元・還暦社労士の「ぼちぼち日記」

還暦をずっと前に迎えた(元)社労士の新たな挑戦!ボチボチとせこせこせず確実に、人生の価値を見出そうとするものです。

退職金は給料に上乗せ前払いにする!<就業規則の変更>

2011-08-08 05:40:33 | 社会保険労務士
 就業規則~<退職金>~について
 

 ある機会があって、ある会社の就業規則を見せてもらいましたが、退職金を規定していた就業規則が次の年には、「退職金は、給料に上乗せして前払いする」との規定に変更されていました。従業員に聞くと、社長の意向で決まりましたとのことで、自分たちは納得していない様子。

 
 ちゃんと退職金の積立に回す原資の額がそのまま給料の前払いになっているのであれば、それはそれでOKでしょうが、実際は原資も減らされているのであれば、完全な就業規則の不利益変更になりますし、ある人には前払い退職金が増になっていても、ある人には減少だってあり得ます。また、退職金の前払いという形でありますが、実質的には、毎月の給料の増であっても、いわゆる「退職金」はゼロということでしょう。前払いという支払い制度の変更であるといえ、退職金をあてにしていた労働者にとっては、納得に行かない者もいるはずです。税金控除の面でも、大きな控除も受けられません。
 

 すみません、説明が後先になりましたが、「不利益変更」とは、契約締結時の労働条件が、その後の変更によって低下する場合をいいます。この不利益変更は、労働者との全員の合意が原則です。従業員の言い方からすると、どうもその合意が図られていないようです。労働契約法第9条では、「使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない。」とされています。

 
 原則的には、不利益変更の場合は、労働者と合意しなければ、就業規則を変更することは出来ないのです。ただし、次回紹介するように「合理的なもの」であれば、合意がなくても認められることはありますが、実務的には、まずこの原則論に沿って、労働者との合意ができないか考えるべきでしょう。

 
 まずは、使用者としては、将来を見据えて、現在の就業規則どおり退職金がちゃんと払えるか見てみることになるでしょう。例えば、60歳定年の会社があったとして、56歳が2人、58歳の従業員が1人、59歳が1人いたとします、勤務年数に応じて退職金額に違いがあるのが普通でしょうが、仮に単純にどの人も退職金が500万とすれば、1年後は500万の支払い、2年後は500万、4年後は1000万円の資金が必要となります。1年、2年後の合わせて1000万円まではなんとか支払えますが、4年後は退職金原資の積み立ても底をついてしまうことも考えられます。現在のご時世では、退職金の計画的な積立もままならないというのが実情のところも多いでしょう。

 
 そこで、計画的に退職金を積みたてていっても、資金がショートしてしまうので、今回退職金を前払制度にしたいとのことで、労働組合なり、それがなければ、皆の前で、そこの事情を話し、納得してもらっってから、就業規則の改正は行うべきでしょう。そうでなければ、労働者にとって、唐突すぎます。そこのところが、なされたのか、なされていたにしても、話し合いが不十分であったので、先ほどの話で、従業員が納得していなかったのでしょう。

 
 再度申し上げますが、実務的に考えると、基本的には、就業規則の不利益変更は、労働者の合意を得なければならず、労働者との話し合いが基本になるのであって、ましてや、こっそりと変えることは、就業規則に変更は許されないという話です。手続き的には、就業規則の変更は、労働組合か労働者の代表の意見書を付けなければならないことは、ご存じのとおりです。ただし、これは「意見」であって合意書ではないことは、これまたご存じのとおりですね。

 
 ※<突然ですけど、社労士試験受験の皆様へ(アドバイス)>この記事を書いていて思い出しました。毎年今頃、大変だったなあと。私、4回も受験しました。社労士試験では、この就業規則の変更の労働者の同意か意見かは、よく出るところです、40回でも出ていたはずです。皆様、過去問になっているのを、私が現実に受験していたというのがスゴイと思いません。私、直前まで覚えていましたけど、問題として出ると、こんがらかってしまって、間違ってしまいました。なので、今年受験される方は、まずは落ち着いてください。そして、同意か意見か「対比」できるくらいに、確実な知識として持っていないとだめでしょうね。と今頃いっても、必死で確認作業している今の時期、何のアドバイスにもならないかもしれませんが。よく受験校が1回で受かるというのをウリにしていますが、それにこしたことはありませんが、「還暦社労士」なると、覚えも勘も悪くなってきます。しかし、時間をかけてコツコツとやれば、必ず結果はついてきます。特に「なでしこジャパン」が優勝してから「あきらめない」が今の日本のムードになっています。まだまだ受験日まで時間はあります。今年こそはという気持ちで、最後まで「あきらめない」で頑張りましょう。(毎回いつも、私そんな気持ちで臨んでいました。)


