元・還暦社労士の「ぼちぼち日記」

還暦をずっと前に迎えた(元)社労士の新たな挑戦!ボチボチとせこせこせず確実に、人生の価値を見出そうとするものです。

朝の掃除は女子社員のみ、社長・上司から命令されたわけではないけれど「慣例化」!!

2017-06-26 04:02:39 | 社会保険労務士
 黙示の指揮命令によって朝の掃除も(時間外労働)!!女子従業員のみの掃除も男女雇用労働法に抵触か<従業員の声を聞く社長・上司>

 昔から営業している会社では、あまり考えなくて、なんということなく、よくあるケースとして、次のような例が挙げられよう。

 従業員50人ちょっとの会社、そこでは女子社員2人が始業時間の30分前に出社して、朝の掃除をしていた。ごみ箱のごみ捨て、机の雑巾がけ、床のはき掃除を済ませた新入社員Aさんと先輩職員Bさんの会話である。
 新入社員Aさん「先輩、いつからこの掃除をすることになったんですか」
 先輩Bさん「自分が会社に入ったころは、すでに行なっていたわね。はじめは一人だったけど、そのうち一人だけでは短い時間で大変だということで、2人でやるようになったのよ。初めは、早く来た人の誰かが始めたらしいけど、今は順番になっているわね。それでも、上司に言われたわけではないわね。」
 新入社員Aさん「他の同期の人も言っていたけど、女子社員ばかりというのも不公平ではないでしょうか。確かに、残業した人はなかなかそこまでは手が回らないでしょうし、朝いちばんにすぐに仕事にかかれるし、いいことではありますが・・・。女子社員ばかりというのは、男女平等の世の中、おかしいと思います。」 

 この会社、2つの問題を抱えています。一つは、この掃除の時間が労働時間であるであるとすれば、正規の時間は、始業時間から終業時間まで8時間として、この掃除の時間は、時間外労働が発生するということです。労働時間であるかどうかは、上司や社長の指揮命令によって、掃除が行われているかどうかに尽きることになります。初めは、自然発生的に掃除が行われていたということですので指揮命令によってのものではありませんが、いつしか女子社員2人・30分前の掃除といったように慣例化してきています。そこまでくると社長も上司も指揮命令しなくても、掃除を行うことを容認しており、黙示の時間外労働命令と受け取られても仕方がないでしょう。

 では、労働時間であるとすると、女子職員のみに行わせるというのはどうでしょうか。
 男女雇用平等法6条 事業主は、次に掲げる事項について、労働者の性別を理由として、差別的取り扱いをしてはならない
           一 労働者の配置(業務の配分及び権限の付与を含む。)、昇進、昇格及び教育訓練
           二 ・・・・・

 業務の配分について、例えば、男性は営業(外勤)のみ、女性は内勤のみという差別的取扱いをするのも違反ですが、女性は通常業務に加え、会議の庶務、お茶くみ、掃除当番などの雑多な業務というのも禁止の対象です。

 以上、2つの問題を抱えているといわざるを得ません。みんなが気持ちよく仕事ができる環境は、従業員がなんでも言える風通しのよい職場から始まります。。昔から慣例的に行っていることには、社長さんや幹部職員には気が付きにくいこともあるでしょうが、今の法律を持ち出すまでもなく、おかしいところもあるかも知れません。従業員からの聞く態度も必要でしょう。
 
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新規の就業規則作成によって労働条件を変更することは可能か、適用条項はあるのか。<労契法7・10条>

2017-06-17 17:29:27 | 社会保険労務士
 7条は新規労働契約締結時・10条は既就業規則の存在の場合であって直接の規定はないので、10条の類推適用!!

 今まで就業規則を作成してなかった使用者が新たに就業規則を作成する場合において、既にそこで労働者として働いているものに対して、それまで適用されてきた労働条件を不利に変更することができるかという問題がある。ここで、「就業規則を作成してなかった」とは、これには常時使用する労働者が10人未満であって今まで就業規則を作成しなくてもよかったという場合や逆に違反して就業規則を作成していなかった場合や常時使用する労働者が10人未満であっても終業規則を作成しようとする場合がある。

 労働契約法の規定は、7条及び10条において、労働者に対し就業規則の拘束力がある場合について次のように規定している。
 7条 労働者及び使用者が労働契約を締結する場合において、使用者が合理的な労働条件が定められている就業規則を労働者に周知させている場合においては、労働契約の内容は、その就業規則で定める労働条件によるものとする。ただし・・・
 10条 <労働契約の労働条件の内容を不利に変更する場合という前提において> 使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、①労働者の受ける不利益の程度、②労働条件の変更の必要性 ③変更後の就業規則の内容の相当性 ④労働組合等との交渉の状況 ⑤その他の就業規則の変更に係る事情に照らして、合理的なものであるときは労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。ただし・・・

