労基法は女性保護規定があり男女平等の原則を謳えず雇用均等法の成立を待たねばならなかった!!
労基法4条は、賃金についてだけ男女の差別の禁止になっているのでしょうか。ほかの募集・採用や配置・昇進等についての差別を禁止してもよさそうですが、こちらは男女均等法のほうで禁止され、法律によりすみわけがなされています。
この疑問に答えるためには、法律が制定された歴史的経緯・沿革を見てみると謎が解明されそうです。
労働基準法は、戦後間もなく、1947年(=昭和22年)4月に制定された法律です。明治時代の工場法を引き継ぎ、まだ女性の長時間労働と職場の安全衛生管理の確保という規制がこの労働基準法にも色濃く残っており、女性保護の主な規制として、純然たる母性保護規定だけではなく、つぎのように時間外労働の制限及び休日労働の禁止や深夜労働の禁止があったのです。
(労働時間及び休日)
第64条の2 使用者は、満18歳以上の女子で1号から5号までの事業(工業的業種)に従事する者については、第36条の協定による場合についても、1週間について6時間、1年について150時間を超えて時間外労働をさせ、又は休日に労働させてはならない。ただし、(決算期について)・・・1週間について6時間の制限にかかわらず、2週間について12時間を超えない範囲内で時間外労働をさせることができる。
2 満18歳以上の女子で前項の事業以外の事業(非工業的業種)に従事する者については、第36条の協定による場合についても、・・(この非工業的業種については、1項の工業的業種よりは弾力的規制になっている。)・・を超えて時間外労働をさせ、又は休日に労働させてはならない。
(深夜業)
第64条の3 使用者は、満18歳以上の女子を午前10時から午前5時までの間において使用してはならない。ただし、次の各号の一に該当する者については、この限りではない。
・・・・・・
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男女差別禁止の対象となっていたのが、賃金についてのみ(労基法4条)であって、均等待遇の原則(労基法3条・労働条件の差別的取り扱いの禁止)についても、国籍、信条、社会的身分を理由とするものであって、ここにも男女差別を理由とするものはありませんでした。これは、労働時間・休日・深夜業等において、述べてきたように女性労働者を保護する規定があるため、一般的な平等取扱い原則には合わず、法上の規制が一貫しないからでした。
賃金以外の他の性差別の平等原則は、1985年の男女雇用均等法が成立するまで待たなければなりませんでした。この法律は、女性の雇用上の地位向上をめざしたもので、募集・採用・配置・昇進の他多くの労働条件について、均等待遇の確保や差別的取り扱いの禁止が規定されました。2度にわたる大きな改正(1997年、2006年)を経て、今では男女を問わない性差別禁止法となり、平等原則が推し進められています。
一方、労働基準法はどうなったかというと、主な差別規定あった時間外労働の制限、休日労働の禁止、深夜労働の禁止については、1997年の改正(1999年施行)により撤廃され、その意味では、今では男女共通の規制基準となっています。ただし、危険有害業務の就業禁止や産前・産後の休業等の女性に特有の母性保護規定は、当然維持されています。
このように、労働基準法においては、最初は女性を保護しようという色彩が強く、男女平等の概念からは遠く離れたものであったのが、男女雇用均等法の成立に伴い、労働基準法は母性保護を除く女性の保護規定を撤廃することとなったわけで、もともとあった男女の賃金差別禁止がそのまま残り、賃金のみが労働基準法で規制することになり、その他の労働条件は男女雇用均等法の規制と言う形で、役割分担することになったわけです。
参考:労働法実務講義第3版・大内伸哉著、日本法令出版
労基法4条は、賃金についてだけ男女の差別の禁止になっているのでしょうか。ほかの募集・採用や配置・昇進等についての差別を禁止してもよさそうですが、こちらは男女均等法のほうで禁止され、法律によりすみわけがなされています。
この疑問に答えるためには、法律が制定された歴史的経緯・沿革を見てみると謎が解明されそうです。
労働基準法は、戦後間もなく、1947年(=昭和22年)4月に制定された法律です。明治時代の工場法を引き継ぎ、まだ女性の長時間労働と職場の安全衛生管理の確保という規制がこの労働基準法にも色濃く残っており、女性保護の主な規制として、純然たる母性保護規定だけではなく、つぎのように時間外労働の制限及び休日労働の禁止や深夜労働の禁止があったのです。
(労働時間及び休日)
第64条の2 使用者は、満18歳以上の女子で1号から5号までの事業(工業的業種)に従事する者については、第36条の協定による場合についても、1週間について6時間、1年について150時間を超えて時間外労働をさせ、又は休日に労働させてはならない。ただし、(決算期について)・・・1週間について6時間の制限にかかわらず、2週間について12時間を超えない範囲内で時間外労働をさせることができる。
2 満18歳以上の女子で前項の事業以外の事業(非工業的業種)に従事する者については、第36条の協定による場合についても、・・(この非工業的業種については、1項の工業的業種よりは弾力的規制になっている。)・・を超えて時間外労働をさせ、又は休日に労働させてはならない。
(深夜業)
第64条の3 使用者は、満18歳以上の女子を午前10時から午前5時までの間において使用してはならない。ただし、次の各号の一に該当する者については、この限りではない。
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男女差別禁止の対象となっていたのが、賃金についてのみ(労基法4条)であって、均等待遇の原則(労基法3条・労働条件の差別的取り扱いの禁止)についても、国籍、信条、社会的身分を理由とするものであって、ここにも男女差別を理由とするものはありませんでした。これは、労働時間・休日・深夜業等において、述べてきたように女性労働者を保護する規定があるため、一般的な平等取扱い原則には合わず、法上の規制が一貫しないからでした。
賃金以外の他の性差別の平等原則は、1985年の男女雇用均等法が成立するまで待たなければなりませんでした。この法律は、女性の雇用上の地位向上をめざしたもので、募集・採用・配置・昇進の他多くの労働条件について、均等待遇の確保や差別的取り扱いの禁止が規定されました。2度にわたる大きな改正(1997年、2006年)を経て、今では男女を問わない性差別禁止法となり、平等原則が推し進められています。
一方、労働基準法はどうなったかというと、主な差別規定あった時間外労働の制限、休日労働の禁止、深夜労働の禁止については、1997年の改正(1999年施行)により撤廃され、その意味では、今では男女共通の規制基準となっています。ただし、危険有害業務の就業禁止や産前・産後の休業等の女性に特有の母性保護規定は、当然維持されています。
このように、労働基準法においては、最初は女性を保護しようという色彩が強く、男女平等の概念からは遠く離れたものであったのが、男女雇用均等法の成立に伴い、労働基準法は母性保護を除く女性の保護規定を撤廃することとなったわけで、もともとあった男女の賃金差別禁止がそのまま残り、賃金のみが労働基準法で規制することになり、その他の労働条件は男女雇用均等法の規制と言う形で、役割分担することになったわけです。
参考:労働法実務講義第3版・大内伸哉著、日本法令出版