元・還暦社労士の「ぼちぼち日記」

還暦をずっと前に迎えた(元)社労士の新たな挑戦!ボチボチとせこせこせず確実に、人生の価値を見出そうとするものです。

期間更新され続けた有期労働契約は雇止めの有効性に注意<今回更新を最後とする合意規定を>

2015-12-26 18:16:09 | 社会保険労務士
経営上突然の雇止めが必要でなければ、トラブル防止からは一呼吸置くことも必要か

 有期労働契約(雇用期間の定めのある労働契約のこと、これに比して定めのない場合は一般的には定年まで勤められる契約である。)についても、期間の更新をまんぜんと続けていると、突然雇止め(労働期間が満了により雇わないこと)にしたときには、雇止めの有効性が問われトラブルとなる可能性がある。

 「労働契約法第19条は、(1)有期労働契約が反復して更新されたことにより、雇止めをすることが解雇と社会通念上同視できると認められる場合(第1号)、又は(2)労働者が有期労働契約の満了時にその有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由が認められる場合(第2号)に、使用者が雇止めをすることが、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、雇止めは認められないものである
 
 したがって、使用者は、従前の有期労働契約と同一の労働条件で労働者による有期労働契約の更新又は締結の申し込みを承諾したものとみなされ、有期労働契約が同一の労働条件(契約期間を含む。)で成立することとしたものであること」(通達)となっています。

 これは、労働契約法の24年の改正規定ですが、実は、すでに判例の積み重ねにより一般化された内容であり、単にこれを条文化し、立法化して、より明確化した形で有期労働者の保護を図ろうとするものです。<雇止め法理の明文化> というのも、新しい条文は、一般的にはしばらく公布期間を置き周知してから、施行するのが普通なのですが、この条文は、すでに判例によりその内容が認められているため、平成24年の公布日が即施行日となっています。
 
 さて、先に漫然と契約更新をしている場合と書きましたが、長期にわたって反復継続されて、更新がなされてきた契約や、はてまた従前の更新手続きが不明確で、事実上期間の定めのない状態になっている場合などには、この規定により、契約更新がなされたと考えられる場合があります。こういった場合の雇止めについては、経営上緊急に行わなければならないでなければ、「猶予期間」を置き一呼吸することが、労働者にとっても突然の雇止めではなく次のような「緩和措置」を設けることにより、労使のトラブルを防ぐことになります。

 すなわち、「今回の更新をもって最後とし、次期更新はしない」あるいは「×月×日の期間満了をもって本契約は終了する」といった条項を、今回更新する契約の中に入れ込んで、次回の契約はしないことをうたうのです。契約ですから、お互いの自由な意思で行われた合意であれば、有効であると考えられます。そのような同意がなされた場合には、「合意契約による期間満了の契約の終了」となり「雇止め」には該当しませんので、問題はありません。(全国社会保険協会連合会事件平成13大阪高裁決定など多数)

 しかしながら、注意しなければならないのは、労働契約法の19条2号において、すでに労働者に更新の合理的期待が生じていると認められる場合であれば、契約更新とみなされる点です。次回の更新をしない旨の条項を入れるのであれば、その旨を労働者に説明を十分に行い、真に理解を得ていなければ、なりません。というのも、労働者が納得して次回の更新はしないという「更新の合理的期待を放棄した」といえることが必要だからです。(近畿コカコーラ事件・大阪地裁H17.1.13判決)、さらに「お互いの自由な意思で行われた合意」であればとサラリと言いましたが、使用者側から提案するこの更新契約にあっては、あくまでも強制にならない自由な意思での合意が必要ということです。

 なお、有期労働契約の通算契約期間が5年を超える場合に当該労働者が無期労働契約の申し込みをしたときは使用者はその申しこみを承諾したものとみなすという規定も(改正契約法18条)ありますので、改正が適用になる平成25年4月1日以降の有期労働契約から起算して5年の期間が経過したものにあっては、無期労働契約になることも考えますので、これについても留意が必要です。

 参考;雇用法改正 日本経済新聞出版 安西愈著
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帰国月と翌月の未納期間の間に初診日があったとき<障害年金の納付要件2>

2015-12-18 10:59:17 | 社会保険労務士
海外在住期間が1年以上の場合で帰国後の翌月まで納付を忘れていた場合どうなる??<その2>

 障害年金ほど簡単そうに見えて、奥の深いものはないようだ。

 実は、障害年金の構造は簡単で、3つの要件をクリアーすれば、受給できる。1、初診日において被保険者であること(国民年金についてはさらに60歳~65歳までの日本国内に住む、かって国民年金の被保険者であった者が含まれる。) 2、障害認定日において、一定の障害の程度であること 3、初診日の前日において、一定の保険料の納付がなされていること(初診日の前日という条件が付くのは、病院に行ってからあわてて保険料を納付するのはアウトということである。)の3つの要件である。

