さて過敏性腸であるが。過敏性腸を理解するには自律神経を理解しなくてはならない。大抵の医者は基礎医学の時には、健康で試験に通る目的で勉強してるから、医者になってから発言しようと思うと、また基礎医学を勉強しなす必要が出てくることが多い。私は医学部の時、過敏性腸に悩まされていたため、基礎医学の勉強は、非常に興味があったし、必要あって真剣に勉強した。
さて、過敏性腸であるが。これは自律神経を理解しなくてはならない。まず単純に交感神経が緊張すると下痢を起こし、副交感神経が緊張すると便秘になる、と大まかに便宜的に考えるのはいいだろう。自律神経を理解するのに、これはわかりやすいのである。しかし、現実には、そう単純ではない。
交感神経は緊張した時に優位になるが、だからといって即、下痢とはいえないのである。ストレスにも悪いストレスと良いストレスがある。ノルアドレナリンが脳の中で多量に出ている事は同じでも、脳には機能局在がある。前頭葉は考える部位、後頭葉は視覚の中枢、側頭葉は聴覚、というように、脳には働きの部位が分かれているのである。良いストレスと悪いストレスとでは、おそらくノルアドレナリンを分泌する部位が違うはずである。ヤクザに取り囲まれた時も、好きな趣味のスポーツの前の試合の時もノルアドレナリンは多量に分泌される。しかし、両者が違う精神状態であることは、素人でもわかるはずである。これは、おそらく、ノルアドレナリンを分泌する脳の部位が違うからであろう。前者は恐怖の中枢からの分泌で、後者はガッツ、やる気の中枢からの分泌とでも言おうか。
この事は同様に副交感神経でも言える。同じ副交感神経優位でも、リラックスと無気力、とでは違う。
交感神経と副交感神経はどちらが優位の場合でも絶えず、両方が働いていて、綱引きをし、健康のバランスをとっているのである。そしてまた日常の生活でも、緊張のしっぱなしだけでも、休息のしっぱなし、でもダメなのである。緊張と休息のメリハリのある生活が健康にいいのである。
私はあまりミクロ的な医学の研究には意欲がないので、ここらへんは意欲のある研究者に研究してほしいものである。