 7条及び10条は、いずれも就業規則の周知と合理的な労働条件であるという要素を満足すればということで、その就業規則(10条にあっては変更後の就業規則)の内容が労働者を拘束するというものである。(ただし、10条の「合理的」とは7条に比べて①②③④⑤の要件があり厳格に規定されている。)
 7条は、労働契約の締結の場合という大前提があるので、既に働いている労働者に対しては、この場合の就業規則は全く適用にならない。10条においては、既にあるところの「就業規則の変更により」労働条件を変更する場合の規定であって、これも新規に就業規則を作成した場合には当てはまらない。すなわち、労働契約法で定められた7条も10条も、就業規則を新規に作成した場合には当てはまらず、就業規則の新規作成の場合の直接の規定はないことになる。

 この疑問に答えるためには、荒木労働法にその経緯が記されているのでそれに沿って述べる。2006年12月27日の厚生労働省労働政策審議会労働条件答申までは、就業規則の新規作成による労働条件変更も10条の就業規則変更と同様にするということが明記されていたが、法案要綱策の際に、最高裁判例は就業規則自体を新規作成した場合の事案ではないということで、立法化の対象から除かれたという。(*逆にいえば、既存の就業規則が存在して、新規の条項を設ける場合については、この10条の規定が適用になる。)

 

 しかし、この判決の元となった秋北バス事件判決は、確かに就業規則の新規作成によってではなく、既存の就業規則に新たに条項を設ける場合についての就業規則の変更に関するものであるが、この判決において一般論としては「就業規則の作成または変更によって」と記して就業規則の作成を含めて、就業規則の周知・合理的変更の法理を判示しているところである。

 そうであれば、もうすこし踏み込んで、就業規則の作成も含んだ規定にして欲しかったものである。

 いずれにしても、就業規則を未作成の使用者が新規就業規則を作成する場合において、それまで適用されてきた労働条件を不利に変更することができるかという問題については、労働契約法10条の類推適用することになろう。(学説はほぼ一致しているとしている。荒木著)
 したがって、新規の就業規則を労働者に周知させ、かつ、その就業規則が①②③④⑤に照らして合理的なものであるときは、労働条件はその就業規則の定めるところとなる。

 なお、就業規則の新規作成は労契法10条の類推適用にはならないという見解をとったとしても、使用者が現状の労働条件をそのまま引き写した上で、次に、この就業規則を不利益変更すれば、10条の就業規則の変更と変わらないことになる(菅野労働法)ので、これを主張する実益は乏しいとしている。(荒木著)


 参考 荒木尚志著 労働法 有斐閣
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直虎は龍雲丸の木材伐採の技術への委託と瀬戸方久の売りさばきルートの組み合わせ⇒お互いの利益を得る!!

2017-06-11 08:55:22 | 社会保険労務士
 豪商「瀬戸方久」は歴史上の人物だが龍雲丸は架空の人物!!

  NHKの大河ドラマ「女城主直虎」に登場する盗人の頭領である「龍雲丸」(配役 柳楽優弥)は、山林の伐採に長(た)けており、またたくまにそこらの山の木材を盗み取る技術はただ者ではない。「自分は泥棒だが、武士こそ大泥棒じゃないか。百姓がやっと作った米をほとんどをかすめ取っていく。」と龍雲丸が直虎に言う。確かに云われればそうだが、戦国の世の中では、土地の奪い合いの中で、領主はその戦いの中で、自分の領地の中での「安堵」を求め、その安堵の代わりに百姓に領地を与えてそこから出る作物の中からもらうというルールが出来上がっていた。この武士のルールもそういった時代背景という武家社会の中の大ルールがあってものである。いいたいのは、それぞれ時代の生み出した大ルールがあるということである。

 この龍雲丸は、材木の盗人の罪で捕えられるが、井伊家では死罪というルール(慣習)があったという。それぞれの領主の下では、こういったルールが出来上がっていたものであろう。今でいえば、会社での就業規則であろう。会社の中のルールであり、それぞれの会社の中のルールとして、それぞれ異なっていても問題はない。ただ、国の労働基準法で決められた最低基準は、就業規則は守らねばならない。これに対し、戦後時代は、全体の国の秩序は整ってなかったので、「盗人は死罪」とは井伊家の中でのルールにとどまっており、これが全体的な国の共通のルールによって規制されるのは、統一後の秀吉・徳川政権を待たねばならないことになる。

 直虎は、からくも井伊家から脱出を計ったこの龍雲丸に商売を持ちかける。彼の伐採の技術を見込んで伐採を行ってもらい(=業務委託を図る)木材を切り出し、配下の「豪商」=瀬戸方久(配役 ムロツヨシ)の木材の売りさばきルートを利用する。すなわち、龍雲丸の伐採技術と売りさばきルートを組み合わせを行うことによって、直虎は、龍雲丸を盗人から正規の表の技術者に仕立て上げた。ここで面白いのは、直虎が龍雲丸に木材の伐採の仕事を業務委託することによって、龍雲丸の盗人を正規のルートに載せたことである。そのことにより、龍雲丸も直虎側も双方に利益を得ることができたのである。今も昔も仕事のやり方・方法は変わらない。

