最近、オモリの落下速度について聞かれることが何回かありました。
近代マルイカ釣りでは、速く落ちるオモリがブーム。いろんな製品も出ています。
前に日本釣具新報にオモリ関連特許について書いた記事があったので、ブログ用にリライトしてみます。
まず、子供でもわかることから^^;、
抵抗が少ない方が早く落ちる
鉛の比重は11.3g/cm^3に対して、タングステンは19.3。相似形であれば、タングステンが小さい分表面積が少ないので速く落ちます。
形状は、立方体よりも球、球よりもナス型の方が速く落ちます。
また、表面がざらざらよりも、つるつるの方が速く落ちます。
では、早く落ちるオモリを作るには、
比重の高い材料で、
水の抵抗を受けにくい形状で、
表面を滑らかにする。
ということになります。
しかし、もうひとつ大事なことがあります。それは、
直進性が高い形状
なのです。
大事なことで表現を代えてもう一度いいます(^^)
早く落ちるためには、コース取りが大事!
つまり、100mハードルより100mスプリントの方がタイムが早いように、
スラロームより直線ダッシュがタイムが早いように、
まっすぐ進むオモリが早く底まで落ちるわけです。
「そんなの当たり前じゃん、だいたいオモリがなんでスラロームするんだよ!?」
と思いますよね?
(川平慈英風に)するんです!スラロームしてるんです。
ここからが本題。
株式会社フジワラの登録特許(登録番号3821439)では、早くオモリが落ちるための形状にたいする特許です。
フジワラはスカリーやワンダーでお馴染みのオモリを開発、販売している会社です。
これらのオモリの特徴は、早く落ちること。
その理由は、オモリが直進性を保って落ちることなんです。
下記のグラフを見てください。これは特許内の説明図です。
横軸が時間軸、縦軸が速度ですが、投入後20秒までは、明らかに上のグラフが高速であることがわかります。
(オモリの形状は、グラフ右上に示してあります)
さて、この理由なのですが、詳しくは3821439の明細を参照していただきたいですが、簡単に言うと、大事なところはコース取り(オモリのブレ具合)。
下のオモリは蛇行が多く、上のオモリは蛇行が少ないのです。
理由を簡単に書きます(簡単にしか書けないんだけど^^;)
オモリが水中を落下するとき、オモリの下部と上部に働く力のモーメントが異なります。
モーメントとは、オモリに対して横向きに働く力と思ってください。
モーメントが異なると、オモリは傾き斜めになります。
斜めになると、今度はまっすぐのときとは違ったモーメントが働き、まっすぐに戻ろうとします。
この繰り返しで、オモリはぶらぶらと蛇行しながら落ちていくわけです。
では、オモリの蛇行を抑えるにはどうすればいいか?
最適なモーメント値(曲がりにくい値)の形状を設計すればいいわけです。
フジワラの特許の請求項は、次のようになっています。
【請求項1】(前略)上記の重心より上部の投影面積の一次モーメントMUと、重心より下部の投影面積の一次モーメントMDの比をk=MU/MDとした場合に、2.3≦k≦5.0を満たす形状にしたことを特徴とする船釣り用オモリ。
上部と下部のモーメント比が上記の値の範囲だと、蛇行は少なく早く落ちるオモリというわけです。
これは実験を繰り返して効果を見極めた値になります。
請求項のようにモーメント比を設定したオモリの実施例が下図になります。
まあ、ほとんどワンダーですね(^^)
一般に市販されている値は、MU/MDの値がかなり小さいはずです。
これを上部のモーメントを大きくして、落下ブレが少ないオモリを販売すると、特許侵害の可能性があるのでご注意ください。
オモリ選びの際には、比重や流線形状や表面処理で選びがちではありますが、「蛇行しにくい形状」というのも早く落ちるためには大きな要素です。
というのが、ここで私が言いたいことです。
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さて、以下は補足です。
上のグラフを見て、すでに勘の良い人は気付いたと思いますが、時間が経てば経つほど、落下速度の差は少なくなっています。
なんででしょう?
ツリオヤジならわかりますね。
オモリを単体で落下させることは、釣りにおいてはあり得ません。
必ず、道糸が付いています。
時間が経てば経つほど、水中に出していく道糸の長さは増えるわけです。
この道糸の抵抗が曲者。
つまり、深くなればなるほど、それだけ長い道糸がくっついているので、その抵抗によりオモリにモーメント差が生じても、ブレがなくなるわけです。
オモリの下部を支点にして、上部へのテンションが掛かっている状態なので、オモリが揺れないということですね。
なので、深場の釣りには、この形状はそれほど効果がないといえます。
実験結果(グラフ)から言えるのは、オモリが15秒から20秒で着底する釣りが、もっともこの形状の効力を発揮するということになります。
そんなことも考えてオモリを選ぶと釣りがもっと楽しくなるかもしれません(^^)
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もうひとつ、これは蛇足。
さらに早くオモリを落とすアイディアがあります。
それは、ギザギザシール!
長野冬季オリンピックで、オランダのスピードスケートチームが、すねにギザギザのシールを貼っていたのを覚えている人はいるでしょうか?
あれです、あのギザギザシールをオモリに張るんです。
これは、無理矢理に乱流を発生することにより、抵抗値を現象させるテクニックです。
ゴルフボールでディンプルにも同じことが言えます。
(詳しく勉強したい方はこちらのPDFを、難解ホークスですが^^;→乱流促進による流体抵抗低減)
適当なギザギザシールやディンプルじゃダメですよ。
ちゃんと実験を繰り返して、最適なギザギザ、あるいは平滑面以上に効果的なギザギザパターンを見つけないといけません。
いいかげんに抵抗増やすとかえって落ちるのが遅くなっちゃいますから。
オモリメーカーさん、乱流を促進させて抵抗を減らして早く底まで落とせるオモリを開発してください。
そんなに高くなければ(←ここ重要)愛用者になります(^^)
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もういっちょ補足。
釣りの中で、オモリの役割は、早く落ちるだけではありません。
早く落ちることは重要な機能ではあるけど、それだけではないのが悩ましいところ。
たとえば、
・落下と反対方向への動作の抵抗が少ないこと
(ツリオヤジ的に表現すれば「しゃくったときの抜けがいい」)
・横方向の力に対して安定していること
(ツリオヤジ的に表現すれば「潮に押されにくい」)
など、いろいろあります。根ガカリしにくいとか、しても外しやすいとかもありますね。
そんなこんなで、本日の結論。
オモリも奥が深い!
長文を読んでくれてありがとうございました(^^)
しかし私の場合錘の落下速度云々よりテマエ祭りをなんとかせねば(汗)
いつも楽しい話、楽しみにしています
これからもお体に気をつけて楽しい話を期待しています。
オモリが落ちる速さなんて、気にしなければそれはそれでどうってことないんですが、気にしたらしたでいろいろなことが気になります^^;
釣りってそういう要素が多いですね。
いつも読んでくれてありがとうございます、励みになります(^^)
全員がオモリの形状を統一すればオマツリしやすさは羽付きでも変わらないと思いますが、船宿で全員にオモリ貸し出しでもしないと統一させるのはなかなか難しいですね。
羽付きだと潮に押されて流されやすいという人もいます。これは実験結果がないのでここでは何とも言えないですが、、、
ちなみに一番上の写真にある、40号のワンダーは15mのLTタチウオに愛用しています、意味ねぇ~^^;;