元・還暦社労士の「ぼちぼち日記」

還暦をずっと前に迎えた(元)社労士の新たな挑戦!ボチボチとせこせこせず確実に、人生の価値を見出そうとするものです。

時間外・休日労働時間数45時間・80時間・100時間に注意!!

2011-10-31 04:41:52 | 社会保険労務士
 

県社労士会の「必須研修会」の中から(続き)

前回に続き   県労働局の専門監督官の話の中から、もうひとつお話します。11月は「労働時間適正化キャンペーン」期間になります。労働局が力を入れているのが、過重労働による過労死等の防止です。
 
 時間外等の労働時間では、月の時間外・休日労働時間が45時間、80時間、100時間に注意したいということです。月時間外・休日の労働時間を併せて45時間を超えると、健康障害のリスクが徐々に増していき、月100時間を超えるか、2~6か月平均で80時間を超えると非常に健康障害のリスクが高まる(過労死等)ということは、医学的な観点からいわれているところです。
 
 これにどう法律では、対応しているかというと、まず労基法の36協定では、延長の限度時間が1か月で45時間になっています。ただし、この限度時間を超えて労働時間を延長しなければならない、臨時的な特別の事情が生じた場合に限り、労使当事者間において定める手続を経て、限度時間を超えてさらに延長をすることができる36協定を結んでおくことはできます。この1か月の協定の延長の限度時間が45時間になっています。

 次に80時間というのは、労働安全衛生法での面接指導等の対象となるということです。時間外労働・休日労働が1か月当たり80時間超の長時間労働になり、疲労の蓄積が認められ、又は健康上の不安を有している労働者や事業場において定めた基準に該当する労働者が、対象となります。これは、あくまで、労働者の申し出により実施することと、使用者の努力義務となっている点です。

 100時間というのは、これは使用者の義務となっている面接指導です。時間外・休日労働が1か月当たり100時間を超え、かつ疲労の蓄積が認められる者となっています。さらに面接指導を実施した医師から必要な措置について意見聴収を行い、必要と認める場合は適切な事後措置を実施することとなっています。80時間との違いは、使用者の努力義務ではなく「義務」となっている点ですし、労働者の申し出によるところは変わりありませんが、対象労働者には産業医が申し出を行うよう勧奨することができるとなっています。
 このように医学的な観点からのリスクの高い超過労働時間数に合わせて、労働法においても規制を行っているのです。
 念のため申し上げますが、ここで超過労働時間は、法定労働時間に対する時間外・休日労働ですから、週40時間の労働した上での超過労働ということになります。

 最後に、次のようなことを監督官が付け加えられました。36協定において、時間外・休日労働が80時間、100時間を超えると、監督署の指導が入るので、実際はこれを超えているのに、80時間、100時間以下で提出するということをした場合は、どうなるか。もしも過労死が発生した場合は、悪質とみられて、検察庁への送検ということになりかねませんので、注意してくださいとのことでした。

関連ブログ(2)<時間外労働の絶対的な制限・上限はないのか=労働安全衛生法・労災法からのアプローチ>
関連ブログ(1)<時間外労働には絶対的な制限・上限はあるか=実際の運用と法定労働時間のかい離>



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タイムカードの記録イコール残業時間ではありません。

2011-10-28 03:45:51 | 社会保険労務士
 

県社労士会「必須研修会」の議題から

 県社労士会の「必須研修会」に行って参りました。今回は、「労働時間の適正管理及び加重労働対策」「最低賃金情報及びこれに伴う業務改善助成金」(以上それぞれの行政側から)「メンタルヘルス」(県内に専門医は数えるほどしかいないという産業医の谷山ゆかりを講師)、「社労士会労働紛争解決センター宮崎のあっせん報告」という、てんこ盛りの内容でした。県社労士会会長さんを始め、事務局を運営している皆様方のご苦労に誠に頭が下がる思いでした。

 ところで、労働時間等については、県労働局の専門監督官が話されたのですが、タイムカードを付けていると、監督署の調査の際に、タイムカードどうりに残業したとみなされるのではないかという理由で、タイムカードを廃止する企業を見かけますが、監督官がそのままタイムカード記録により直接その時間残業をしたと判断することは、あり得ないとことでした。
 タイムカードが仕事場から離れているとか、ちょっと雑談や茶飲みをすることはあるだろう、労働時間とは考えられない時間は、あるでしょうということでした。