 被用者保険にあっては、会社の被用者年金に加入している限り、海外に赴任しても、被保険者であることに変わりないが、国民年金にあっては、海外に住み住所が国内になければ、強制の被保険者ではなくなり、任意被保険者として入らざるを得ない。国民年金には加入しても加入しなくてもいいのである。そこで、3の納付要件にあっては、任意加入の期間となり、「被保険者期間」に該当せず、納付要件は問われないことになる。
 
  そこで、どこまで未納期間がOKなのかというと、帰国日の属する月と翌月までは未納であってもよいことになる。帰国の属する月からは、強制的に加入しなければならないのであるが、ここで前回説明したあの条文を思い出していただきたい。「当該傷病に係る初診日の前日において、当該初診日の属する月の前々月までの1年間のうちに、未納期間がないこと *注*」という条件を満たしていればよい。初診日の属する月と前月は、納付しているかどうかは聞いていない。 


 <月の経過⇒>     帰国日 初診日
    海  外 在 住     ↓   ↓
  未加入 未加入 未加入 未納 未納
               ↑   ↑ 
           初診日の 初診日の
           前々月  前月
この1年に=====>
ずっと海外在住である


 上の図のように、初診日の属する月と前月は未納期間であってもよいことになるのである。さらに、初診日の属する月の前々月までの1年間は、まだ海外にあって、保険料を納付しなければならないという期間ではないのであって、いわゆる被保険者期間ではないし、加入が強制されているような未納というべき期間ではない。

 ゆえに、初診日が帰国日のする月から起算して2か月の期間にある場合は、ほめられていいものではないが、未納期間があっても障害年金の納付要件は満たすことになる。しかし、この2か月だけでこれ以降の未納期間が続くとなると、納付の一定の基準(1年間の未納がないこと)を満たさない恐れがあるのである。これって帰国してから納付をたまたま忘れていたというような場合等に、結果的に2か月間に限って通用することであり、帰国してからは忘れずに、必ず納付していただきたいと申し上げておきたい。

 *注* ただし、この1年間に未納がないという特例が認められるのは、H38.4.1前に初診日がある場合であって、65歳前のときに限る。

参考;障害者年金相談標準ハンドブック 障害年金実践研究会出版プロジェクトチーム著 日本法令出版
 
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20歳以降の2か月未納付 でその間初診日があった場合<障害年金の納付要件>

2015-12-10 17:48:05 | 社会保険労務士
障害年金は要件は簡単だが奥深い!!標記のケースはOKか!!

 障害年金ほど簡単そうに見えて、奥の深いものはないようだ。

 実は、障害年金の構造は簡単で、3つの要件をクリアーすれば、受給できる。1、初診日において被保険者であること(国民年金についてはさらに60歳~65歳までの日本国内に住む、かって国民年金の被保険者であった者が含まれる。) 2、障害認定日において、一定の障害の程度であること 3、初診日の前日において、一定の保険料の納付がなされていること(初診日の前日という条件が付くのは、病院に行ってからあわてて保険料を納付するのはアウトということである。)の3つの要件である。

 ところが、3の納付要件一つとっても、そう簡単にはいかないようだ。障害年金のプロであっても、間違うという例がある。プロから言わせると、そんなところで間違ってはならない基本的な解釈だというのだが、実は年金の窓口が間違えたこともあるという。次のような例である。

 まずは20歳前傷病の障害基礎年金の納付期間である。基本的には、20歳前傷病の障害基礎年金にあっては、もともと20歳までは納付する必要はないので、納付要件は問われない。ところが、この20歳前傷病の障害年金ではなく、20歳を過ぎてその翌月が初診日であった場合で、この場合においては、20歳に達した日の属する月とその翌月は20歳以降であるので納付すべき期間であるが、そのまま2か月間未納の時はどうだろうか。これは初診日は20歳以降であるため、あくまでも20歳前傷病の障害基礎年金ではなく、普通の、一般の障害年金である。であれば、20歳の月とその翌日は、あくまでも未納であり、納付すべき期間の2か月(20歳の月と翌月)が納付されていないため、納付要件を満たしていないと判断ミスをするケースがあるという。

 これは社労士試験や年金アドバイザー試験において、良く出てくるあの部分の条項を思い出していただきたい。「当該傷病に係る初診日の前日において、当該初診日の属する月の前々月までに被保険者期間がある」場合に、一定の納付要件(3分の2以上の納付、あるいはH38.4.1前に初診日がある場合は、65歳前のときに限り、初診日のある月の前々月までの1年間に未納がないこと)を満たさなければならないのであって、そもそも初診日の属する前々月までに被保険者期間がない場合は、納付要件を問わないことになる。

  <月の経過⇒>     20歳 初診日
                    ↓  ↓
  未加入 未加入 未加入 未納 未納
               ↑   ↑ 
            初診日の 初診日の
            前々月  前月

 上の図のように、初診日の属する月の前々月においては、まだ20歳前であって、保険料を納付しなければならないという期間ではないのであって、被保険者期間はないし、そもそも未納という期間でもない。

