トランプ大統領、中国製品に対し、高い関税を掛け、それに対応して中国も関税を課すといった具合で、米中の貿易摩擦は予断を許さない状況に至っている。この余波は当然日本にも及ぶこと、果たして安倍内閣はどこまで米国に追従していくつもりなのだろうか?気になるところだ。
そもそも企業は、コスト削減に向けて、労働力の安い地域に工場を作ることで、国際競争力を高めてきた。その影響で、アメリカの労働者は、賃金が高く、コスト削減が難しいため、工場は閉鎖され、労働者の失業率は高くなってきている。また、アメリカ国内の工場でも、安い移民労働者が重用され、アメリカ人労働者は安い賃金の移民労働者と比較され、賃金は下がる傾向にある。こうしたアメリカの労働者の不満の蓄積がトランプ大統領を産んだとも言える。
こうしたことはアメリカに限らない。ヨーロッパでも同様の傾向があり、また、日本でも外国人労働者の比率がどんどん増加し、日本の労働者の賃金低下につながっていると言える。だから、これはことアメリカに限定されるような問題ではない。よくよく考えて対策を講じていく必要がありそうだ。
このままいくと、働いても働いても、生活保護支給レベルの収入しか得られないという事態が生じ、労働者の勤労意欲はどんどん減退してしまうことにもなりかねない。生活保護レベルとまではいかないまでも、年金生活者のレベルまでの収入を得ることが難しいという現象は今でも起こっている。企業が、人材をいかに、効率的に、有効に活用するか、また、教育分野では、それに見合った人材をどう育成していくかが大きなカギとなっているように思う。
ここでもう一つ新たな問題が生じてきている。それは、人に代わって物事を処理する機械の登場だ。事務分野では、コンピュータが人間にとって代わってきているし、工場でも産業用ロボットの登場し、大きな工場でも働く人の数はどんどん減ってきている。例えば、銀行員の数はATMの登場によって、窓口業務はATMにほとんど取って代わられ、昭和の頃には花形だった女子行員は、激減している。工場でも最新式の工場では人影は少なく、機械を監視したり、整備したりするスペシャリストがいるくらいで、生産ラインには人がいない。当然、そこに働いていた人、これまでだったら当然働いていただろう人たちは、別の職場に流れて行っている。その別の職場で働いていた人たちは弾き飛ばされ、居場所を失って、失業状態に陥っていく。こうして人件費が削減され、利益率はアップし、そこで得られる富は、経営者や一部のエリートたちによって享受される。その結果として、年々、貧富の格差は拡大している。
問題は、比較的単純作業に従事してきた人たち、これからも単純作業でしか働けないような人たちをどのようにレベルアップしていくか、その人たちを効率的に雇用し、付加価値の高いものを作り出していくかということなのだろう。