元・還暦社労士の「ぼちぼち日記」

還暦をずっと前に迎えた(元)社労士の新たな挑戦!ボチボチとせこせこせず確実に、人生の価値を見出そうとするものです。

労使一体となって計画的に年次有給休暇(有給休暇の計画的付与制度)を取得しよう!!

2017-09-30 17:25:30 | 社会保険労務士
 政府が進めている(*1)「キッズウィーク」<平成30年からスタート>を利用して、子供の親ともどもそろって年次有給休暇を取得しよう!!

 10月は「年次有給休暇取得促進月間」です。仕事と生活の調和のために、計画的に年休を取得しようと政府は呼びかけをしています。

 個別に労働者が年休を取れるのならば、もちろんそちらの方が好きな日に休むをとるのはそちらの方がいいに決まっていますが、日本人の勤務状況として、なかなか他人の仕事のしわ寄せ等を考えて、休めないというのが実態です。そこで厚生労働省が呼びかけているのは、年休の「計画的付与制度」の利用です。これは、有給休暇の付与日数のうち、5日(この5日については個々の労働者が請求した日が有給休暇になる。すなわち、従来どうり、個々人が自由に取得できるものとしてこの5日は残しておく。)を除いた残りの日数については、労働者の代表または労働組合と労使協定を結べば、会社の方で計画的に休暇取得日を決めることができます。この制度を利用している企業は、導入していない企業よりも年休の取得率が5.6ポイント高くなっているという。(平成26年就労条件総合調査)

 会社の方で、計画的に有給を取得させることができるからでしょう、会社は労務管理がしやすく計画的な業務運営ができるこというメリットがあります。例えば、年休取得月間の10月については、体育の日が第2月曜日となっているので、もともと週休2日制の所では、3日連続の休みとなっていますが、これに計画年休として、この週休2日の前日か、月曜日の体育の日の翌日に計画年休を加えると、4日連続の休暇となります。さらに、旅行や何かの行事等がある方は、この4日連続休暇の前後に、従来の個人的な有給休暇を加えれば、5日の連続休暇となります。というような、キャンペーンを厚生労働省では行っています。

 一番いいのは、従業員がためらわずに休めるという形の会社全体が休めるのがよく、これは製造部門などに可能なところもあるでしょうが、流通・サービス業などでは、グループごとにしかできないところもあるので、前者の「一斉付与方式」、後者の「交替制付与方式」など会社の実態に合せたさまざまな付与方式が取れます。

 さて、ここまでは、政府・厚生労働省のキャンペーンのくだりですが・・・。例えば、「会社の創立記念日」として、休みにしようと社長が思い立ったとき、この年休の一斉付与方式を採用すると、労働者の時間外手当の賃金単価は変わりないことになります。この創立記念日として設定すれば、詳しい計算方法の説明は省きますが、この休みの日は普通には「休日」<労働義務のない日となる>としての休みが相当と考えられるところ、そうすれば時間外手当の基礎となる賃金の単価が跳ね上がってしまいます。しかし、これが「休暇」<労働義務はもともとあるのだが会社が義務を免除する日>としての年次有給休暇となると、時間単価には影響を与えません。会社の創立記念日を設定して「休日」にしたいのだが、時間外手当の単価が高くなると考えて、思いとどまっている社長さん、年休の一斉付与方式の採用により全日休みにしたらどうでしょう。社員も、少なくとも記念日として休みが増えることについては賛成のはずです。

 *1 「キッズウィーク」 地域ごとに夏休みなどの一部を他の日に移して休業日を分散化する取り組みが平成30年からスタートします。例えば、8月いっぱいの夏休みのうちの5日を他の月に移し、前後の土日が休みとすれば、併せて9日の連続休暇となるというもの。子供たちの親ともども休みにするということになればよいともいうもくろみであるが・・・・・なかなか親も一緒に年休を取るというのは無理ムリという声も聞こえてくる。
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宮崎県・みやざきで働く=奨学金返還を県と就職先企業が支援

2017-09-24 10:04:04 | 社会保険労務士
 宮崎県内の就職率は良い方ではないが、給料面からだけではなく、気候、知って育った環境の強み、通勤時間の短さ、住む住宅の確保など県内に就職するメリットは十分にあるのだ!!
 