 「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準」では、タイムカードに関しては、次のように記されています。
・「タイムカード、ICカード等の客観的な記録を基礎として確認し、記録すること」となっています。この基準だけでは、タイムカードそのものを労働時間と誤解される向きがあるかもしれませんが、同省のパンフレットでは、次のようになっています。
 「タイムカード、ICカード等の記録を基本情報とし、必要に応じて、例えば使用者の残業命令書及びこれに対する報告書など、使用者が労働者の労働時間を算出するために有している記録とを突合することにより確認し、記録してください。」としています。
 これは、当研修会でもらったパンフレットを基に、このブログを書いています。

 いずれにしても、タイムカードを今まで運用していたのに、廃止することは、客観的な資料がなくなることになり、まずいということです。裁判になっても、客観的な証拠を提示できなければ、負けてしまいます。厚労省の回し者ではありませんが、現在タイムカードの運用があるのであれば、上記の厚労省のパンフレットのとおり行った上で、使用者としては、タイムカードの記録があっても、報告書等を上げなければならないとの労働者への意識付けを行って、タイムカードの時間がそのまま労働時間ではないとの労使の共通認識を図ることが必要かもしれません。
 


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職務発明譲渡の際の「相当な対価」について<就業規則の一条追加の解説>

2011-10-24 04:04:27 | 社会保険労務士

就業規則等と職務発明について

 前回の職務発明で、就業規則に書いた「発明者及び会社が協議の上定めた額」で会社に譲渡するというくだりの、「協議した額」とは、特許法では「相当の対価」となっており、従来は会社が受けるべき利益と会社の貢献度とを考慮して決めることになっておりました。これでは、発明商品の利益が大きい場合は、びっくりするような額になってしまいます。平成17年4月からは、就業規則のように、原則として会社と従業員との間での自主的な取り決めによって定められることになりました。(特許法35条4項)
 
 そこで、会社では、従業員との間との自主的な取り決めとして、いわゆる*「職務発明規定」などを整備するようになりました。就業規則モデル条文(中山慈夫著、日本経団連)では、まず会社と従業員の基本法ともいうべき就業規則に、「従業員が行った発明の取り扱いに関する事項は、職務発明の定めるところによる」として、別規定の職務発明規定に委任しております。そのうえで、詳細な職務発明か否か、承継の対価の算定方法等については、この*「職務発明規定」で定めています。

 こうしたことにより、発明した従業員から会社への譲渡の対価の取り決めが不合理と認められるようなものでなければ、それぞれの当事者間の事情に応じて発明を生み出す従業員の研究意欲を高めるような対価を、自由に話し合いによって決めることができることになるわけです。この場合、不合理であるかどうかは、使用者と従業員による話し合いがどう行われるのか等の手続き面を重視して判断するようになっているようです。 
 
 結局のところ、新制度では、使用者と従業員の話し合いによる自主的な取り決めにより対価を決めることができますので、使用者の経営環境や従業者の研究開発などのそれぞれの当事者間の事情に応じて対価を決めて支払うことになります。したがって、必ずしも一律利益のなん%といったことにこだわらないとされています。ただし、争いになった場合には、その自主的な取り決めが不合理かどうかが判断され、そうであれば、改めて裁判所の算定した額が、その対価になります。
 
 繰り返しになりますが、いずれにしても、就業規則等に職務発明の場合の、合理的な対価のルールを決めていない限り、譲渡の場合の対価は、「相当の対価」を支払ったとは、認められずに、裁判所の算定した額になり、従来どおりの「発明が生み出す利益」と「会社の貢献率」等により決まることになりかねませんので、高額な額を支払わないとならない羽目になりかねませんので、ご注意を。
 
 思い出されるのは、裁判にもなった、中村修二氏の青色発光ダイオードダイオードの職務発明の件です。今、エコの問題もあり、私たちもおおいに恩恵を受けている発明ですが、会社は、すくなくとも、この「相当の対価」を支払わなければなりません。「相当な対価」の改正法律の経緯は、知りませんが、この裁判訴訟のころに、この改正はなされています。
 
 (参考)就業規則モデル条文(中山慈夫著、日本経団連)
     職務発明に関するQ&A(特許庁)
  *職務発明規定;就業規則モデル条文(中山慈夫著、日本経団連)では、この職務発明規定のモデル条文を紹介しています。


   #####<いつも読んでいただきありがとうございます。>####井
 
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職務上の発明があり得れば就業規則に一条を加えましょう!!

