漢方学習ノート

漢方医学の魅力に取りつかれた小児科医です.学会やネットで得た情報や、最近読んだ本の感想を書き留めました(本棚3)。

「味覚の科学」by NHK-BS

2013年11月02日 16時29分06秒 | 食育
原題:The Truth About Taste
制作:BBC (イギリス 2013年)
BS世界のドキュメンタリー、シリーズ「育てる・食べる・味わう」の中で放映されました。

番組解説
 味覚は人間の感覚の中でもっとも密接に快感と関係しているが、そのメカニズムは解明されていない。
 番組は、味覚研究の最前線を取材し、私たちはどのように「おいしさ」を感じているのかを解説。さらに、そのメカニズムを利用して、“おいしいけど不健康”な現代の食べ物を“健康的でおいしく感じる”食べ物に変えるという試みを探る。
 人間が感じる味覚とは、甘味、塩味、酸味、苦味そして旨味。このうち、生まれてすぐに発達するもっとも重要な味覚は甘味だという。赤ちゃんにとって、成長に必要な高カロリーを意味するからだ。また、子どものころ嫌いだったピーマンが食べられるようになるのは、大人になると苦味の感覚が鈍くなるからだという。
 味覚と同じぐらい重要なのが嗅覚。香りの情報が脳に送られると、味を感じるのと同じ部位が反応する。実際の糖分ではなく、香りを利用して甘さを感じさせることは可能なのだろうか。ある研究家は、100人の被験者が甘味を強く感じたトマトの香り成分を分析し、実際の甘さではなく香り成分の混合が砂糖と同じ効果をもたらしていることを発見。つまり、香りを使って糖分が少ないスイーツや飲料が作られる日も近い・・・?


 嗅覚障害があると「味がわからない」状態になることに驚きました。
 甘味、酸味などを感じることができても、チョコレートアイスとバニラアイスの味の違いがわからなくなるのです。

 その秘密は「揮発性物質」(volatiles)。
 いわゆる「ニオイ」とは、鼻から入る気体中の物質を関知し、これをオルソネーザル(鼻腔香気)と呼ぶそうです。
 そしてもう一つ、味わいの決め手になるのがレトロネーザル(口腔香気)。
 こちらは食べ物を口に含んで咀嚼しているときに揮発する物質が喉の奥から鼻に回って嗅覚を刺激するもの。
 これらの味覚と嗅覚刺激が脳に到達して総合的に「味わい」を形成すると説明されていました。
 だから風味は感情や記憶と結びつく、と。

 なるほど。

 交通事故の後遺症で嗅覚障害となった女性が嗅覚を取り戻す過程で「不思議なことに思い出深い味から復活していくのです」と話しているのを興味深く拝見しました。

 トマトの味を極めようとした学者がその味を分析した結果、おいしさを甘味だけでは説明できないことを見いだしました。
 揮発性物質であるゲラニアールとイソ吉草酸がおいしさの決め手であると突き止めました。
 それぞれ単体では甘味もトマトの風味もない物質だそうです。ゲラニアールは花あるいは香水の匂い、イソ吉草酸は不快なニオイで汗のしみこんだ靴下のニオイ・更衣室のニオイと云ってました(苦笑)。

 不思議です。

 ミラクルベリー(日本ではミラクルフルーツという呼び名の方が一般的)も紹介されました。
 この果物を食べた後に酸っぱいものを食べると甘く感じるという不思議な代物として有名です。10の酸味が7の甘味と3の酸味に変化すると云われています。
 私も実際に購入して試した事がありますが、確かにレモンがレモネードの味になり驚きました。酸っぱい味で飲みにくい漢方薬の味を誤魔化すこともできました(ただし酸味だけ)。
 そのカラクリは、この果物に含まれるミラクリンという糖タンパク。
 「ミラクリンが酸によって変化し甘味を受け入れる感度を高めて酸味を消す」と説明されていました。
 ただ、ミラクルベリーを先に口にしなければ効果が得られないという弱点があります。一緒に食べても効果が発揮されないのです。
 シカゴの有名レストランのシェフは、このミラクリンを使って甘くないものを甘いと感じさせるダイエット食を開発しようと試みていました。

 ネットで検索すると、ミラクリンを遺伝子工学を用いて作る技術が開発されつつあるようですね。ターゲットは糖尿病患者。

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