裁判所は日当支払うが「日当」扱いなので会社の賃金支払いは2重払いにはならない
裁判員は、刑事裁判が身近に、そして司法の国民の信頼性向上のため、平成21年5月21日から創設された裁判員制度によるもので、成人の国民(*注1)は誰でも選ばれる可能性があるものです。職場の従業員がいつ選ばれても、国民である以上参加協力をするべきものといえます。
労基法上は、どういう取り扱いになっているかというと、「労働者が公の職務を執行するために必要な時間を請求した場合は、拒んではならない」となっており、この「公の職務」の中に裁判員は含まれております。すなわち、裁判員の職務執行の時間については、職場の上司であろうと拒んではならないのです。(労基法7条)
その間の賃金は、どうなるかというと、会社としては会社の仕事はしていないことから、「無給」としてもかまいません。もちろん、有給扱いも会社としてはできることになります。
というのも、裁判員には、日当として、一日1万円以内、裁判員候補者一日8000円以内の額が支給されます。この日当ですが、どういう性質のものかというと、裁判員として職務を遂行することによる損失(例えば保育料、裁判所に行くための諸雑費等)とされており、裁判員等としての労働の対価としては考えていません。したがって、会社がその日の賃金(=有給扱い)を出しても、給料の2重取りには当たらないとされているからです。
さて、会社の仕事の関係でいうと、原則として、仕事が忙しいという理由だけでは、裁判員は辞退出来ないことになっております。(*注2)裁判員法では、辞退は「その従事する事業における重要な用務」に限られ、重要かどうかは一概に判断できず、会社の規模や行っている事業などから個別具体的に判断することになっています。また、その用務は「自らがこれを処理しなければその事業に著しい損害が生じる恐れがあるもの」されています。これも個別具体的な判断とされていますが、仕事を理由の辞退は非常に限られているといえます。少なくとも単に忙しいということだけでは、辞退はできないことになっております。
最後に、裁判員休暇については、法律(裁判員法、労働基準法)で定められているとはいえ、従業員にとっては労働条件そのものであるから、就業規則に定めることが必要です。
「労働基準法・労働契約法実務ハンドブック」に「裁判員休暇」をうまくまとめた規定例が挙げられております。(*注3)
(裁判員休暇)
第〇〇条 従業員が裁判員法により次の事項に該当し、申請があった場合には裁判員休暇を与える。
(1)裁判員候補者として通知を受け、裁判所に出頭したとき
(2)裁判員もしくは補充裁判員として選任を受け、裁判審理に参加するとき
2 休暇を申請するときは、裁判所から交付される裁判員候補者通知などを添付して申請するものとする。
3 裁判員休暇は無給とする。
(*注1) 元々は衆議院議員の選挙権を持つものから選ぶ。候補者名簿登載の関係で、18歳・19歳の方が裁判員に選ばれるのは令和5年以降になる。
(*注2) 裁判員の参加は、法的には一応義務付けになっていますが、一応というのは、刑法ではなく行政上の罰(過料)にとどめており、また本文の中で述べたように厳格な条件の下に辞退できることになっています。
(*注3) 同著は、労働契約法・労基法だけでなく労働法の必要な項目(項目別に)が、簡潔に必要不可欠な内容がまとめられています。知識があやふやな場合、項目別に確認するには非常に良い著書です。
裁判員は、刑事裁判が身近に、そして司法の国民の信頼性向上のため、平成21年5月21日から創設された裁判員制度によるもので、成人の国民(*注1)は誰でも選ばれる可能性があるものです。職場の従業員がいつ選ばれても、国民である以上参加協力をするべきものといえます。
労基法上は、どういう取り扱いになっているかというと、「労働者が公の職務を執行するために必要な時間を請求した場合は、拒んではならない」となっており、この「公の職務」の中に裁判員は含まれております。すなわち、裁判員の職務執行の時間については、職場の上司であろうと拒んではならないのです。(労基法7条)
その間の賃金は、どうなるかというと、会社としては会社の仕事はしていないことから、「無給」としてもかまいません。もちろん、有給扱いも会社としてはできることになります。
というのも、裁判員には、日当として、一日1万円以内、裁判員候補者一日8000円以内の額が支給されます。この日当ですが、どういう性質のものかというと、裁判員として職務を遂行することによる損失(例えば保育料、裁判所に行くための諸雑費等)とされており、裁判員等としての労働の対価としては考えていません。したがって、会社がその日の賃金(=有給扱い)を出しても、給料の2重取りには当たらないとされているからです。
さて、会社の仕事の関係でいうと、原則として、仕事が忙しいという理由だけでは、裁判員は辞退出来ないことになっております。(*注2)裁判員法では、辞退は「その従事する事業における重要な用務」に限られ、重要かどうかは一概に判断できず、会社の規模や行っている事業などから個別具体的に判断することになっています。また、その用務は「自らがこれを処理しなければその事業に著しい損害が生じる恐れがあるもの」されています。これも個別具体的な判断とされていますが、仕事を理由の辞退は非常に限られているといえます。少なくとも単に忙しいということだけでは、辞退はできないことになっております。
最後に、裁判員休暇については、法律(裁判員法、労働基準法)で定められているとはいえ、従業員にとっては労働条件そのものであるから、就業規則に定めることが必要です。
「労働基準法・労働契約法実務ハンドブック」に「裁判員休暇」をうまくまとめた規定例が挙げられております。(*注3)
(裁判員休暇)
第〇〇条 従業員が裁判員法により次の事項に該当し、申請があった場合には裁判員休暇を与える。
(1)裁判員候補者として通知を受け、裁判所に出頭したとき
(2)裁判員もしくは補充裁判員として選任を受け、裁判審理に参加するとき
2 休暇を申請するときは、裁判所から交付される裁判員候補者通知などを添付して申請するものとする。
3 裁判員休暇は無給とする。
(*注1) 元々は衆議院議員の選挙権を持つものから選ぶ。候補者名簿登載の関係で、18歳・19歳の方が裁判員に選ばれるのは令和5年以降になる。
(*注2) 裁判員の参加は、法的には一応義務付けになっていますが、一応というのは、刑法ではなく行政上の罰(過料)にとどめており、また本文の中で述べたように厳格な条件の下に辞退できることになっています。
(*注3) 同著は、労働契約法・労基法だけでなく労働法の必要な項目(項目別に)が、簡潔に必要不可欠な内容がまとめられています。知識があやふやな場合、項目別に確認するには非常に良い著書です。