2011-10-21 04:43:01 | 社会保険労務士

職務発明とは?

 最初の職場が工業開発課というところで、いろいろ担当業務があった中で (いろいろというのは、年に何回か発生しないような業務なのでいろいろ業務を持たされたということです。別に優秀だからというわけではありませんので、念のため) 発明の奨励がありました。発明コンクールの展示作業などを行いましたが、もちろん特許法についても一応勉強しました。40年前のことですので、ほとんど忘れていますが、枠組みの基本はかわらないようです。

 発明をしたら、特許法に基づく「特許権」という権利を取得して、他者を排除して、独占的にその生産・その使用をすることができますし、他の人に譲渡することだってできます。形はないものの、モノと同様に扱うことができるというわけです。

 ところで、その頃から「職務発明」については、問題となっていました。職務発明とは、会社に勤める従業員が会社の仕事として研究開発した結果、完成した発明をいいます。会社では○○研究所、国、県では試験場などがありますが、そんな組織立っていなくても、中には本当の日常業務の中で、生まれるアイデアが特許になる場合だってあり得る(この場合、職務発明かどうかは微妙なことにはなるとは思いますが)かもしれません。

 そんな会社で生まれた発明であっても
、特許を受ける権利は、会社ではなく従業員にあります。それは、発明はその人間個人の頭から生み出されるものであるという当たり前のことから来ていると思われます。

 では、なんで職務発明を定義し区別するかと云うと、会社は、その人の給与から研究費、設備機械を使わせるなど、めんどうを見たから、その人の発明ができたともいえるわけです。会社も当然何らかの貢献をしてきている場合の発明ですから、会社は従業員の許可をもらわなくても、特許発明を使用する権利(無償の「通常実施権」といいます)やあらかじめ従業員の職務発明に関する権利を譲り受けられるように決めておくことができます。(以下「予約承継」といいます。)

 そこで、職務発明が予想される会社としては、この法律に認められた予約承継の規定を就業規則にうたっているわけです。この予約承継の規定がなければ、従業員が私の発明だからと譲渡しないといえば、会社は自由に使えないことになってしまいとんでもないことになってしまいますので(もちろん、説明のように、通常実施権は、会社にも付与されますが、通常実施権は特許権者である従業員はだれかれと使用を許諾することができ、独占的に使用できませんので、その効果は半減してしまいます。)、会社としては、会社としての「権利」を考えている場合は、必ずこの規定をおいているはずですが、まだ新進気鋭の会社であれば、あるいは、まだかもしれませんので、就業規則のチェックをしてみてください。

 職務発明がよくなされる職場であれば、職場の従業員すべてが職務発明の可能性がないわけではないと思われますが、その労働者のすべてに適用される定めであれば、就業規則に必ず記載しなければならないことになっています。(相対的必要記載事項)

 リスク回避型就業規則・諸規定作成マニュアル(森・岩崎共著、日本法令)のモデル条文では、次のように記載されています。

第114条 従業員が自己の現在又は過去における職務に関連して発明、考案をした場合、会社の要求があれば、特許法、実用新案法、意匠法等により特許、登録を受ける権利又はその他の権利は、発明者及び会社が協議のうえ定めた額を会社が発明者である従業員に支払うことにより、会社に譲渡又は承継されるものとする。
  

 <参考>職務発明制度に関するQ&A(特許庁)、リスク回避型就業規則・諸規定作成マニュアル(森・岩崎共著、日本法令)


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雇用保険「基本手当」は老齢厚生年金とは同時に支給されません。

2011-10-17 04:35:18 | 社会保険労務士
 

雇用保険の基本手当(旧失業保険)と老齢厚生年金は制度の趣旨が違い相容れないというのがその理由!!


