読む日々

テーマばらばらの読書日記

木もれ陽の街で

2010-07-12 | 
諸田玲子「木もれ陽の街で」。

著者初の現代小説 ということで借りてみました。諸田玲子は大好きな作家なので、わくわくドキドキでした。

現代とは言っても、戦後少し経ってからの東京が舞台。しっかりしたいいお家で生まれ育った公子が主人公。幼馴染で親友の祥子のお見合い話あたりから物語は始まりますが、公子の両親や大伯母と半世紀前の恋人との恋愛事情等が語られたりする中、公子は画家の片岡と知り合い、惹かれあっていく様子がリアルに描かれます。

結局、どうしても踏み込んでいけない公子と、公子を自堕落な自分の生活に巻き込めないと(多分)決意した片岡は会わない事を決め、祥子は代議士の婚約者との結婚を捨てて片岡と駆け落ちします。

やりきれないなあ、と途中では思いましたが、公子にとってはよかったのか。
恋にすべてをかけ切れる人と、自分の背負った物を捨て切れずに妥協して生きていく人と、違いはどこにあるのでしょうか。もともとの性格かな。

私は捨てきれない人なので、小説の中の公子の選択にホッとしてる自分と、せめてお話の中位、思い切った人生を見てみたかったって気持ちと半々でした。

満足度85

花まんま

2010-07-09 | 
朱川湊人「花まんま」

直木賞受賞作。昭和30年代頃の大阪が舞台の、異形のモノなんかが出てくる一種のホラーな短編の集まりです。

これがまた・・ものすごーく面白い。

なんというか、昭和の雰囲気を的確に表現してあって、ホラー話も全然不自然じゃなくて、本当におこった事みたい。

とくに表題作の「花まんま」は涙なくしては読めない、いいお話でした。

幼い妹が、突然、21才で刺殺された女性の生まれ変わりだと言いだし、兄と一緒に前世の実家を訪ねるお話。前世の彼女の父親の姿が、親の愛をものすごく伝えてて、号泣しちゃいました。花まんまとは、お花を使って作るおままごとのごはん。それを見て、娘が殺された時に食事をしていた自分が許せず、以来ほぼ絶食して約10年を過ごした父親がハッとする様子が、ただただ涙

それと同時に、現世の兄の思いも泣けます。

満足度95

最後の初恋

2010-07-06 | 
ニコラス・スパークス「最後の初恋」。

泣けました。胸がキュンってしました。親子についても考えさせられました。

夫に浮気され、離婚して傷つき、立ち直れずにいるエイドリアン。親友の経営するB&Bの留守を任されます。その間5日間の予定で宿泊する、外科医のポール。こちらは仕事一筋で家族に愛想を尽かされ、そこにきて術後に患者が死亡してしまい、もう一度人生をやり直すために、うまくいってたことなどない息子が働くエクアドルへ旅立つ決意をします。その前に、亡くなった患者の夫から「大事な話がある」と手紙を貰い、訪ねるためにエイドリアンが留守番をするB&Bへやってきます。

近づく嵐の中、様々な語り合いをするうちに惹かれ合う二人。そこに、お互いの家族の歴史や、患者家族の思い出などがちりばめられ、深みを増していく物語です。

そもそも、この物語は60才になったエイドリアンが、夫を亡くしたショックから母親業を放り投げてしまっている娘に語った物語。

様々な夫婦、親子の形が描かれてします。

たった5日間で、本当の恋なんて、と思って読み始めましたが、すんなり感情移入できました。2人の恋はハッピーエンドにはならなかったげど、でも羨ましいな。ポールがエクアドルへ向かわなければハッピーエンドなんだけど、でも、そうなってしまったら底の浅い、つまらない話になってしまうし。ポールと息子の仲については劇的にハッピーエンドだったから、よかったのかな。

人は親になったら、その立場がやはり一番重要ですよね。それをお互い認識できて実践できる相手と一緒にいられたら、そしてその相手を愛せたら、その人の人生はすごく幸せだと思います。



満足度100

わすれないよ 波の音

2010-07-02 | 
下鳥潤子「わすれないよ 波の音」を読みました。

虐待の連鎖を断ち切るお話。主人公は26才の波子。4才の娘と生後10ケ月の息子と、家を空けてばかりでろくに働かない夫と狭いアパートに暮らしていますが、娘を可愛がれずに虐待しています。その遠因は、兄ばかりを可愛がった、冷たい母にありました

父と母は離婚し、医師の母は女でひとつで二人の子を育てますが、その過程で波子に冷たくあたります。成長した波子は、優しくしてくれたというだけで夫と結婚しますが、夫自体もあまり家庭環境には恵まれなかったよう。

そして、母の癌罹患を機にストーリーが動き出し、娘の通う幼稚園の先生やら、とってもよくできた小児科医の兄やら、兄の友人の精神科医やら、揚句、生き別れになっていた人格者の父親やらに支えられ、立ち直るお話。

虐待に至る過程や心情は生々しく、とっても泣けて理解もできましたし、乗り越える過程も心の動きには矛盾はないし、「よかったね」と涙しました・・・が、環境が、できすぎでしょう。それに、状況説明が多くて、セリフも現実にはありえないほど説明くさい。
書き方としては素人っぽいな、という印象でした。(えらそうにスミマセン)

最後作者の略歴みたら、保母さんをされてた方で、この本の前は自費出版だけだったようです。そしてこの作品は「文の京文芸賞・最優秀賞受賞作」だそう。なるほど。

そして途中で子供の事を「愛しげな子」って書いてあって、「新潟弁みたいだわ。」と思ってたら、新潟県出身の作家さんでした。祖母がよく「あそこの子はいとーしげらて」とか言ってたなあ。舞台も「日本海側の北の地方」ってあったから、新潟なんだわ、きっと。と思った嬉しくなりました。

内容はとにかくイケます。

満足度80