元・還暦社労士の「ぼちぼち日記」

還暦をずっと前に迎えた(元)社労士の新たな挑戦!ボチボチとせこせこせず確実に、人生の価値を見出そうとするものです。

就業規則には始業・終業時刻の定義を記載したほうがベストでは!!

2017-02-25 18:29:24 | 社会保険労務士
 当たり前の事のようですが始業・終業時刻とは仕事を始める・終わる時刻のことです<使用者の指揮命令下>

 始業の時刻及び終業の時刻は、就業規則の絶対的必要記載事項です。そして、この時刻の差が、休憩時間を除いて、実労働時間となります。実労働時間が労働基準法で一日8時間以内でなければならないというのは、就業規則では、絶対的記載事項のこの始業時間と就業時間によってチェックされることになります。就業規則には実労働時間は、書く必要はないわけで、「始業及び就業の時刻、休憩時間」を書くことによって、実労働時間がいくらになるかがわかるようになっています。(しかし、就業規則に、実労働時間を書いた方がベターであることは、事実です。)

 そうであるならば、この始業・終業の時刻(あくまでも法定労働時間と捉えた場合の事ですが)というには、この時刻の間は「使用者の指揮命令下」にあることが前提になりますので、会社の命令の基に仕事を始める時刻が始業時刻であり、これが終わる時刻が終業時刻ということになり、就業規則にそういうふうに明示することがベターでしょう。

 そうすれば、慌てて出社した社員が、始業時刻までにタイムカードを押せてああよかっと胸をなでおろし、しばらくは小休止ということにはなりません。昔、タイムカードも普及していなかった時代、私は遅刻にならないには、どこに来た時点であろうかと考えたことがありました、玄関口なのか、それても自分の席なのかと思いましたが、指揮命令下で仕事を始める時刻が始業時刻であるならば、こういった議論が成り立ちません。

 また、終業時刻については、今日はデートだからとは退社時間前に早めに着替室に飛び込むことや化粧室での用事をすましておいてく等はもともと違反ですが、行うことは難しくなるでしょう(ここらは会社の方針によりますが・・・)。労働時間の自己申告制をとっている会社であっても、労働者は、「使用者の指揮命令下」という労働時間を就業規則に明示することにより、早出残業や終業時刻過ぎの残業について、漫然とした残業体制からの脱却が図られるものと考えます。
 
 次に、それぞれ、就業規則の記載例を挙げておきます。この前提として、それぞれの就業規則には、労働時間の始業時刻・終業規則の時刻と休憩時間が書かれており、その上で、始業・終業時刻の定義をしております。(全部書きますと、著作権侵害になりかねませんので、この部分の記載にとどめておきます。)

 Ⅰ リスク回避型就業規則・諸規定作成マニュアル 森紀男・岩崎仁弥共著 (日本法令)
   ・・・・・・
 3、前項の始業時刻とは、会社の指揮命令に基ずく業務を開始すべき時刻のことをいい、前項の終業時刻とは、会社の指揮命令に基づく業務を終業すべき時刻をいう。
 4、従業員は、始業時刻に業務を開始できるよう余裕をもって出勤しなければならない。また、終業時刻(・・・・・)までに業務が終了するよう職務に専念しなければならず、業務終了後は、すみやかに退社しなければならない。(リスク回避型就業規則・諸規定作成マニュアル 森紀男・岩崎仁弥共著)

 Ⅱ 御社の就業規則ここが問題です 北村庄吾・桑原和弘著 (実務教育出版)
 ・・・・・・・・
 2、前項の始業及び終業の時刻は、業務の開始及び終業時刻のことであり、出社及び退社時刻ではない。始業時刻に業務を開始することができない場合及び終業時刻前に業務を終える場合は、それぞれ遅刻及び早退とし、遅刻及び早退に当たる時間分の給与は支給しない。