 昔、おおらかな時代では、失業保険(今の雇用保険の基本手当)と老齢厚生年金を同時にもらっていたことがありました。年金も、60歳からまるまるもらっていたのですが、65歳から支給への途中経過ということで、今では報酬比例部分しかもらえない状況になっています。(さらに、68歳までに伸びることについて社会保険審議会で議論されているとことが大きく報道されています。)。これも、原資がないという社会情勢から言えば、仕方がないのかもしれません。

 そういえば、まだ高度成長期だった頃、未来学者の坂本二郎さんは、ずっとこのこと(原資がなくなること)について、人口動態から警鐘をならしてきたような気がするのですが、彼は85年に若くしてお亡くなりなっています。彼が生きていたらどうおっしゃるでしょうか。

 ところが、予算がないことで、国の方でも気がついたのでしょうか。現在では、雇用保険の基本手当を受けている間は、60歳からの老齢厚生年金は、支給されないことになっています。

 いわく、老齢年金が職業生活からの引退した人への所得保障なのに対して、雇用保険は、働き続けようとする人に対する生活保障です。老齢年金は、いわば、昔でいえば、ご隠居さんへの社会的な支援なのですが、雇用保険は、働く意思能力を待った人への社会的な支援なのです。同じ社会的な支援といっても、全く正反対なものなのですから、制度の趣旨から2つの給付は支給するのは、不合理だというわけです。私、還暦社労士としては、その一部年金をいただいていますが、言われてみれば、ご無理ごもっともという気がします。全く反論できません。とはいえ・・・、自分のこととなると・・・となるわけですが、皆が十分に満足する社会は、もう来ないのかもしれません。皆が十分でなくても、支えあって何とか生活できることで満足しなければならないのかもしれません。また、ここでは「十分」という表現は、適当でないのかもしれません。「満足」を知る=「足るを知る」ことも、必要なことかもしれません。

 さて、この60歳からの老齢年金と雇用保険は同時に出ないとういう話は、次の議論にもつながります。雇用保険の基本手当は、28日ごとにハローワークで失業状態を確認してその期間の基本手当を支給することになりますが、その間、ちょっとどっかで働いて収入を得た場合は、失業と認められずに基本手当が出ないことだってあり得ます。その28日の間、その期間全部がそういった基本手当が全く出ないのは別にして、基本的には、一日でも基本手当をもらえば、年金はでません。極端な話、一日しか基本手当をもらっていないのもかかわらず、年金がもらえないのはおかしいのではないかという疑問がやはり生じます。しかし、国にいわせれば、最初の論点にもどって、雇用保険をもらったということは、働く意思があるのでしょう。その人が、引退する老齢年金をもらうこととは、相容れないでしょうとなるわけです。水戸黄門の印籠と一緒で、そういわれれば、そうなんだということになります。

 そういうことで、基本手当をもらっている間は、途中ちょっと基本手当を支給されなかったとしても、基本的には、その期間は老齢年金はもらえなくなってしまいますが、同じ日数分の基本手当を受けた場合でも、年金の支給停止月数が、「月」の関係で異なることがありえますので、基本手当の支給対象となった日数を30日で割って、すなわち、基本手当を貰った月数相当分を支給対象日数から計算し直して、実際に老齢年金の支給が停止された月数が多いときは、その多くなった月数分を解除することになっています。最後に、実際の日数に合わせて調整して精算は行っているのです。

 (ここで一言いいたいのですが、基本手当の対象日数となった日数を30で割るのですが、1未満の端数は1に切り上げとなっていますので、30で割った残りが、余り1日であったとしてもひと月多くなってしまいます。この場合は、基本手当が一日多いだけでも、基本手当支給月数が多く見られて、それに応じて解除される月数が少なくなって、損したような気分になりませんか。こんなところ、国はおおざっぱですが、予算がないので分かっていても知らないふりをしているのではと勘ぐってしまいます。)

  
  支給停止解除月数=年金支給停止月数-*基本手当の支給対象となった日数/30 *1未満の端数は1に切り上げ


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