元・還暦社労士の「ぼちぼち日記」

還暦をずっと前に迎えた(元)社労士の新たな挑戦!ボチボチとせこせこせず確実に、人生の価値を見出そうとするものです。

休日の一日の始まりは午前0時!<前回の就業規則(その続き・その2)編>

2011-07-29 06:20:33 | 社会保険労務士
 休日の場合の一日は、0時~24時!<これは就業規則でも変えられません>

 1週間のうち1日を休日として与える という場合の1週間のスタートは、原則的には日曜日であるが、就業規則で月曜日に変えられるというのは、前回お話ししたとおりです。クリニックでは、日曜日を休日にしなくて、水曜日に持ってきているところも見かけますが、木曜日から週のスタートもできることになります。

 では、この休日の場合の「一日」というのは、どうでしょうか。この休日の一日の概念は、午前0時から午後12時までの暦日をいい、どこからでも24時間継続した時間というわけではなく、午後0時から継続した24時間ということで徹底しております。スタートは会社の法である就業規則で持っても変えることはできません。週の始まりのように、就業規則で定めて決めるわけにはいかないのです。民法上では、期間計算において、一日という場合は、午前0時から始まります。午前0時から始まらない時は、翌日からのまる一日を期間の始めとしてカウントしますが、これと軌を一にするものと思われます。(以下、単なる会社の休日ではないということで、この休日のことを正確をきすために「法定休日」といいます。)

 そこで、法定休日の前日から、働いていて深夜の12時を過ぎて30分だけ働いた、すなわち0時30分まで働いた場合には、その30分間はその日の法定「休日」に働いたことになります。(平6.5.31基発331号) この深夜12時を過ぎた時点から、一般的な時間外割増賃金の2割5分増ではなく、「休日労働」の3割5分増となります。ここは、厳格にとらえられています。

 どこかの、時間外パソコンソフトで「前日」に続く時間外労働として、その日の深夜12時以降に働いたその30分の「超過勤務」を入力した後で、その日の法定「休日」を別の日に振り替えようとしたところ、入力できなかったと聞いたことが、あるような、ないようなことがありましたが、それはパソコンソフトが間違っているのではありません。ソフト入力方法は分かりせん(パソコンにうとい私としては、ごまかします。)が、少なくとも深夜12時を過ぎれば、法定「休日」に入っているとの認識がなければなりませんので、その法定「休日」を30分だけ労働しています。ゆえに、その一部を労働した法定「休日」を別の日に振り返ることはできません。働かないのが法定「休日」ですから、すでに働いてしまっている法定の「休日」は、振替できないのです。深夜12時を過ぎれば、法定の「休日労働」の認識がなければなりません。単なる前日から続く時間外ではないのです。

 
 また、その休日振替の例ですが、休日を振替える場合は、あらかじめ、いつの勤務日といつの休日を振り替えるということをその従業員に言っておかなければ、なりませんよね。前もって、従業員もわかっていなければ、その日を午前0時から始まる「休日」として、まるまる使えませんから、当たり前のことでしょう。この「あらかじめ」「前もって」は少なくとも「前日以前に予告して振り返るべきもの」とされております。

 前日ですから、少なくとも深夜12時前には、言っておかなければならないことになります。緊急の用件が出来たので、法定休日の当日の朝になって、振替をするから、出勤してくれと言っても、振替は認められません。振替の要件を満たしていないので、その日は、法定の休日労働として、3割5分増の給与を払わねばなりません。法定の休日労働として処理すれば、問題はありません。あくまでも振替としては認められません。

 しかし、明日が法定休日でその前日の午後10時ごろ、職場の長から電話がかかってきて、振り返るからといわれても、前もって言ったことになるのでしょうか。まだ準備も何もできていなくて働かざるを得ません。そこで、少なくとも、前日の勤務終了時までは周知すべきものと考えられています。そうでなければ、労働者保護に欠けます。(昭27.7.31基収3786号、昭55.3.28横浜地裁三菱重工横浜造船所事件9)

 このように、法定の休日の一日の考え方には、まず厳密に午前0時からスタートし、そのうえで、常識的に、労働者保護の観点からの枠をはめて考えなければなりませんので、注意しておきましょう。


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

1週間の始まりは日曜日!<前回の就業規則(その続き)編>

2011-07-27 06:43:49 | 社会保険労務士
1週間の始まりは月曜日に就業規則で変えられます!