 宮崎県は、「日本のひなた」を掲げているが、これは日照時間や晴れの日数が必ずしも日本一ということではないが、これらの太陽の当たるに自然的な統計が全体的には優位にあるということで、これらを併せた独自の「日なた」日数が日本一であるというものである。むしろ、これに加えて、人の心、やさしさ、明るい自然が織りなす「風土」的なものが、日本一を目指すとしたものではないか。

 さて、その宮崎県が、その「ひなた創生」として掲げるものとして、宮崎県内企業とともに宮崎に就職する皆さんのために、奨学金返還の制度を設けて支援することになった。

 私の知っている者のなかでも、奨学金をもらって大学に行ったというものがいるが、社会に出て働いてその給料の中から、返していくということになると、やはり本当に大変なものがあるようだ。家が裕福とはいえないがどうにか出してもらった自分と比べると、実にその苦労が分かるのである。他人が遊ぶ金を取っておいて、こつこつと長年にわたって返還しなければならないと思うからである。そのお金を企業と宮崎県がその一部ではあるが支援するというのであるから、県内の企業に就職したい若者にとってはありがたい。

 宮崎県は、過去に全国で県内就職率の不名誉な最低を記録したことがあるし、今でもその下位ランクにあることは間違いない。全国でも人口の減少が叫ばれる中、県外に就職することは、ますます大量の人口の流出となり、地域の停滞につながる。逆に、県内の就職率が上がることは、本県の活性化による地方創生の実現につながることになる。将来の地域を担う若者が、宮崎に残り、今後の産業人材として育つことは喜ばしいものである。

 県内企業にとっても、メリットは大きい。奨学金返還支援にあてた金額は、「宮崎産業人材確保支援基金」への寄付金として(ここを通じて対象就職者へ支援が行われる。)、所得税の控除として扱われるし、返還金の全額ではなく3/4は県の方で出してくれるので、1/4を支援するだけでよい。また、県の方でも企業のPRをしてくれることにもつながる。ただし、対象企業として、宮崎県に応募して認めてもらう必要がある。(29年度は応募は締め切ったが、29年から8年間継続して応募。)


事業概略
 ●就職する対象者 下記の対象となる宮崎県内企業に、正規雇用により就職し、5年以上継続して勤務する予定のある大学院・大学・短大・高専・専修学校の在校生又はその卒業者 ただし、県外企業にあっては、宮崎県内勤務に限定した採用枠を有する企業も含む。
 ●対象となる奨学金 ・日本学生支援機構奨学金、・宮崎県育英資金 ・宮崎県奨学会奨学金
 ●支援金額 大学院・6年生大学 150万円(限度額)*
      4年生大学      100万円(限度額)*
      短大・高専・専修学校  50万円(限度額)*
       ただし、勤務期間(1年、3年、5年)に応じて分割して支援。   *要返還額の1/2を上限。 
 ●対象人数 毎年度40名、合計320名の支援対象者を決定。
       (平成29年度から平成36年度までの8か年間継続して行う。)
 ●お問い合わせ 宮崎県総合政策部産業政策課 産学官連携推進担当
         専用Hp{CHOICE!-みやざきではたらく} http://choice-miyazaki.com/

