前回は、済陽高穂先生の「今あるガンが消えていく食事」より、「抗ガン剤によって疲れ果てる骨髄」のところを引用して終わったのですけれども、今回はその続き(?)として、またまた立花隆先生の「がん 生と死の謎に挑む」より文章を引用させていただきたいと思いますm(_ _)m
>>肺ガンや消化器ガンになると、生命維持の根幹である呼吸作用や栄養吸収作用が脅かされますが、それを救おうと抗がん剤を服用すると、もっと恐ろしいことになります。がんは腫瘍ができた局所の作用を脅かすだけですが、抗がん剤の作用は、まず人間の生命の中核といってもいい骨髄を襲います。
骨髄には、造血幹細胞があって人間の血液を造りつづけています。赤血球、白血球、血小板などあらゆる血液成分が骨髄で造られています。赤血球は寿命が百二十日、白血球は種類が沢山あってそれぞれ寿命がちがいますが、一番多い(四割~七割)好中球はわずか二、三人日の寿命です。他の血液成分も寿命が短いので、骨髄の造血機能がストップすると、人間はすぐに生きていけなくなります。人間が生きるということは、血液を休みなく造りつづけることとイコールなのです。
血液は酸素、栄養分など生命維持に必要なあらゆる生命分子を常時運んでいますから、血流は生命の流れそのものといっていいくらい大切なものですが、抗がん剤の最大の副作用は、「骨髄抑制」といって、骨髄の造血機能そのものを障害することにあります。抗がん剤を服用するようになると、たちまち白血球の数がどんどん少くなります。そのため免疫力がガクンと低下してあらゆる感染症にかかりやすくなります。赤血球も減るので貧血になります。血小板が減少するので、皮膚に点状紫斑があらわれたり、鼻の粘膜や歯肉から出血したりするようになります。さらに減少がひどくなると、脳出血、消化器出血すら起ります。
骨髄の造血幹細胞は、赤血球、白血球などの血液成分を造るだけでなく、人間の免疫作用の主たる担い手であるリンパ球(B細胞、T細胞、ナチュラルキラー細胞)も造っています。抗がん剤の障害作用はここにも及ぶので、患者の免疫力は著しく低下します。
ここで見逃せないのが、それらの免疫細胞が最も活躍する場が、体内の粘膜層だということです。そこは細菌、ウイルスなどの外敵がいつでも折あれば体内に侵入してやろうと虎視眈々と狙っている場所ですから、体内からは、いつでも侵入者を撃退すべく一連の免疫細胞が待ちかまえていて、そこは両者の食うか食われるかの大闘争が常時繰り広げられる場になるわけです。その大切な粘膜層が抗がん剤の作用でズタズタボロボロにされれば、当然免疫力が低下します。かくして抗がん剤は、免疫細胞そのものの生成を阻害するのと、免疫細胞の生活と活動の場を奪うのと二重の意味において、人間の免疫力を低下させるわけです。
その結果として、患者はあらゆる病気にかかりやすくなります。それでどうなるかといえば、患者は、がんでは死ななかったが、他の病気で死ぬという結果に終る可能性が相当あるのです。つまり、抗がん剤を服用しつづけた結果の死が、必ずしもがん死統計にのらない形の死になることもあるということです。
それはある意味で、抗がん剤の広義副作用による死といえるでしょうが、そのようなカテゴリー分けがあるわけではありませんから、それは統計上あらわれてこない副作用死です。しかし、知っている範囲の具体的がん死のケースで、遺族が「抗がん剤が効いて、がんのほうは縮小しつつあったのですが、急に肺炎がひどくなって……」などといっているのを聞くと、僕などは「たぶん、医者からそう聞かされているのでしょうが、ほんとのところ、それは抗がん剤の副作用としての免疫力の低下死だったのではないですか」といいたくなるようなケースだということです。
その抗がん剤にほんとのところ延命効果があったのか、それとも短縮効果しかなかったのか。同一の患者について、その薬を「使う」ケースと「使わない」ケースと両方をやって比較するなどということはできませんから、どちらともいえないで終るしかありませんが、似たような症状の患者に対してその薬を使用したケースと使用しなかったケースを比較したデータはいろいろあって、実は延命効果がはっきり出ているケースはさほどありません。
大ざっぱにいえば、延命効果はせいぜい二カ月程度です。そもそも抗がん剤が抗がん剤と名乗ることを許されるためには臨床試験で二カ月程度の延命効果があることが証明されなければならないという規定がありますから、二カ月の延命効果があるのは当然なのですが、それ以上のものにはなかなかなれないということです。
がんの治療は、手術、放射線などの物理的療法を終えると、あとは抗がん剤治療(化学療法)しかなくなります。しかし、抗がん剤にできることはかぎられています。抗がん剤で完治が望めるがんは、きわめてかぎられたものです。小児がん、液性のがん(白血病などの血液がん)は確かに抗がん剤によって治る病気になったということができますし、リンパ腫なども抗がん剤治療によって治ることが期待できます。しかし、その他一般の固形がん(血液がん以外のがん)については、絨毛がん、睾丸腫瘍、肺細胞腫瘍など以外は、完治は望めず、症状緩和、延命効果しかありません。
(『がん 生と死の謎に挑む』立花隆著NHKスペシャル取材班/文藝春秋刊より)