 前回の「法定休日を就業規則に定める場合には!!」では、特におかしい誤字脱字がありまして失礼しました。文章の前後関係からその部分は理解していただけるとは思いますが、そのまま取ったらおかしいところもありました。修正しておきましたので、改めてお詫びを申し上げます。

 その前回分で、説明を飛ばしてしまったのに、一週間のカウントの始まりを日曜日からするというのがあります。私だけかも知れませんが、勤務していた頃は、週の始まりは月曜日と認識していました。日曜日に休む者にとって、月曜日から仕事が始まるというのは、常識的な見解だと思いますがどうでしょうか。

 ところが、週の始まりは日曜日です。(注) そういえば、カレンダーを見ていただければ分かりますが、日曜日から始まっていますね。ということは、日本語吹き替えの外国映画を見ると、「楽しい週末を」と言っていますが、「楽しい週末と週始めを」と云わなければならないところでしょうね。

 (注)最後の紹介した労働省通知では、日曜日から1週間が始まるとしています。しかし、欧米の制度慣行は日本ではそれほど強い社会慣習となっていなくて、法上も何も定めていないことからすると、1週間は単に「継続した1週間」の意味だと解釈し、週の初めは、就業規則で明記されていなければ、その事業場の慣行や契約した際の「意思」がどうだったのかということ(東大「注釈労働基準法下」)から解釈するとし、労働省通知とは、安西愈氏は別の立場をとっておられます。(労働時間・休日・休暇の法律実務・全訂7版P426)
私としては、こちらの方がしっくりいきますね。

 ですから、週休2日の場合の土日は、土曜日を前の週の土曜日すれば、日曜日は次の週の日曜日となります。なにをいっているんだということになりそうですが、法定休日の1週間のうち1日与える、という1週間の始まりは、日曜日から始めるので、日曜日をはじめとする1週間の間に、1日の休日(ここでは法定の休日のことです。)があればいいことになります。

 のようになります。8/1が日曜から始まるとしますと、週休2日の場合は
8/1日休み 8/2月勤 8/ 3火勤 8/ 4水勤 8/ 5木勤 8/ 6金勤 8/ 7土休み ~1週目
8/8日休み 8/9月勤 8/10火勤 8/11水勤 8/12木勤 8/13金勤 8/14土休み ~2週目

 1週間に1回の法定の休日を設けるためには、次のとおりになります。一般常識的なものとしては、
8/1日 8/2月勤 8/ 3火勤 8/ 4水勤 8/ 5木勤 8/ 6金勤 8/ 7土休み ~1週目
8/8日 8/9月勤 8/10火勤 8/11水勤 8/12木勤 8/13金勤 8/14土休み ~2週目

 のようなものも可能です。
8/1日  8/2月勤  8/3火勤 8/ 4水勤 8/ 5木勤 8/6 金勤 8/ 7土休み
8/8日休み 8/9月勤 8/10火勤 8/11水勤 8/12木勤 8/13金勤 8/14土

 1週目の日曜に働き、2週目の終わりの土曜日に働き、8・7と8日の週休連続は変わらないことになります。次も可能です。
8/1日休み 8/2月勤 8/ 3火勤 8/ 4水勤 8/ 5木勤 8/ 6金勤 8/ 7土 ~1週目
8/8日 8/9月勤 8/10火勤 8/11水勤 8/12木勤 8/13金勤 8/14土休み ~2週目
ということで、極端な例になりますが、12日間勤続勤務も可能になります。(あくまでも、前回の議論のように、例えば日曜日を法定休日と指定しなかった場合です。)

 これは、土日で土曜日は前の土曜日で、日曜日は次の週の最初の日を分断されてしまうので、こういった奇妙なことが起こってしまうのですので、使用者も労働者もわかりやすいようにするためには、月曜日から週のカウントするようにすれば、めでたし、めでたしとなると思われます。
8/2月勤 8/ 3火勤 8/ 4水勤 8/ 5木勤 8/ 6金勤 8/ 7土休み 8/ 8日休み ~1週目
8/9月勤 8/10火勤 8/11水勤 8/12木勤 8/13勤勤 8/14土休み 8/15日休み ~2週目