●平成29年度の参画企業名
1、株式会社岡﨑組(宮崎市)2、株式会社九南(宮崎市)3、株式会社興電舎(延岡市) 4、有限会社椎原通信建設(小林市)
5、旭建設株式会社(日向市)6、株式会社内山建設(日向市) 7、株式会社増田工務店(高鍋町)8、株式会社システム技研(都城市)
9、吉玉精鍍株式会社(延岡市)10●宮崎富士通コンポーネント株式会社(日南市) 11●株式会社アキタ製作所(日向市)
12●株式会社日向中島鉄工所(日向市)13●藤屋印刷株式会社(日向市) 14●フジヤホールディングス(日向市)
15●九州オリンピア工業株式会社(国富町)16●有限会社平和食品工業(国富町)17●株式会社吉川アールエフセミコン(新富町)
18●アリマン乳業有限会社(川南町) 19●宮崎瓦斯株式会社(宮崎市) 20●スパークジャパン株式会社(宮崎市)
21●株式会社アプロード(東京都千代田区) 22●植松商事株式会社(宮崎市) 23●植松エネルギー株式会社(宮崎市)
24●株式会社マルイチ(日向市) 25●米良電機産業株式会社(宮崎市)26●大神設計株式会社(福岡市)27●植松産業株式会社(宮崎市)
28●有限会社小丸新茶屋(高鍋町) 29●株式会社ウィズネス(宮崎市) 30●株式会社イーストウインド(山口県下関市)
31●株式会社西の丸(門川町)32●有限会社ウエハラ(小林市) 33●医療法人ごとう整形外科(宮崎市) 34●ふくどめクリニック(宮崎市)
35●延岡農業協同組合(延岡市)


 
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慶弔休暇を定めるときの注意点、特に有給にするかは社長の大きな判断⇒社員のやる気に影響!!

2017-09-16 16:53:56 | 社会保険労務士
 慶弔休暇取得が分割可能か、日曜日等休日を含むのかも規定しておいた方がベターでは

 本人が結婚する(新婚旅行を含めて)とき、身内の葬式のときなど、忌引き、祝い事の慶弔休暇があります。これは、労働基準法で休暇として定められているものではありません。法的には、会社としては付与してもしなくてもいいものです。しかし、一般的には、小規模の就業規則にも慶弔休暇の規定はよくみられるものです。

 慶弔休暇は、上記のごとく法的な制限はなく、会社独自で決めてよいものですから、付与日数についてはいくにちでも与えてもいいものですが、小規模の事業所ではそう長く与えることとなると、会社の業務に支障をきたすことになりますし、少なすぎても慶弔休暇としての意味がないものとなってしまいます。会社の状況、業績をみながら規定することになります。少なくとも、近い親等(しんとう=身内の近さの程度)から長めに調整していくことになります。

 よく問題となるのは、例えば結婚式と新婚旅行が別々の日にあってという場合など、分割でとれるかという、いわゆる分割の問題ですが、この場合、問題とならないよう、継続してなのか、分割して取れるのかをはっきりさせておきましょう。
 また例えば、土日の週休2日の会社の場合は、土日の休日が慶弔休暇の中に含まれていた場合は、その土日は慶弔休暇に含むのかが問題となることがあります。含まなければ、連続して2日余計に与えなければなりません。これも、この慶弔休暇が、土日の休日の中に含まれるのかをはっきりさせなけておかなければなりません。
 申請時期についても、会社の判断で決めてよいものですから、慶事については1か月前でかまいません。ただし、弔事については、急なこともあり、発生後すみやかに提出という方法でもやむをえないこととなります。これも、早めの期限を切るのであれば、ちゃんと就業規則に記載しておきましょう。

 なお、本人の結婚式の場合は、取得する時期を入籍の3か月以内、また妻の出産の慶弔休暇を設定するときには、産後2週間(出産日を含めて)など、取得する時期を決めなければ、皆が忘れたことに本人が申請するなどの例もあり、この場合、決定の上就業規則に規定することが必要なこともあるでしょう。

 さて、最後の問題は、慶弔休暇の日を有給とするか、無給とするかですが、これも会社独自の規定でどちらでもかまいません。小規模事業所の場合は、無給としているところも多いようです。ただ、あまり頻繁にありうるものではないことから、ここは社長さん、太っ腹のところをみせて有給としたほうが、こんな会社なのかと取られるより、より会社の愛社精神にも火をつけることとなり、いいのではないかと思います。ただし、あくまでも、会社の事業に影響のない程度の範囲でということでありますが。

