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ツリオヤジのダイアリシスな日々 ~ 知れぬ事は知れぬまゝに、たやすく知れるのは浅い事 (葉隠 聞書第一0202)

ゲーテはすべてを言った - 鈴木結生 (文藝春秋2025年3月号)

2025-02-21 05:30:51 | 読書メモ

2024年下期の芥川賞受賞作2作め。

レストランのドリンクバーに置いてあったティーバッグに書かれたゲーテの言葉、この言葉の出典を探す主人公の統一。次々と飛び出す箴言や古典作家の名、最初はペダントリー小説か?と思いつつ読み進めると、現代的なテーマあり、パロディあり、と小説の世界に没入してしまった、面白い。

23歳の作者の知識の背景については、とてつもない才能を感じます。いったいどのくらいの本をどのくらいの時間をかけて読んだのだろう?

受賞者インタビューでは、幼年期の経験が書かれていましたが、小学1年生で自分の絵本を作ってもらい、本作りの喜びを覚えたとか、小2で洗礼を受け毎日聖書を読んでいたとか、小学生のときにダンテの『神曲』を読み終えたとか、早熟の極みのような少年期を送ったようです。郡山に住み10歳で東日本大震災を経験していることも文学に影響はあったのでしょうか。

本作の主人公の統一は、わしらの世代よりもひとまわり下くらいのおっさんなんですが、そのおっさん心理も見事に描かれているように思えます。ゲーテにまつわる衒学のみならず、さまざまな分野からの知識が飛び出てくるのが実に面白い。わたしがハマったのは、『マカロニほうれん荘』が出てきたところです。23歳の若者がいつどこでマカロニほうれん荘と接点があったのか、きんどーさんもびっくり。

本作『ゲーテはすべてを言った』は2作めだそうです。1作めはトルストイを題材にした『人にはどれほどの本がいるか』で、この2作と自作を合わせての三部作になっているとのことです。自作はディケンズが題材だそうな。これは、1作目も自作もぜひ読んでみたいと思わせる作家です。三作を文庫化してほしい。

本作を読んで、「いつか『ファウスト』を読んでみたい」と思いました。文中に登場するキャッチ、「ファスト教養の時代にファウストの教養を!」が響いた。
静かなる文体ですが、人に影響を及ぼすパワーは十分に秘めている、力強い作品だと思います。

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p.s. 体重が増えてしまい、2400引いて残りなし。


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