元・還暦社労士の「ぼちぼち日記」

還暦をずっと前に迎えた(元)社労士の新たな挑戦!ボチボチとせこせこせず確実に、人生の価値を見出そうとするものです。

本人のミス・不注意があっても労災は認定されます。

2013-08-25 04:51:53 | 社会保険労務士
 労災認定は、「業務上か」だけが問われる!!

 労働災害によるケガや病気については、一般の健康保険等の保険証で治療を行うことは認められていません。ですので、会社は労働者と協力して、労働災害=労災として、労働基準監督署へ認定申請しなければなりません。(ただし、指定病院で治療を受けたときは、指定病院が申請の窓口になります。)

 労災として認められるためには、「業務上」のケガ、病気であることが必要ですが、「業務上」とは、業務の中にある危険等が、現実に起こったと経験的に認められることです。

 よく間違われるのは、労働者の過失かどうかは問われないということです。民法の損害賠償になると、本人の故意・過失が問われますので、間違われるのですが、労災の場合は、本人のミスや不注意等は一切問われません。労働者災害補償保険法では、この場合の対象となる事故は、業務上のケガ、病気であるかということなのです。

 したがって、ここは、「業務上」であるかどうかだけが、労災認定の際の判断になるのですから、本人のミス・不注意は一切関係ないのです。
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医療行為の同意は、家族は可能か。

2013-08-23 03:43:16 | 社会保険労務士
 医療行為の同意は、一身専属的!!(その人だけが持つ権利、他人が取得、行使できないもの)

 
 病気やケガの場合、病院で治療をしてもらいますが、簡単な治療であれば、もともと病院に行ってお医者さんにかかる際には、「直してほしい(患者)、今の治療方法でできることはやりましょう(医師)」といった医療契約を結んだものとされ、その医療診療契約の中に、その治療についての同意もしたと考えられていますので、特にその治療への患者の同意は必要ないと言われています。
 しかし、手術ともなれば、患者の痛みを伴うものであり、そういうわけにはいきません。

 
 刑法204条 人の身体を侵害したものは、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
 民法709条 故意または過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害したものは、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

 
 上の法律のように、医師といえども、本人の意思を無視して、手術をすることは、傷害罪、損害賠償責任を生じることになりますが、本人の同意があればその違法性がなくなるため、医師としては手術等の同意を求めることが必要になるのです。

 一方、患者の側からいうならば、具体的な医療に対する同意権を有していることになるのですが、これは、一身専属的なその患者でないとできないものといわれています。

 そのため、成人の場合であれば(子の親権を持つ親の場合を除く)、代理権を持つものであっても、その代理権で、その同意をすることはできないのです。

 しかし、医療現場では、成人患者が同意能力を喪失した場合には、一般的に家族から同意を得る方法が行われているところですが、「医療の同意」が違法性をなくすための同意であって、同意を得ることによって、この医療行為には「社会的相当性」があるものになるからであるとされています。すなわち、*1「本人の意思を推測しかつ本人の最善の利益を図り得る家族に説明してその同意を得るならば、社会的相当性ということから違法性がなくなる場合があることが肯定されてよい」としています。しかしながら*2「もとより本人と交流のない遠い親族が同意したからとしても、社会的正当性の評価が得られることはありえない」としている。

 いずれにしても、医療の同意の代行は、理論構成され、法的に定められたものではなく、「違法性阻却」(傷害罪、損害賠償を生じないために、その違法行為を排除すること)のため、医療現場で運用されているものであるといえるのであって、家族の範囲等の法の整備が待たれるものである。特に、今、焦点になっている成人後見人の制度のあっても、通説では、単なる代理権を持つものであって、未成年後見人に認められるような医療の同意権はないとされていますので、第三者が成人後見人を行う場合には、現実に求められる「胃ろう手術」や「経管栄養」等の同意にどう対処するか、現実には処理できないところであって、早めの法整備が待たれるところであります。

 *1.2. 日本弁護士連合会(平成23年12月15日づけ)医療同意能力がない者の医療同意代行に関する法律大綱
 参考:・上記の日本弁護士会の法律大綱、・社労士のための成年後見制度実務(日本法令、埼玉県社労士会成年後見等部会著)
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退職願いの撤回は、できるのか?

2013-08-12 16:24:04 | 社会保険労務士
 承諾期間を定めた申し込みは、その期間内撤回できない(民法521条)とあるは、労働契約に適用されるのか!?

 退職については、通常、「依願退職」と呼ばれるところの、労働者と使用者との合意によって将来に向かって労働契約の解消が行われます。正社員等雇用期間の定めをしない場合にあっては、労働者はいつでも退職を申し出ることができ、使用者が2週間以内に承諾すれば、合意解約になることになります。さらに、使用者が承諾をしなかったとしても、2週間経過すれば、雇用契約は終了することになっています。なお、月給等期間によって報酬を定めたものについては、その前の月の前半(15日まで)にその申し込みをしなければならないとされています。(民法627条)

 ところで、承諾期間を定めた(使用者の承諾がなくても2週間経過すると申し込みの効力が生じるから、使用者は2週間以内に承諾しなければならないことになる。)申し込みの場合には、その承諾期間内にはその申し込みは取り消すことはできないとの規定(民法521条、申込みの一般原則)があるので、その2週間の間は、退職の撤回はできないのでしょうか。

 退職の申し込みの撤回は、この労働契約にこの民法の一般原則が適用になるかであるが、そのまま適用にならず、退職の申し込みの撤回は可能とされているところである。その理由として、「労働契約関係は継続的契約関係であり、日々の指示就労を介して人的にも強く結びついていることを考慮すると、民法の承諾期間内の申し込みの取り消しの禁止は、適用されない」(昭和48年田辺鉄工事件)としている。すなわち、会社側から、本人の退職を承諾する旨の意思表示がなされる前であれば、退職の撤回は可能ということになる。

 ただし、「使用者に不測の損害を与える等信義に反する等の特段の事情があるときは撤回できない」(同 田辺鉄工事件)とあるから、後任採用を行い、引き継ぎを指示がなされるなどの特別の事情がある場合は、撤回は困難ということになろう。

 なお、退職願いの申し出先が、直属の上司でなく、人事権限のある人事部長であるとした場合、その人事部長がその場で了解した場合には、退職の合意解約はその場でなされたということになりますので、その後の撤回は無理ということになります。

 参考:採用から退職までの法律知識(安西愈著、中央経済社)
    新・労働法実務相談(労働時報別冊、労働行政)
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