 以上、なかなか厳しいですね。
 
 Ⅲ 人事総務検定2級テキスト(LEC東京リーガルマインド)
 ・・・・・・・
 2、始業時刻とは、所定の就業場所で業務を開始する時刻をいい、終業時刻とは業務の終業時刻をいう。
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労基法16条(労働契約不履行の損害賠償予定・違約金の禁止)は民法420条と対比すれば分かりやすい

2017-02-11 09:44:56 | 社会保険労務士
 民法では契約自由の原則により、債務不履行につき損害賠償額の予定するのみならず裁判所はその額の増減はできない(民法420条)

 労働基準法においては、労働者等の労働契約の不履行により、例えば労働者が使用者の指示どおり行わなくて使用者に損害を与えた場合などにあっても、違約金や損害賠償額予定をすることを禁止している。これは、労働者がこれらの違約金や損害賠償額を支払わされることを恐れて、労働関係の継続を強いられることなどを防止するためである。

 労働基準法16条
  使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。

 この条文は、民法との対比で考えると分かりやすい。
 民法420条
  1、当事者は、債務の不履行について損害賠償の額を予定することができる。この場合において、裁判所はその額を増減することができない。
 ・・・・・・・・・・
  3、違約金は、賠償額の予定と推定する。
  
 まずこの民法420条1項であるが、債務の不履行について、賠償すべき額をあらかじめ定め、実際発生した額がいくらかを問わず、予め定めた額によって支払わせることができるという規定である。これは損害額の証明が容易でないから、予めその額を定めるということであるが、契約自由の原則からお互いの契約であればそれもありとしたものである。しかも、裁判所の判断をもってしても、その額を増減してはならないとしているが、これは契約自由の原則を貫くとともに仮に増減を許すとすれば、結局のところ実際の損害額を算定する必要に迫られるからとしている。また、3項は、違約金は、賠償額の予定と推定するとしている。

 しかし、労働契約においては、この契約不履行に対して、損害賠償の予定も違約金も定めてはならないとした。かって、労働関係において労働者の足止め策に利用されたので、これら身分的拘束力を伴うこれらのものを、労働契約(=民法の特別法)では禁止したものである。労働契約では、資本関係において弱い労働者の保護を図るため、これらの禁止は大きな意義をもつものであるし、形を変えてこの条文の重要性が新たに見直されている。(⇒労働者の海外研修や留学の費用を負担し、一定期間勤務することを条件として、この期間勤務しない場合は返還を求めるなどが、この違約金に該当するかが争われている。)

 なお、労働基準法16条の後半のくだりにおいて、単に「契約してはならない」とあるが、その禁止の対象を「労働契約」に限定していないことから、契約の相手方は必ずしも労働者とは限らず、親権者又は身元保証人が違約金等を負担する契約や、労働者の負担する違約金等を保証する契約等も禁止されている。

 参考 人事総務検定2級テキスト LEC東京リーガルマインド
    口語民法 山川一陽他共著 自由国民社
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年俸制は3か月前の予告期間が必要か<民法627条3項>

2017-02-06 14:28:44 | 社会保険労務士
 賃金は月1回支払としており年俸も月給制と同様に給与計算期間の前半に退職意思表示をすれば当該期間終了日で労働契約終了か<627条2項適用>

 使用者からの一方的な労働契約の解約については、これを「解雇」といい、労働基準法により少なくとも30日前の予告期間又は30日分以上の平均賃金を支払わなければならないとされている。(労働基準法20条)

 もともと民法では、次のとおり、使用者からでも労働者からでも、いつでもどんな理由であれ、2週間の予告期間をおけば、労働契約を解約できるとなっている。しかし、使用者については、先の労働基準法の方が特例法になっているため、予告期間など14日ではなく30日前となる。使用者からの予告期間は14日ではあまりにも短く労働者が路頭に迷ってしまうので30日に修正変更したものである。

 <民法627条1項> 当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から2週間を経過することによって終了する。

