だんじりの試験曳も終わった。
幸い気温も低く、
日差しもそれほどではなかったので
快適に終わることができた。
だいたい、祭り装束というのは
いつも同じ季節なので
古来よりほとんど変わることなく
同じであるのだが
見た目は同じでも
結構ハイテク技術などが
随所にちりばめられている。
では、祭り装束とは
どうなっているのか。
順を追って説明しよう。
祭り装束で、唯一決められていないのが
下着のパンツである。
ただし、白でないと汗をかいて
透けたときに格好が悪いからと
されていたのだが
最近の若者ファッションでは
逆に派手派手が透けて見えるのも
よしとiうことになっている。
そのパンツの上にはくのが
パッチといわれたり
バッチといわれたりする
いわゆるズボンにあたるものである。
これも昔は
お尻の部分が合わせになっていて
しゃがんでも、大きく足を広げても
ストレスなく動けるように
機能的になっていたのだが
最近は、よく伸びる生地で作られ
お尻が合わせになっていなくても
動きやすいものができているので
まったくスポーツジャージのように
軽快に動けるものとなっている。
doironも愛用している。
上に着るのは、これも昔は
気温差を調整するために
前面の半分くらいまでボタンのついた
ダボシャツ風のものであった。
これじゃあまりおしゃれとはいえない。
最近は半袖Tシャツ、長袖Tシャツを
各町がそれぞれデザインをして
作っているようだ。
パソコンでデザインなんかも
以前より手軽にできるようになったからかもしれない。
それを気候に合わせて
着替えている。
そしてさらにその上に着るのが
祭り装束のメインである
「法被(ハッピ)」
わが町のデザインは
町名の一文字と
町内にある神社にまつわる神様が
使用していたという武器
「十種の神宝(とくさのかんだから)」
のひとつ、手裏剣をモチーフにしたものだ。
それがハッピの背面と前面のすそおよび
肩口に配されてある。
今のだんじりの新調にあわせて
みんなで決めたデザインだ。
形は昔からのものと同じであるが
これも随所に
ハイテクというか
工夫が凝らされている。
ひとつがポケットである。
あまり重いものは
走ったりするときにがさがさ揺れるので
入れられないが、
お金(お札)やコース時間割なんかを
入れることができる。
蒸れないような工夫
色落ちしないような加工もばっちりで
見た目は昔ながらのハッピなのに
格段に機能的になっている。
で、携帯なんかの持ち物は
というと、だいたい
腹巻の中に入れられる。
この腹巻、多分昔からこれはそうなんだろうけど
腰をかばうようにうまくできていて
いわゆるコルセットの役割を持っている。
その腹巻にも大きなポケットがついており
携帯なんかはもちろん
警備と本隊をつなぐ
無線機なんかも収納することもできる。
昔はさらしを巻いただけだったんだろうが
今はそれも便利になっている。
足元はやはり地下足袋である。
こはぜをとめて履くと
後ろから踏まれようが
だんじりに引きずられようが
脱げることはまずない。
まったくもって昔の人の知恵は
たいしたものである。
この地下足袋が一番ハイテク化しているかもしれない。
一日中走ったり歩いたりするから
体重がもろにかかる部分であるので
それによる疲労を軽減するために
衝撃吸収剤がかかとに仕込まれてあったり
ナイキばりにエアークッションが
施されていたりする。
すごいもんですねえ。
そんなハイテクの波は
だんじりに携わる人たちの
祭り装束だけではなく
だんじり本体にも
目に見えないハイテクが
ちりばめられているのである。
足回りには、精度が高く、特殊なめっきが
施された芯棒が用いられていたり
高性能ベアリングはもちろん
ワッシャーには、新幹線の車輪周りでも
用いられている特殊素材のモスターが
使われていたりする。
最近は夜間曳行じの提灯の灯りに
LEDを用いることで長寿命化と同時に
乗せるバッテリーを減らせられることで
だんじりの省スペース化、軽量化も
実現している。
見た目は、欅(ケヤキ)の塊の
いかついだんじりではあるが
中身はちゃっかりハイテク化が
図られているのである。
時代とともに少しずつ変わってきた祭り。
でも、曳いている人間の
心意気や結束は
どこぞの誰かが言ったような
どじょうのような泥臭さ、人間臭さで、
昔ながらのまんまのつながりで
綿々と続いているというのが
最近の祭りをみながら
しみじみ思うことなのだ。
祭り本番もいい天気でありますように