すれば、おのずと血虚も改善するという意味なのでしょうか。
日本漢方では、頭痛を気逆と捉えることが多いのですが、
それにも言及がありませんでした。