 そこで、こうすると、最後の12日連続勤務の例は、次のように1週目でアウトになっています。
                                          8/ 1日休み ~その前の週 
8/2月勤 8/ 3火勤 8/ 4水勤 8/ 5木勤 8/ 6金勤 8/ 7土勤  8/ 9日勤  ~1週目
8/9月勤 8/10火勤 8/11水勤 8/12木勤 8/13金勤 8/14土休み         ~2週目

 だまっていれば、先ほどの私の常識ではなく、一般的にいわれている常識(この場合、少なくとも労働省通知が一般常識とします。)が法の常識になりますので、週は日曜日からスタートすることになるわけですが、会社の法である就業規則に、週の初めは月曜日である旨の記述があれば、月曜日から週はカウントします。いや、場合によっては、12日間働かせなければならないときもあるという使用者にとっては、そのままでいいことになりますが、労使双方にどうもわかりにくい、どうもカウントの仕方が面倒だ・キチットしたいという方は、就業規則に週の始まりを月曜日からスタートする旨の記載すればいかがでしょうか。最後に労働省の通知を紹介しておきます。

 →1週間とは、「就業規則において、別段の定めがない以上は、日曜日から土曜日までの暦週をいうものと解される。」(昭63.1.1基発1号)とされています。 
 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

法定の休日を就業規則に定める場合は!!

2011-07-25 08:13:41 | 社会保険労務士
 就業規則~<法定休日の規定>について

 
 週休2日の場合は、日曜日に労働したとしても、土曜日に休ませていれば、1週間のうち1回は休ませることになるため、労働基準法(以下「労基法」と略します。)はクリアーすることになります。一週間に一日与える休日を労基法で定められた休日ですので、一般に「法定休日」といっています。それ以外の会社でさらに与える休日のことを「法定外休日」と呼ぶこととします。

 
 法定休日は、この日という「特定の日」を就業規則で決めていなければならないのでしょうか。厚生労働省が出した通知(以下「通達」略します)では、特定することが法の趣旨に沿うので、就業規則で具体的に一定の日を法定休日と定める方法を指導するようにされています。(昭23.5.5基発682号、昭63.3.14基発150号)、

 
 さらに、平成22年改正労基法では、一か月の時間外労働が60時間を超えた場合に5割増の割増賃金を要求していますが、60時間超の時間外労働には、法定の休日労働は、含めませんから、法定の休日労働を特定しておかないと、どれが法定の休日労働で、どれがそれ以外の、時間外労働(法定休日に働かせていない以上は、法定外の休日の場合は、この5割増の計算に当たっては、時間外労働の取り扱いとなります。)か、一般的には分かりづらいことになり、いつから月の時間外が60時間を超えたのかわからないことになってしまいます。そこで、法定休日を特定した方が、この5割増の休日の賃金の計算には、ベターということになります。


 ところで、法定休日に労働させた場合は、割増賃金は「休日労働」として3割5分増、法定外休日の労働は、「時間外労働」としての2割5分増となりますので、例えば、週休2日の場合、日曜を「法定の休日」に決めれば、日曜日の労働は3割5分増となってしまいます。しかし、特定しなければ、日曜日に労働させたとしても、土曜日に休日を与えるとすれば、その土曜日が1週間に一回の休日となり、この土曜日が「法定の休日」となりますので、結果として日曜日の労働は、法定の休日労働ではなく、時間外労働ですから、2割5分で済むというわけです。

 しかし、通達指導によって、就業規則等による法定休日の特定が望ましいのではありませんかという声がやはり聞こえてきます。一方で次のような通達もあり、実質上は、あらかじめ何曜日を法定休日とするような、特定することまでは要求しておりません。
 →平成11年の通達では、「何回か休ませた場合に最後の1回について3割5分以上の率で計算した割増賃金を就業規則等で定めることは、法定休日を明確にしていると認められる。」(平成11.3.31基発168号)