 ゆえに、初診日が20歳の属する月から起算して2か月の期間にある場合は、ほめられていいものではないが、未納期間があっても障害年金の納付要件は満たすことになる。しかし、この2か月だけでこれ以降の未納期間が続くとなると、納付の一定の基準(3分の2や1年間の未納がないこと)を満たさない恐れがあるのである。これって20歳から納付をたまたま忘れていたというような場合や免除申請するところをしていなかった場合に、結果的に2か月間に限って通用することであり、20歳からは必ず納付していただきたいと申し上げておきたい。再度申し上げれば、一般には一定の納付期間を満たさなければならないのは、老齢年金のことが頭にあるようですが、一定の納付要件を満たさなければ、これまた20歳以降障害になっても障害年金が支給されないことになるから、ぜひ納付または免除申請はしておきたいものです。

参考;障害者年金相談標準ハンドブック 障害年金実践研究会出版プロジェクトチーム著 日本法令出版
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相当因果関係のある疾病があることによって障害年金の初診日は動くので注意!!

2015-12-05 17:35:11 | 社会保険労務士
 複数回の脳梗塞は、前の脳梗塞との関連性が否定される場合と肯定される場合がある!!(相当因果関係の是非)

 障害年金は、3つの要件をクリアーすれば、受給できる。1、初診日において被保険者であること(国民年金についてはさらに60歳~65歳までの日本国内に住む、かって国民年金の被保険者であった者が含まれる。) 2、障害認定日において、一定の障害の程度であること 3、初診日の前日において、一定の保険料の納付がなされていること(初診日の前日という条件が付くのは、病院に行ってからあわてて保険料を納付するのはアウトということである。)の3つの要件である。

 ところで、この疾病がなかったならば、次の疾病は起こらなかったような関係(これを「相当因果関係」という)であって、例えば先の疾病が糖尿病と後に発生した疾病が糖尿病性網膜症のような関係にある場合は、先の疾病の初診日=糖尿病の初診日をもって、この一連の疾病の初診日とするのである。すなわち糖尿病性網膜症の初診日ではなく、糖尿病の初診日をもって、その関連の病気の初診日とするのである。

 ということは、初診日と思っていた日がずっと前にさかのぼることになり、これが大きな問題を引き起こす場合がある。さかのぼった初診日は、つい先日までは、厚生年金に加入していたんだけれども、その日は国民年金だったということもある。支給される年金は、その初診日に加入していた年金から支給されることになるので、初診日が国民年金であれば、国民年金から支給されるのであり、厚生年金であれば厚生年金が支給される。厚生年金は基礎年金としての国民年金の上に、2階部分に厚生年金が乗ってくるので、国民年金とはもらえる額に相当な開きが出てくる。

 また、初診日の移動は、その一定の納付要件を満たさずに、全く支給されなくなることもあり得る。それほどまでに、初診日がいつであるかは、その人にとって、大きな経済的損失をもたらすこともあるのである。

 そこで、脳梗塞や脳出血などの脳血管障害の場合は、その発症が複数回起こることがあり得ます。脳においては、部位ごとにそれぞれの役割を持っているというのが脳科学の常識です。ということは、基本的には、複数回の発症の部位がそれぞれ違えば、別の傷病であるとみるべきでしょうし、全く同じ部位である場合は、同一の傷病とみるべきでしょう。そこで、MRI画像診断で1CM程度の場所の違いを立証することにより、審査請求により別の疾病と認められた例もあるようです。

 最近の傾向として、別疾病であることを請求者が立証しない場合は、同一疾病とすることが多くなったとのこと。例えば、心原性とそうでない脳梗塞においてさえ、請求者が申し立てなければ同一疾病とされることがあるようです。これは、いわば脳梗塞を起こしやすい症状が継続しているという現象面をとらえているからだと考えざるを得ません。

 一方、脳の損傷を受けた部分は同じだけれども、脳梗塞を起こした場所は別の場所にあるということを主張したところ、その審査の結果、別疾病とされた例もあるようです。また、脳梗塞のため肢体の不自由さがあった患者が、3度めの脳梗塞を起こした結果、高次脳機能障害を残したところ、2度目から半年しか立っていないのもかかわらず、高次機能障害が出たことを再度の審査で主張した結果、前者と高次機能障害は別物と認定されたとの事である。これらは、どこかのその違いを主張することによって、別物と診断されることもあるということであろう。

 思うに最近では、あまり医学的所見ということではなくて、なぜか脳梗塞を起こしやすい状態が続いていることを持って、関連の同一疾病と考えていると考えざるを得ません。しかし、それが再審査等での請求になり、先の疾病との違いを主張され、医師が委員として含まれている審査会の審査になると、それはそうだということになり、あくまでも素人の憶測ですが、容認せざるを得なくなるのではないかと考えたものと思われます。いずれにしても、この脳梗塞の障害については、まだまだ確立した認定基準はないように思われますので、不公平にならないよう早めの確立した審査方針を出してほしいところです。

 参考;障害者年金相談標準ハンドブック 障害年金実践研究会出版プロジェクトチーム著 日本法令出版
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