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ツリオヤジのダイアリシスな日々 ~ 知れぬ事は知れぬまゝに、たやすく知れるのは浅い事 (葉隠 聞書第一0202)

カンサイ・インベイジョン

2020-09-19 05:03:28 | 釣りの話題

洋楽好きであれば、ブリティッシュ・インベイジョンという言葉を聞いたことがあると思います。
1960年代、ビートルズを代表とするイギリスの音楽がアメリカに対し多大な影響を与えたことはインベイジョン(侵略)と表現されています。インベイジョンを引き起こしたブリティッシュロックはその後も発展を続け、ハードロック、グラムロック、カンタベリー、プログレなど多様化しロック全盛期を迎えます。一方、アメリカではカウンターカルチャーを引き起こし、アメリカンロック、ブルースロック、サザンロックと独自の隆盛へと発展します。

それはさておき、沖釣りの話です。

私が沖釣りを始めた頃は80年代後半。その頃は沖釣りの成熟期に入っていて、関東地方、特に東京湾と相模湾は遊漁船の最先端でした。もちろん、遊漁自体は全国各地でずそのずっと昔からあったのですが、大型のFRP船を装備し、釣り物の種類の多様化、釣法の先進性、第三次産業としてのサービスを意識した業者(船宿)が、関東には群を抜いて多かった時代だったと思います。

その当時は、伝統的な釣りと新しい釣りが混在している時代でした。

伝統的な釣りは、漁法をモディファイしたもの(カモシ、大原式ビシマ、カッタクリなど)と、富裕層の舟遊びが庶民に普及したもの(江戸前ハゼ、キス、カレイなど)とに分かれます。中には江戸時代から伝わるトラディッショナルな釣りもありました。

新しい釣りは、主にコマセを使ったもの。相模湾を発祥とする置き竿&長ハリスのコマセダイ。針に合成繊維を巻いて疑似餌に見立てるコマセシャクリ、などがその例。
関東独自の釣りも多かったです、ラッキョウで釣り富津のイイダコ、イワシミンチで釣るビシアジ、シャコテンヤで釣るスミイカ、竹ではなくプラヅノを使うスルメイカ、ヤリイカ、などなど枚挙にいとまがありません。

近代の沖釣りは、関東が中心だったと断言しても過言ではないと思います。
その後も、PEの普及により道糸が細くなり、カワハギは宙の釣りに移行し、いつの間にか鯨穂は忘れ去られました。マルイカはブランコ仕掛けから直ブラ、直結を経て、現在はゼロテン釣法が主流。テンヤ釣りには中オモリをつけないひとつテンヤ釣法。アオリイカは餌木を動きをよくするために長竿が考案されました。

新しい釣りが登場すれば一部の釣りは駆逐されを繰り返し、釣りスタイルには流行り廃りがありますが、2000年代までは関東の釣りが遊漁をリードしていたと言えると思います。

しかし、最近になって、新しい釣り方といえば、すべて関西からやってきたものになっています。特にこの2~3年はそれが顕著な気がします。

東京湾の海老餌の鯛をみても、鴨居式シャクリ、鴨居テンヤ釣りの伝統釣法から、ひとつテンヤへシフト。それが今や、九州の鯛玉を起源をするタイラバにとってかわられています。

曳釣から中オモリを使ったしゃくり釣りで人気になったアオリイカは、和歌山(福井?)からのスパイラル(ティップラン)釣法が相模湾でも出船するようになりました。

去年から東京湾でブレイクしているのは、明石から入ってきたタコ餌木と竿リールを使ったタコ釣り。東京湾古来の釣法の、カニを縛ったタコテンヤを使う手釣りを凌駕しています。

そして、今年になって大流行しているのがテンヤタチウオ。
もともと東京湾は和製ジグを使ったカッタクリでタチウオを釣っていましたが、それがテンビン仕掛けの餌釣りとなり、さらに舶来ルアーを使ったタチウオジギングも登場して2釣法が混在する状況でした。
それに大阪湾のテンヤタチウオ釣りが入ってきて、これが大型ばかり釣れるとのことでバンデミックですよ。

これらのムーブメントを、関西インベイジョンと言わずになんと言いましょうか。

***

もちろん、優れた文化が出現すればそれが普及するのはあたりまえのことで、それが関西の釣りでもどこの釣りでも良いのですが、他の海で釣れる手法をそのまま拝借するのよりも、自分らのいる海で育った技術のほうが愛着があるのは否めません。

そして、もっと地元(関東)の釣りにアジャストする動きも必要かと思います。
例えば餌木タコですが、明石でやってるスナップ直結の2本餌木で川崎沖や横浜沖のきつい根をやると、あっという間に根ガカリします。根ガカリでオモリだけでなく2本もの餌木が失われ、それは環境に多大な負荷をかけます。今頃NKK前の海底は、餌木と先糸の墓場となっていることでしょう。古来から捨て糸という便利な仕掛けがあるので、これを使うだけでもぜんぜん違ってくると思います。このようなローカライズ方法は特にベテランツリオヤジは各自で探求していきたいものです。

あと、近年の釣りの特徴は、道具の独自性が高いこととカラーパターンが多いことです。釣具屋にいくと、所せましとタチウオテンヤ、タコ餌木、タイラバヘッドが並んでいます。これらの専用アイテムを揃えないと釣りにならない。ネット上にはあの色がいい、この形状がいいと情報が溢れていて、あれもこれも揃えないと入門者が不安になるのは否めません、道具を売れるのは悪いことではないのですが、道具ありきの釣りばかりになることが行き過ぎると普及の妨げになることに留意しないといけません。

***

話を最初に戻します。ブリティッシュインベイジョンから、ロックは大発展を遂げて70年代を迎えます。70年代は個性的なアーティストがもっとも輩出された時代だったと思います。そして80年代、産業ロックの出現でCDの売り上げは急増、多くのロックは自己表現から商業へと立ち位置を変えていきます。そして21世紀のいま、60年代~70年代に比べて音楽はどうなったでしょうか。

ロックの歴史と沖釣りの歴史を比較してみるのも興味深いと思います。

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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (はちまきの旦那)
2020-09-19 07:29:30
してIiさんもテンヤタチウオ始めるの?
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Unknown (calm)
2020-09-19 08:00:29
実はいまやってます。
一投めからバラシ(^^;
返信する
Unknown (はちまきの旦那)
2020-09-20 07:46:22
それはそれは^^;釣果&感想を楽しみにしてますよ。

ところでIiさんの危惧通り、こんなニュースを見付けました。明石での話ですが、2ヶ月半で1万6千個の餌木回収だって(*_*;
https://news.yahoo.co.jp/articles/e3e75d98eeadd31ce8168f4797b71c7d66a0b412
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はちまきの旦那さんゑ (calm)
2020-09-20 08:25:22
なぬ?明石で海底餌木が問題になってるんだ。

わしはてっきり、明石では根ガカリロストのない場所やってるから、あんなオモリ直結仕掛け使っているのかと思ってましたよ。
タコつぼ入ってる場所やって、大量餌木ロストしてるんだ、、、ダメじゃん^^;

しかし、「返しをなくすなど具体的な解決策を探っている」って、、釣りを知らない人だとこういう事を書くんですね。
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