 ということは、週休2日のうち、日曜日に働いた場合、土曜日が法定休日となり、その残った土曜日もやむなく働かざるを得なかった場合は、その土曜日が法定休日となり、3割5分増しの賃金が支払われることになりますが、その3割5分増の賃金を払うことを、就業規則で規定した場合は、土曜日を法定休日と定めたこととなるとしています。勘違いしている方もいるかもしれませんが、週は日曜日からスタートしますので、週休2日を考えるときは、日曜日が最初の休日で、次に来る土曜日が最後の休日になります。ということで、この場合、この通達によって、土曜日を法定休日として特定したことになりそうです。(「労働時間完全実務ハンドブック」森・岩崎共著に同趣旨、ただし筆者はあくまでも、「特定」すべきと主張)

 そこで、もう一度労基法の規定を見てみましょう。「使用者は、労働者に対して、毎週1回の休日を与えなければならない。この規定は、4週間を通じ4日以上の休日を与える使用者には適用しない。」(労基法35条)と規定されています。労基法は、週休2日の土日が休みの場合は、法定休日を日曜日とするような特定は要求していないところです。(安西愈著、採用から退職までの法律知識、中央経済社)、ただ1週間に1休日を与えることを要求しているだけであって、特定することまでは、法では要求していないところです。そこで、法では休日特定までは要求していないが、ちゃんと休日が定まっていないと労働者の保護にならないという観点から、通達で法定の休日を特定するように指導していることになります。


 60時間超の時間外労働の特定の話はどうなるのかということについては、中小企業では、もともとこの規定は、まだ猶予になっているので適用になっていませんので、いままでの言い方からすると、実質的には、「日曜日を法定の休日とする」というように、特定しなくても差し支えないことになります。ただ、2割5分か3割5分かの割増賃金の判別がすぐにはできないことになるわけですが、何度も言いますが、土日のうち、日曜に労働し土曜日に労働しなかった場合は、残った土曜日の休日が法定休日になりますので、日曜日は法定休日ではならないことになり、日曜日の賃金は2割5分増でいいことになります。反対に土曜日に労働し日曜日に休んだ場合は、日曜日が法定休日になりますのいで、働いた土曜日は2割5分でいいことになります。このように、休日労働した者について、一人ひとり当たっていかなければならないとはいえ、2割5分か3割5分かの区別はできなくはないところで、少なくとも10~20人程度の職場の場合は、時間外計算についてもそう支障にはならないでしょう。使用者の立場に立ち、費用の面からいえば、割増賃金の人件費は、1割減になります。

 法では法定休日の特定までは、要求していないことは先ほど確認したところですが、通達に従い、法定休日を前もって何曜日と決めなくても、法定と法定外を区別する就業規則はどう定めたらいいのでしょうか。
 ①毎週の休日のうち最後の一回の休日を法定休日とする(就業規則モデル条文 中山弁護士著 日本経団連出版p186) 又は
 ②毎週の休日のうち休日労働のない最後の日又はすべての休日を労働した場合の、最後の労働した日を法定休日とする。(同上)
と規定すればよいこととになります。


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

なでしこジャパンの組織論・経営論的研究を!!

2011-07-22 06:29:25 | 社会保険労務士
なでしこジャパンの強さは、どこにあるのか。

 なでしこジャパンが世界一になりました。日本中が沸きあがり、復興の一助になればいいと思います。選手それぞれが技術力・精神力の面で強いということは、当然のことでしょうが、組織論というか、経営論という点で、その監督の佐々木則夫氏の指導方法に、私非常に興味があります。
 

 野球の野村克也監督「ノムさん」の指導方法は、彼は著書をいくつも出し、また傍目の野村監督を見てきた人たちの著者もたくさんありました。彼の指導方法を経営に生かそうということもなされてきました。

 今度は、佐々木則夫監督「ノリさん」の研究が行われることを願います。単なる、ブームではなく、あれだけ短期間に世界の頂点にあがった監督の指導には、なんらか教えられることがあると思うからです。