 豪商=瀬戸方久は歴史上の人物であるが、この龍雲丸は、オリジナル脚本を書いた森下佳子の生み出した架空の人物である。ただ、この人物の登場は「直虎」の中でおもしろい展開となっていくが、少なくともこの時代にいただろう人物の代表格であろう。
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賃金請求権は労働契約に求められる⇒不就労時は決めないこと多い⇒民法任意規定が適用<3つの場合の整理>

2017-06-03 17:52:44 | 社会保険労務士
 「ノーワーク・ノーペイの原則」はあくまでも任意の原則、不就労時でも合意すれば賃金請求できる!!

  労働契約は、労務提供(労働者)と賃金支払(使用者)に関して、労働者及び使用者の合意により成立するものであるので、労働者の賃金請求権は、労働提供義務の履行に対する反対給付として具体的に発生する。簡単に云うと、労働者の賃金請求権は、労務提供に対し賃金を支払う旨の当事者の合意契約に求められる。ただし、この労働契約としての合意は、本来の意味での契約のみならず、特に日本では、就業規則(周知と合理的な規則であれば契約の内容は当就業規則の内容となる)や黙示の契約、労働慣行等の広い意味での契約による合意である。

 労働しないとき(=不就労時)に賃金請求権が発生するかについても、この賃金請求権が当事者の合意契約に求められることから、不就労時に賃金を払うか払わないかは、この契約にどういう合意があったかによることになる。
 しかし、普通には、いかなる場合の不就労時についても、この賃金支払をどうするかは、決めていないことが多い。(唯一、よくある例としては、完全月給制の場合でその月に欠勤があっても月の一定の決められた額を支給するというものであろう。)、そこで、具体的な合意契約が確定できないときには、民法の規定に沿って、次に3つの場合に分けて整理できる。合意契約に規定がない場合に適用されるものであり、この民法の規定はいずれも任意規定である。(以下の1~3の整理部分は、両角他著労働法からほとんどそのままの内容。)

 1、労使双方の責めに帰することができない事由によって就労不能となった場合は、労働者は賃金請求権を有しない。(民法536条1項)
   (例)天災地変により就労できなかった場合
 2、使用者の責めに帰すべき事由によって就労不能となった場合は、労働者は賃金請求権を有する。(民法536条2項)
   (例)①使用者の過失により工場が焼失し就労できなかった場合、②使用者が解雇を行ったとして就労拒否したため労働できなかったが、解雇権濫用により無効であり使用者に帰責がある場合
 3、労働者の責めに帰すべき事由により労働義務が履行されなくなった場合は、労務の提供がない以上(民法624条)、賃金請求権は発生しないと解される。(宝運輸事件・最三小昭和63.3.15)
   (例)遅刻、早退、スト参加による不就労

 特に2.3.の場合は、様々な論点を有しているが、特に説明に付け加えておくと以下のとおりである。

 2については、「使用者の責めに帰すべき事由」とあるが、使用者の責めに帰すかどうかが簡単に判断できない場合が多い。労務の提供は「債務の本旨」に従ったものでないと使用者としても受領を拒否できるからである。(民493条) 逆に、「債務の本旨」に従った履行でないと、3の労働者の責めに帰すべき事由になる。例えば、出張を命じられた日にいつもどおりの机上で仕事をする場合である。ただし、この「債務の本旨」とはなんなのかが日本では職務内容を決めていないことから特定できず微妙な判断となる。最高裁は、現在の命じられた業務を今だ十分に出来ない場合であっても、配置される可能性がある業務について労働者の申し出があるときは、「債務の本旨」に従った履行の提供と解するとしている。 

 3は、労働が終わった後でなければ報酬を請求できないという(ただし、期間により定めた報酬=例えば月給制=はその期間後に請求できる。)「賃金後払いの原則」を定めているところである。(民法624条) すなわち、労働がなされた後に初めて賃金請求権が発生するという「ノーワーク・ノーペイの原則」である。「ノーワーク・ノーペイの原則」は破ってはならない絶対的な大原則のように思われがちだが、法律的に突き詰めると、民法624条からきているところであり、先ほども申し上げたように、あくまでも任意規定である。いいかえると「ノーワーク・ノーペイの原則」も強行規定ではないということになり、当事者間の合意があれば、労務提供がなくとも賃金請求権が成立することになる。

 
  <参考> 両角道代・森戸英幸・梶川敦子・水町勇一郎著 労働法 有斐閣 
       荒木尚志著 労働法 有斐閣 
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