第●条 社員が、次項の事由のいずれかに該当し、本人からの請求があったときには、次のとおりそれぞれの連続した日数を限度として慶弔休暇を与える。ただし、第○条の休日は、当該日数の中に含まれるものとする。
 
 ・本人が結婚するとき           5日
 ・子が結婚するとき            2日
 ・実兄弟姉妹が結婚するとき        2日
 ・実養父母、配偶者、子が死亡したとき   4日
 ・配偶者の父母及び兄弟姉妹が死亡したとき 2日   
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医事係へエール~診療報酬点数(収入)にかけては誰にも負けないプロ、医師への助言・提言も!!

2017-09-09 11:57:41 | 社会保険労務士
 診療報酬改定の際してのチェックと日常の算定に関しても診療報酬点数を見ながら常にチェックを怠りなく!!

 ある日の事、自転車で通行していた際、軽自動車が急に発信してそのまま止まらずに、私の自転車と身体にぶつかった。けがの程度は、左足と右手首が自転車で転んだ時に、血が出ている、さらに右の大腿部に打撲を負ったらしく、非常に痛い。相手の方は前方不注意だというのでそれ以上追及する気にはならなかった。警察の事故処理を終えて、相手の車で、ある病院に連れていってもらった。

 さて、問題はそこの病院での話である。出血していた2か所は軽症ですぐに治ったのだが、大腿部の打撲については体のバランスが崩れたのか、腰から次には背中、その後は堅甲骨、そして肩として次々に痛みが移動していったのである。ときには、肩甲骨と肩の部分が同時に痛いということもあり、体の右左双方に痛みがあるため、結局、右肩・右の肩甲骨・左の肩・左の肩甲骨と4か所の部分が痛いのである。ところが、処方された処方箋を見ると、4か所ではなく、3か所分の湿布薬<*注意1>しか出してくれない。どうもおかしい、この病院湿布薬を節約しているのかなあと思ったものである。再度説明すると、2週間分14日分の湿布薬の処方をしてもらうのに、一日4か所貼るので4か所×14日=56枚で必要であるが、42枚(=3か所×14日)しか出してくれなかったのである。またある日の来院の際は確かに56枚(=4箇所×14日)出してくれたのであるが、次の2週間後(14日後)に来院したときには、今月は後14枚しか出せないというのである。ここで初めて、1か月で湿布薬の70枚制限していることが分かったのである。70枚から前回すでに処方している56枚を差し引き、今月はあと14枚しか出せないということであった。<*注意2>

 実は、診療報酬改定が平成28年4月に行われ、診療報酬点数表(「診療報酬の算定方法」告示)に一処方につき70枚の制限が書き込まれたのである。あまりにも診療側が考えなく処方すると考えた国は、一処方に70枚の制限規定を加えたのである。具体的には、例外規定はあるが、一処方で70枚を超えると診療報酬を算定しないということであった。しかしながら、これは保険医の方で考えながら、患者の状況を見ながら、一処方あたり70枚を超えなければいいのである。むしろ国の方でそのような措置を取ったといえるのである。

 ここには、どこにも1か月で70枚の制限は書いてないのである。ここは、平成28年度当初において、全国を集めて説明会を行った時に、ちゃんと一処方あたりということを口を酸っぱくして言ったとのことであり、なんでこの病院はこういう間違いがあるのか、元医事係職員として勤務していた私には、信じられなかった。各地で開催される説明会にも出ていなかったのだろうか。私の指摘によって初めて、この病院では点数表の解釈を誤っているのが分かったのである。

 これは、私一人患者一人の問題ではない。患者が必要とする湿布薬の枚数が患者に与えられなかったといううことである。患者にとって、必要な枚数がもらえなかったという診療内容の問題でもある。4枚必要とするのに、2・3枚しか与えられなかったのであり、十分な診療が行われなかったのである。一方で、病院側としては、算定すべき処方薬を制限していたのであり、自ら病院の経営についてはマイナスのファクターである。2重のマイナスの要素がここにはある。今では、医薬分業が進んでおり、病院と薬局の経営は別というところが多く、病院側は算定できるのは処方箋自体の点数となるのであまり病院経営には影響はないようではあるが・・・<むしろ、薬局側の収入に影響を与えたと思われる。>
 
