小説家、精神科医、空手家、浅野浩二のブログ

小説家、精神科医、空手家の浅野浩二が小説、医療、病気、文学論、日常の雑感について書きます。

試合の練習のデメリット

2009-01-30 00:47:40 | 武道・スポーツ
試合の練習のデメリット

スポーツにも色々あるが、テニスほど早い段階での試合の練習がデメリットとなるものも少ないのではないか、と思う。一言でいうと、技術が下手でも試合に勝てる人をつくってしまうという事である。他のスポーツでは、まず、こういうまぐれ勝ちは起こらない。では、なぜテニスが。というと、テニス、特にダブルスでは。まず、自分の技術で得点する場合より、自分のミスで負けてしまう、という事が非常に多い。それは、プロでも言えて、選手の試合を見ていると、そういう事が非常に多い。例をあげると。一番目のサービスできわどいショットを狙い、フォルトしてしまい、二番目のサービスでは、ダブルフォルトを、おそれるから、球を弱くするため、レシーブエースをとられてしまう。または、ダブルフォルトしてしまう。ラリーになった時、きわどいのを狙おうとするすから、ネットしてしまったり、オーバーしてしまったりする。などと自分のミスによって相手に得点させてしまうケースが非常に多い。ましてや趣味のテニスではなおさらである。試合に勝つ事が目的になってしまうと、技術の上達の弊害が出かねない。サービスで、基本のフォームを身につけようとするより、小手先のスピンをかける事に意識がいき、スピンサーブは出来て、サービスエースはとれる事も、出来てしまう。フォームが正しくなくてもボールを返せれば、相手のミスによって、自分が得点できてしまう、ことも出来てくる。上級者ほどきわどいショットを狙おうとする。また、当たり所が悪い事によって、結果としてドロップショットになったり相手の打ち返しにくい所にボールが行ってしまう、という事も起こる。目的が試合で勝つ事だけになってしまうと、そういう技術ばかり考えてしまう人もつくってしまう。これが、空手家の南郷継正氏の言うところのウソ勝ちである。空手や柔道など武道は相手と密着して戦うのでウソ勝ちは起こりにくい。しかしその武道でもウソ勝ちはあるのであるから、コートを隔てて相手と接触しないテニスではなおさらである。ここをコーチはどう指導するか、という問題がある。テニスの基本はあくまでグランドストロークのラリーがつづき、正しいストロークのフォームを身につけるということにある。しかし、そればかりでは、面白くない、と思う生徒もいるから、試合も織り交ぜた練習メニューをつくってしまう。まあ、試合は、それなに面白いだろうから、そうしても悪くはないが、あまり試合偏重の練習メニューをつくるのは、よろしいことではない。
また生徒も試合が面白く、基本の練習より試合が好きになってしまう人も出来てしまう。しかし試合に勝てても、基本のフォームが身についていないと、レベルの高い相手には勝てないし、基本の技術も身についていないからテニスが面白くなくなってしまい、テニスをやめてしまう、という事も起こりかねない。コーチはそういう事も考えて練習メニューをつくらなくてはならない。
私としては、試合で勝った、負けたなんてどうでもよく、グランドストロークのラリーが気持ちいいし、それがテニスの目的だし、また試合の弊害という事は、感覚的にはじめからわかっていた。
またテニススクールの経営、という面も考えられないではない。生徒に面白さを感じさせれば生徒をつなぎとめておく事ができる。しかし、私の見る所、そういう計算は無い。単に無考えにレパートリーに富んだ練習メニューにしているだけに過ぎない。
では生徒は上達しないか、というと一言ではいえない。まず、楽しみや健康のためにテニスをやっている人は、技術が悪くてもつづける。楽しく汗をかけるからである。また、テニスが上手くなりたいと思っている人も、上達する。(つづく)

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