東京日和 素敵な暮らし for all women インテリアのレシピ

インテリアをとおして・・仕事、プライベート、子育て。色々なシーンでその場所をより楽しく過ごすエッセンスや情報を綴ります。

いつかのオレンジ

2014-03-10 | ストーリー
午後の授業はかなり退屈だ。

もう朝から、5時間も・・・

窓側の席。何故か席替えがあっても窓側の席になることが多い。

片肘をついて、日よけ用のクリーム色のカーテンの隙間から

窓の外の景色に目をやる。

学校は、埋め立ての進んだ土地開発の中の計画と伴に出来た学園。

校門の向こうに新しい鉄道の高架が見える。その先が海だ。

たっぷりの土地に建てた学校は敷地が広い。

野球のグランド、サッカーグランド、陸上トラック、テニスコート3面。

第二体育館に剣道場、その脇は弓道の道場だ。

私はバスケット部に所属していた。

担任は体育の専任教諭。!!入学したての頃は、これから学園ドラマでも始まる??

なんて思いもしたが・・・そんなはずもなく。担任はつつがなく、爽やかに

毎日を副担の女性教師と1年のそのクラスを進めていった。

冬にもなれば、その広い敷地の外周1.2キロをマラソンだ。

タイムなど計ったりして。「よし!!みんな5分で帰ってこいよ」「え~!」

そういいつつも、ここは素直な1年生。みんな結構、頑張る。

味を占めた担任は、今度の全校マラソン大会で、

「体育部に所属の者は50番以内に入ること!」と、体育教師の意地で賜った。

そして、オレのために頑張れと!そこだけ青春ドラマ!

いざ、大会が来ると、クラブ活動で、コートを占領して練習する先輩をシリ目?!に?

ひたすら、コートの回りをランニグが多い1年生は強かった。

担任の望み通り、ほぼ体育系のクラブの子達は50位以内に入った。

担任はかなり誇らしげ。私はと言えば、48位で辛うじてひかかった。

!!でもさ。全校だよ、すごくない?女子だけでも600人以上いる。

ふう。まったく。望みが高い。クラスの女子2人は1、2位を争っていた。

1人は私の中学からの友達。まったく、なんで?全員の中で一番になりたいって・・・

私には思いもよらない。志が高いのか?極度の負けず嫌いか?

二人とも、普段はそんな雰囲気ではない子なので、志が高いんだ。

!!そういえば、1位の子は担任が好きだと公言してた。そっか!納得。

愛の力??私にはやっぱりわからない。

この担任とは。2年生になっても自分の担任だった。

1年の始め抱いた、理想の高校生活は勿論、担任などは関係なく。静かに進んだ。

後日談で卒業後。かなりしてから、その担任は1年の時のクラスの1番かわいい女子と

結婚していたから驚きである。風のうわさでは、彼女の弟がその担任が顧問の

バレー部だったとか。卒業後付き合いはじめ結婚に至ったとのことだった。

本当に人の縁はわからないものだ。


あの日、教室の窓から見えた遥かに見える海の景色は、

いつも私に、午後の退屈な授業に小さな安らぎをもたらした。

ホームルームが3時過ぎには終わり、それぞれの部活が始まる。

部活も半ばになると空もオレンジに染まりはじめる。合間の休憩時間に、

熱気でむんむんした空気の体育館を逃れ、出口付近の通路で

流れる汗をタオルで拭きながら、風に吹かれ黄昏ゆく空の色を眺めていた。


高校のいたるところで、体育館やいろいろなグランド、吹奏楽の音楽室、

軽音部の部室、美術室、みんなが放課後の時間を、何かそれぞれの思いを巡らせて

10代の思い出の時間を作っていた。

それは、いつになっても、いくつになっても変わらないかもしれない。

何かに心を傾けて考え、費やした時間はすべてが輝きを持った時間になる。

そう思う。だから、その時の空間の空気や、音、体育館のバスケなら、

バッシューがキュキュと滑り、ボールがリズミカルにバウンドする音、

その時に感じた、色やにおいまでもちゃんと記憶の中にある。


記憶はそうやって作られていくのかもしれない。

ならば、心を込めた思い出になるように記憶させたいな。

1つ1つ大切に。

たぶん、これからも・・・明日は輝き続けていくものなのだ。

それぞれの時間に合ったように。

止まるな!考えよ!そう記憶が教えてくれた。