平野啓一郎の「ある男」を読み終えました。
過去が他人と入れ替わっている男を追う弁護士が主人公です。事故で死んだ夫が別人だったということから話は意外な展開に進み、そこからさまざまな人間関係が露わになり、最後まで緊張感ある展開が続きます。
過去を捨てて新たに生きる人の葛藤と希望、その人へ愛情を持つ人達、の心理が綿密に描かれているのは、平野作品らしいという印象です。
構成が複雑なので、途中「あれ?どうなってるの」と、読む手が何度か止められ、振り返り、読み直して、確認しながら読み進めました。
殺人犯の息子が、受ける差別から過去を捨てる行動は、原罪について考えさせられ、三浦綾子の「氷点」を思い出します。
こちら内容紹介。
作品の中で、芥川龍之介の「浅草公園」、トルストイの「アンナ・カレーニナ」、オウィデウスの「変身物語」に触れられるシーンがあります。浅草公園は中断して読みましたが、悠人(里枝の子)の心情を間接的に表すキーとなる仕掛けでした。これらの小説を読んで本作を読むとより味わい深くなるのかもしれません。
帯には今年映画化の情報。
すでに松竹の公式サイトも立ち上がっています。 https://movies.shochiku.co.jp/a-man/
公開されたら観にいこう。
書誌情報。
初出は2018年。
次に平野作品を読むのは、最新作「本心」の予定です。
p.s. なぜか無性にサンドイッチが食べたくなってコメダに行った、塩分高し。
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