私は涙を抑えながら、今度はしとりんの周りにいる天使さんたちに気がつきました。
それはとても可愛くて小さなベビーエンジェルたちでした。
5,6人のベビーエンジェルたちがニコニコ笑いながら寄り添っています。
「お腹にいる子は、あなたたちのお友だちなんだね!」
「そうだよ。ボクたちの友だちだよ!光の国からやって来たんだよ」
そんな会話をしました。
そして、運転席に目を向けると、
運転手さんと助手席の隊員さんとの間に、もう1人の天使さんが座っていました。
何やらこの天使さんも運転手さんみたいです。
ハンドルは握っていないけど、時折指差し確認しています。
その度に渋滞の道が開かれ、止まることなく走り続けました。
また外にいる天使さんたちに指示を送っています。
後姿しか見えないけれど あたたかな“愛” が伝わってきました。
「大丈夫だよ。この救急車は私たちが守っているから」
驚いたのは対向車の上にも天使さんたちがいて、
「どうぞ、お先に」と手をふってくれていました。
すべての車の上に天使さんたちがいるのです。
私はただただ涙を抑えるので必死でした。
しとりんはずっと目を閉じて安らかな表情でおりました。
すべてをゆだねきった表情でした。
一瞬、空を飛んでいるような錯覚に陥りました。
それほど救急車はゆれることなく滑らかに走っていました。
「まもなくN大学病院に到着します」
救急隊員の方が知らせてくれました。
前方見ると大学病院の建物が見えました。
最初、「40分ほどかかります」と救急隊員の人はおっしゃっていましたが、
その半分の20分ほどで到着しました。
救急入口玄関前に停車すると、
護衛してくれていた大勢の天使さんたちが、一斉に空に昇って行かれました。
任務を終えたということなのでしょう。
私はちょっとだけ空を見上げ、
「ありがとうございました」
と感謝の言葉を送り、小さく手をふりました。
(つづく)