え~と、何かここだけ読むと、「抗がん剤はただ苦しいだけで大した効果ねえんじゃん!」と思われるかも、なんですけど……著者の立花隆先生も本の中で述べておられるように、「じゃあ、抗がん剤は一切やらないほうがいいんですね!?」ということではない……というのが、抗がん剤というものの難しいところなのではないでしょうか(^^;)
実際、手術後は抗がん剤を使い、その後も定期的に病院に通って抗がん剤治療を受け、その後五年が過ぎて検査をしにいった時、お医者さんから「寛解」を宣言され「良かったですね」と言われた……という患者さんもおられると思うので、抗がん剤はそのような毒であるから一切使用しないほうがよい――と言い切るっていうことも出来ないというか
>>抗がん剤の世界は、がんの種類によって、患者の体質によって、そして使用する薬剤によって、ちがいすぎるほどちがう世界ですから、安易な一般論はできません。数カ月前、街で出会った人からいきなり話しかけられ、
「あの番組にすごく共感するところがあったので、自分はいまからがんになっても、抗がん剤だけは決してやるまいと思っています」
と、決然とした顔でいわれて、困ったなと思いました。
そういう受け止め方をされることは、僕の本意ではありません。先に述べたように、がんは一人一人のがんがみんなちがうのです。その時点において、何が最適な療法かは、状況によって変動するものであって、アプリオリな思い込みにもとづいて事前に決められるものではありません。患者の身体のことをいちばんよく知っているのは、身体的データをすべておさえている主治医でしょうから、信頼できる主治医にすでにめぐりあっている人は、その主治医に聞きたいことをとことん質問して、ちゃんとしたデータにもとづく期待する答えが得られたら、そこで自分が決断する以外ないでしょう。
ただ、いろいろ質問する前に、信頼できる関連情報を沢山集めることが必要でしょう。ネットにはものすごく良質の情報とものすごく質が悪い情報が混在しているので、その腑分けが重要だということを忘れないでください。そして、抗がん剤(化学療法)に関しては、後でもふれますが、国立がん研究センター内科レジデント編『がん診療レジデントマニュアル 第5版』(医学書院)の第二章「がん薬物療法の基本概念」が必須の基礎知識です。近藤(誠)さんの『データで見る抗がん剤のやめ方 始め方』(三省堂)は一般的知識を与えてくれるでしょう。最近の本では、岡元るみ子・佐々木常雄編『がん化学療法副作用対策ハンドブック』(羊土社)に簡にして要を得た知識が沢山つまっています。あとは巨大書店に行って、関連書籍書棚をあさってみることです。
(『がん 生と死の謎に挑む』立花隆著NHKスペシャル取材班/文藝春秋刊より)
あの、わたし的な本を読んだ印象としては……がんという病気にも「オーダーメイド治療」というのが必要なくらい、一人一人のがんってちがうっていうことなんだなっていうことでしたつまり、同じ乳がんの方、あるいは子宮がんの方でも、ある方の乳がんの場合は抗がん剤がよく効いたのに、また別の方の乳がんには「まったく」と言っていいほど効かなかった、それは何故なのか……といったことについて、その「何故」の部分ががんについてはまだまだわかっていないことが多い……っていうことなんだなって思いました。
これも結構前に、新聞の記事で読んだんですけど、はっきりした記憶が曖昧で申し訳ないのですが(汗)、がんの中でも、タイプとして珍しいタイプのがんがあって、その方の場合は抗がん剤がまったく効かないタイプの希少がんだということでした。けれども、その方のがんに効くタイプの治験薬があって、その患者さんは大分病状が安定されたそうなんですね。
つまり、「もしあのまま抗がん剤治療だけを続けていたら」無駄に苦しんだだけで、延命効果も期待できなかっただろう……とのことで、こうした、同じ乳がん、あるいは肺がん、大腸がんなど、同じがんでも「その方にどの治療がもっとも効果的なのか」はわかっていないことが多く、一般的にいうがん三大療法である手術・抗がん剤・放射線療法という標準的ながん治療をまるでベルトコンベアーか何かに乗せるみたいにして次々行っていっても……「アレが駄目だったから次はコレ☆」といったようにお医者さんの指示通りにしているうち、患者さんのほうでは体が弱りきり、さらにはそうした医師に対してだんだんに不審の念を抱くようになっていく……という話を、多くの方がよく聞かれたことがあるのではないでしょうか(^^;)
前にもテレビで、「がんではなく、目の前にいる一人の人間を見てください」みたいに患者さんがおっしゃっているのを見ましたが、お医者さんもほんと、つらいだろうなあって思います。「いや、医者としては今はそうとしか言えない」ということがきっとたくさんあるでしょうし……でも、「この人ほんとに医者かしら?」というような、人間味のない人をわたしも見たことあるので、「信頼できる主治医」に巡りあうっていうこと自体が、ほんと難しいことだとも思うんですよね。
ええと、引用文のほうが思った以上に長くなってしまったので、次回は「抗がん剤編(3)」として、再び「今あるガンが消えていく食事」より、済陽高穂先生の文章のほうを引用させていただきたいと思っていますm(_ _)m
それではまた~!!
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