 労働者からの労働契約の解約申入れについては、労働基準法などのこういった特例はないので、この627条1項の条文どおり、2週間の予告期間をおけば、いつでも解約可能となる。

 <民法627条2項> 期間によって報酬を定めた場合は、使用者からの解約の申し入れは、次期以後についてすることができる。ただし、その解約の申し入れは、当期の前半にしなければならない。
 <同条3項> 6か月以上の期間によって報酬を定めた場合には、前項の解約の申し入れは3か月前にしなければならない。    (注)赤字の「使用者からの」は改正民法部分
 
 この規定は、給与計算期間との兼ね合いからすると、次のとおり整理できる。(人事総務検定2級テキスト) 
 ア、給与計算期間の前半に退職の意思表示
 ⇒その給与計算の終了日をもって労働契約が終了することとになる。
 イ、給与計算期間の後半に退職の意思表示
 ⇒次の給与計算の終了日をもって労働契約が終了することとになる。
 
 これでは3項を含んだ説明、になっていないのではないかという疑問が出てくる。期間によって給料(=報酬)を定める場合とは、月給や年俸が考えられ、3項が6か月以上の期間となっているので、3項は具体的には年俸の事をいい、2項は月給の事を指していることになる。菅野労働法では、3項をもって「年俸制の場合は3か月前の予告が必要である」(3項)としている。

 しかし、この3項の年俸制の解釈については、これを適用しないとする有力な説があるようだ。労働基準法では、毎月1回以上の支払いをしなければならない(労基法24条)としているので、年俸制であっても月給制と同じと考え、2項を適用または準用するのである。というのも、労働者からの労働契約の解約申入れに対し、3か月の予告期間はあまりにも長いというわけである。(野田進氏本人はどちらの説かは分からないがそのように述べている。)また、石嵜弁護士は、簡単明瞭に「年俸制であっても、労基法24条により毎月1回払いの原則があるため、・・民法627条第2項の対象になる」(就業規則の法律実務)と述べています。よく考えてみれば、月の支払いは年俸を12か月+ボーナス相当の月数でもって割ったもののような単なる年俸といったものについては、前もって、年の始めに年の俸給でもって決めらる他は、それによって年の始めに「給料」がアップダウンすることはあれ、月給とあまり変わらないような年俸もあるような気がする。

 一方、3項は「6か月以上期間によって報酬を定めた場合は」となっていて、素直に読めば、あくまでも、「6か月以上の期間によって(の)報酬」=具体的には「年俸の場合」を想定しているといえる。年俸でもって決める場合に、例えばその人に大きなプロジェクトを任している場合など、3か月前の予告期間が必要とされるようなことも想定される。よって、そのような本来の年俸制であれば、3項はまだ意義があり適用になると考えるべきであろう。

 注意したいのは、今回の改正民法では、2項は使用者からの解雇の申し入れ規定であり、3項においても「前項の解約の申し入れ」となっており、使用者からの解雇の申し入れの規定である。したがって、労働者からの解雇の申し入れは、1項に戻って、2週間の予告期間をおけば、解約できる。 従前からこういった解釈をするものもいたが、今回改正の「使用者からの」という文言が加わったことにより、より明確になった。確認すると、労働者からの解約の申し入れは、あくまでも2週間前であることになる。2・3項において適用すべきは、使用者側からの解約の申し入れということになる。

 なお、この予告期間中には労働契約が継続しているので、労働者は未だ労働義務及び誠実義務を負っており、例えば、無断欠勤して引継ぎを怠ったり、会社のデータを持ち出したりしたら、労働者は相応の責任を負うことになる。

 参考 労働法    菅野著    弘文堂
    労働法第6版 水町勇一郎著 有斐閣 
    労働法概説  土田道夫著  弘文堂  
    労働法実務講義第3版 大内伸哉著 日本法令  
    人事総務検定2級講義テキスト LEC東京リーガルマインド 
    就業規則の法律実務 石嵜信盛編 中央経済社 (2021年6月14日追加分)


 
コメント (2)
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