 院長が出てきて自分が勘違いして多大の迷惑をかけたと私に謝られたが、そうではなく元医事係の私にすれば、この病院の医事係がもっとしっかりしていたらと思う。初めの間違いは誰でもある。問題はその後の対応で1年半も誤りを放置しておいたということである。①まず診療報酬改定の際には、情報が行き届かないところも多いということを前提に、特に医事係において、再度、4月の改定後に実際に点数の運用を図りながら、算定誤りがないかどうかチェックすることが必要であろう。そしてまた、②毎日の医事係が診療報酬を計算する中で、必ず診療報酬点数表を見ながら(というより自分が医事係の時は、社会保険研究所の「点数表の解釈」を手元においていた。)勉強しながら再チェックしていく必要があろう。この2つのチェックがあれば、改定してから1年半も間違った算定をしていくことは考えられないのである。この病院医事係が数名いたようであるが、だれもこの間違いに気がつかなかったのだろうか。

 どうしても医療においては医師の方が医事係よりも優位に立ちやすのは当然であるが、医事係としては、こと点数表においては誰にも負けないほどの勉強をしてほしい。今回の指摘がこの病院の医事係からものであったら、何ぼか病院のスタッフ皆から、点数表にかけては、よりよき立場に立つ良い機会ではなかったかと思うので残念である。というのも、自分自身がそういう立場を経験しており、自分も思うとおりできなったという反省を込めての話である。病院は医師という診療行為を行う者のもとで、医事係は診療報酬点数にかけては誰にも負けず劣らず、医師に助言できるプロであってほしいのである。その願いを込めて自分の自戒を含め医事係にエールを送る者である。

 <*注意1>具体的な湿布薬名はロキソプロフェンNaテープ100mgである。
 <*注意2>ことはそう単純ではないのであるが、説明のため、話(例示)を簡単にしているので、あしからず。
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10人未満の従業員でも就業規則の作成をしておけば安心<解雇の際のリスクが少なくなるなど>

2017-09-02 16:27:33 | 社会保険労務士
 就業規則の作成は従業員にとっても文書化により勤務条件・服務・会社方針等がよくわかる<不当解雇・残業代請求のリスクを抑える>
 
 10人未満の事業所において、労基法上の「就業規則」の作成の必要はあるかといえば、法上は必要ないといえる。しかし、作成した方がベターというより、ベストの選択ではある。

 というのも、従業員を辞めさせなければならないとき、就業規則に解雇の規定がなければ非常に難しい。例えば、辞めさせなければならないといったが、次のような場合を考えてみよう。数人の従業員で今まで仲睦まじく和気あいあいでやってきた事業所があるとする。その中の従業員が交通事故で重傷を負い、少なくとも数か月は治療に専念しなければならないとして、さらに医者の話では後遺症も出るかもしれないという。この場合、就業規則がなければ、社長はどうするかということである。社長としたら、そんなに会社に出て来なければ辞めさせるしかないと考えるが、今までその従業員には親同然でかわいがってきたので、情的にはいかんせんとしたものがある。その情的なものを振り切って、社長は解雇としました。(解雇予告期間はちゃんと1か月は取り、労基法の措置は行ったものとします)。

 これに対して、従業員の方も今まで会社のためにどれだけ尽くしたのかという思いがあり、こういう血も涙もない会社なのかという思いで、解雇無効という形で裁判に訴えました。この場合、会社に就業規則がないことは非常に不利です。就業規則には、一般的には、どういう場合に解雇を行うかの事由が書いてありますが、裁判所の判例では、この事由は例示ではなく制限列挙の規定であり、この事由にちゃんと記載がなければ解雇はできないと考えられているからです。さらには、合理的で相当なものでないと解雇はできないことになっています。まずは、一番目に解雇をする事由が就業規則に記載されているのでなければ解雇はまずむずかしいのです。