 テレビの中では、先輩の指導者が出て(すみません。にわかサポーターなので、あまり人の名前をしらないもので)話しておられましたが、人の長所を活かすのがうまいということと、コミュニケーションを大事にする監督だということをおっしゃっていました。まさに、ドラッカーが強調する「つよみ」と「コミュニケーション」という点で、経営に通じるものがあると考えます。

 
 また、沢穂希選手は、信頼できる監督、運を持った監督といっていました。最後の優勝の瞬間、佐々木監督と沢穂希選手が走り寄り、ハグする場面がありましたが、その信頼を象徴する場面だったように感じます。信頼関係は、チーム=組織にとって、なくてはならないものだと思いますが、チームの皆に尋ねたところ、異性というよりは、オヤジ、お父さんみたいな存在だ言っていましたね。女子チームを率いる男性の監督として、野村克也監督「ノムさん」とは、相当違う色合いを持っているのではないかと思います。

 
 運については、まねできるものではありませんが、これも斉藤一人さんのいう「・・・でなくてよかった」という良い方向に考える、のがうまいように感じました。

 
 私が言うまでもなく、彼の指導方法を学ぶことには、今の社会が放ってはおかないと思います。オリンピックのアジア予選が9月から始まると聞きましたので、彼がもう1冊自身で本を出すこと**は無理かもしれませんが、是非ともいろんな面での研究がなされることを望みます。そして、たぶん、今窮地に陥っている日本的経営にも、日本的経営は?その強さは?(反対に何が弱いのか)というのが、再認識されるのではと、ひそかに期待する者です。

 (** ワールドカップ出場する前に、佐々木監督は、「なでしこ力 さあ、一緒に世界一になろう!」(「ムック」発行)という本を出されて、今、大人気とのことです。)




































                       














コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

懲戒は、社会通念上相当であらねばならない。

2011-07-19 05:18:46 | 社会保険労務士
 就業規則~懲戒の事由(その2)
 
 前々回の{就業規則~「懲戒事由」について}では、就業規則において、懲戒処分の種類や程度を記載し、それに沿った処分をしなければならないということを申し上げました。では、就業規則に書いてあればその理由は何であれ懲戒ができるのでしょうか。
 
 19年にできた労働契約法に、次のような条文があります。「当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、権利濫用として無効にする。」とあります。非常に抽象的な表現です。それもそのはずで、裁判の積み重ねで出来上がってきた理論をそのまま、労働契約法が新しくできるときに、その判例をそっくりそのまま持ってきたものだからです。
 
 懲戒については、その有効性を判断する基準が、裁判例の積み重ねで出来ていたのですが、それがこの「客観的に合理的な理由がなく、社会通念上相当であると認められない場合」は、権利濫用で無効であるというわけです。
 
 懲戒権は、前々回お話ししたようにに、企業秩序の維持のため会社に与えられた権限です、懲戒処分の理由がある場合に、懲戒処分を行うか、いかなる処分を行うかは、使用者の自由であります。使用者の裁量に任されているということです。

 そこで、その裁量に、枠をはめたのが、この条文です。権利濫用のこの条文、又は、裁判で積み上げられたこの法理は、その裁量を逸脱した場合に無効になるのです。具体的な事例が出てきた場合に、裁量権を逸脱して、無効になるかを判断する際に、判断基準となるのが、この権利濫用の条文です。多くの事案を当てはめるときに、その判断基準とするためには、逆に言うと、抽象的に書かれているのも仕方がありません。

 それでは、実際懲戒を行うのに、そんな抽象的な条文では判断しようがないではないかという声が聞こえてきそうです。私の頭ではこれ以上の説明ができませんので、お得意の引用で、ご勘弁願います。

 「具体的には、就業規則の規定が妥当であるか(罪に見合った罰になっているか)、懲戒事由にあたることが裏付けをもって確認をされているか、その社員の行為に見合った罰であるか、事前に社員の言い分を聞いたり処分のための社内検討を行うなどの手続きがされているか等の点が厳しく判断されます。」となっています。(「社員を適正に辞めさせる法」労務リスクソリューソンズ著、アニモ出版初版P29、ただし、懲戒解雇の説明で述べられているところですが、懲戒全般にも同様に考慮すべきことであると考えられます。)




コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする