2024年下期の芥川賞受賞作。
好みの作品(昭和文学)ばかりではなく、時代の先端の作品も読まねばならぬとの思いから、芥川賞受賞作は毎回読むようにしているのですが、本作「東京都同情塔」はここ数年の中で出色の作品だと思います。もちろん、私の好みで言えばですが。
バベルの塔の再現。この書き出しから一気に物語の中に没入できました。
言葉が言葉の役割を持たなくなる危険性を、バベルの塔をメタファにして現代における問題を批評していく書き出しは、読むのを止められなくなり、一気に読み切ってしまいました(前半部は、高輪ゲートウェイの駅名をつけた人に読ませたい)。
生成AI風の文章を交えているのも、現代の問題を巧みにとらえていて、それがわざとらしくなく物語に溶け込んでいるには、新人作家らしからぬ老獪さを感じました。
ザハ・ハディドのスタジアムが完成したという仮定の東京が舞台というストーリー構成から感じる時代批評も、斜陽の日本社会に皮肉のパンチをお見舞いしているように感じます。
最後に自分の立ち姿を客観視して終わるシーンも、とてもかっこいい。
選評の中で平野啓一郎が、「金閣寺の影響が顕著」と書いているのだけど、どこらへんが影響受けているのだろう?心象の建築物の描写シーンあたりなのか、、わたしにはいまひとつその影響が理解できませんでしたが。
受賞者インタビューで、いちばん好きな作家は三島由紀夫と答えていました。
三島好きの作家の作品は(わしにとって)ハズレ無し、なのかもしれない。
受賞のことば。
他の作品も読んでみたくなる作家です。
p.s. 今日は定期健診の日。
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