 さて、従業員の言い分が裁判で認められたが、従業員は同時に会社憎しとなり、サービス残業代をも払えと訴えていました。これも、いつからが残業であるかがはっきりしていまければなりませんが、就業規則がなく労働時間が社長の思う(恣意と言うべきか)とおり運用されていたとしたら、これも従業員の主張した通り、残業代を払うことになるかもしれません。

 今言った2つは、よく出てくる事案です。特に、残業代については、辞めてから労働者から請求がある場合はめずらしくありません。仕事をしている間は何もいわないが、辞めさせられたという労働者にとっては、辞めてからはどんなことも言えるので、そういった対抗措置をとってもおかしくはないのです。こういうときの備えとして、就業規則は作成しておくべきです。社長だけではありません、どんな場合に解雇のなるのかを就業規則に書いてあれば、従業員としても安心です。

 労基法には、就業規則に必ず書かなけれならない「絶対的記載事項」というのがあって、簡単にいうと(1)始業・終業の時刻、休憩時間、休日、休暇等 (2)賃金に関する事 (3)退職・解雇に関する事 を書けば、それだけで就業規則になることになります。以上ですから就業規則を作るのは思ったよりは簡単です。しかし、さらに進めて、トラブルにならない点から必要最小限の規定を載せるとすれば、わずか20条足らずの条文でできないことはありません。従業員が20名ほどになれば、会社の方針に沿った100条以上の就業規則が必要になるかもしれませんが、わずか数名程度の従業員ならば、必要最小限の条文で、上述のような解雇や残業等のトラブルを防ぐことができます。

 三村正夫氏の「零細企業の就業規則」では、規定すべき事項とそのメリットを具体的に挙げています。(内容は私の解釈で書きましたので、当該項目に沿ってという意味である。)
 1、退職、解雇、懲戒の具体的事項を定めること。
   やむなく従業員に辞めていただくときに、不当解雇と言われるリスクを防ぐ。これは、上に挙げたとおり。
 2、始業・就業の時間・労働日が明確に示されること。
   始業・終業時間を規定した上で、例えば、社長が命令してからが残業であることなど社長の許可制にしておくと、残業時間がちゃんと管理される。辞めた後から残業代の請求の可能性が低くなる。
 3、服務規律を定めること。
   先の例で言えば、残業するときは社長の許可をもらうことなどを定めれば、いつから残業かがはっきりする。だらだら残業もなくなる。
   その他会社としての日常の勤務について守ってもらいたいことを規定しておけば、従業員も会社が何をしてもらいたいか明確に分かることになる。
 4、忌引き・祝い事時の休暇を決めること。
   身内の結婚式・葬式の際に休む期間や有給かどうかを決める。
   これは是非必要で休むのですから、ちゃんと決めておきましょう。有給かどうかは会社の事情によりますが、あまり該当もなければ、有給でも可でしょう。(釣りバカの浜ちゃんのように、よく該当すれば考えものですが・・・これも信頼関係です。)
 5、賃金額・昇給・退職金の有無等をちゃんと決めておくこと。
   これはトラブル防止と従業員のモチベーションに大きく影響するので、具体的に決定することが必要です。
 ・・・・・ など となっています。従って、これらの項目は、必ず就業規則に載せましょうということになります。それでも、著者の「伝説の就業規則」が示すように、わずか全部で22条となっています。

 さて、労基法では、労基署への就業規則の届け出義務は、10人以上となっています。これも、パートや契約社員等を常時雇うのであればこれを含めて10人以上であれば届けなければなりません。しかし、これが10人未満であれば作成と同様に届け出義務はありませんが、届け出しておけば従業員にしっかりとした就業規則が出してあると説明でき、従業員も納得してくれるものと思われます。
 ただし、届出をしない場合でも、従業員には周知の徹底が必要です。そうでないと、就業規則が有効であるとはいえないからです。

 参考 サット作れる零細企業の就業規則 三村正夫著 経営書院 
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