  

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特別項目の特殊健康診断の必要な有害業務とは?

2011-08-05 06:41:16 | 社会保険労務士
 就業規則~<健康診断>その3~について

 前回紹介しました、特定業務従事者の健康診断は、労働安全衛生法で言いますと、一般の1年1回の健康診断と同じ条文で規定されています。安衛法66条1項に「事業者は、労働者に対し、・・・医師による健康診断を行わなければならない。」とされていますので、同じ健康診断項目を、特定業務従事者以外は1年1回でよいが、特定従事者は6か月以内に1回行わなければならないという、検査回数頻度の問題だけなのです。

 今回紹介する、特殊健康診断といわれているのは、全く別の条文、安衛法66条2項に規定されています。
「事業者は、有害な業務で、政令で定めるものに従事する労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による特別の項目についての健康診断を行わなければならない。」とされています。
 特別の項目ですから、特定従事者で6か月に1回健康診断をしている者でも、そのうえで、特別の項目について、健康診断をしなければならないというわけです。

 その医師による特別の項目についての「特殊健康診断」をしなければならない有害業務とは、政令で次のとおり定められています。
(労働安全衛生法施行令第22条)

高圧室内作業(圧気工法により、大気圧を超える気圧下の作業室又はシャフトの内部において行う作業に限る。)
潜水器を用い、かつ空気圧縮機・手押しポンプによる送気又はボンベからの給気を受けて、水中において行う業務
放射線業務~X線装置の使用等一定の業務~施行令別表第2に詳しく記載されています。
第1類物質及び第2物質の特定化学物質を製造・取り扱う業務(一部業務を除く)/ベンジジン・石綿等の製造禁止物質を試験研究のために製造・使用する業務石綿等の取扱・製造に伴い石綿等の粉じんを発散する場所による業務~別表第3第1号及び第2号・第16条等に物質は詳しく記載
鉛の取り扱いの業務~別表第4に具体的な業務について工程名まで入れて詳しく記載
四アルキル鉛等業務~「四アルキル鉛が入っているドラム缶等の容器を取り扱う業務」など別表5に業務が詳しく記載
有機溶剤取り扱い業務~エチルアルコール等の物質名は別表6の2、隧道、暗きょ又はマンホール内部等の具体的に使用する場所は、有機溶剤中毒予防規則1条2項に詳しく記載、有機溶剤業務の定義は、同予防規則1項5号。

 
 6か月に1回の特定業務従事者の健康診断とは、放射線や鉛等の共通の要素を含んだ業務も見受けられますが、また違った人体に影響のある業務が並んでいます。

 
 この有害業務については、別表等を引用してありますので、そのまま詳しく書けば膨大な量になりますので、有害業務の概要と具体的に記してある別表などの番号を示してあります。ここでは、どんなものがあるのかを把握してもらえばいいと思って紹介しております。

 
 検査項目や検査の頻度については、鉛中毒予防規則、四アルキル鉛中毒予防規則 特定化学物質障害予防規則(別表第3に業務名と検査項目、業務名ごとに検査頻度の1年又は6か月に1回の区分)、石綿障害予防規則、電離放射線障害防止規則、有機溶剤中毒予防規則の鉛とか4アルキル鉛、石綿とか特定の名前の付いた、それぞれの規則に詳しくあげられています。

 
 検査頻度については、一般的に言って、四アルキル鉛が3が月に1回と短く、後はほとんどが6か月に1回、鉛業務等が一部1年に1回となっております。4アルキル鉛の健康診断の間隔が短いということは、それだけ短期間に中毒になる可能性が高いということなのでしょうか。

 前述の政令で定める有害業務の範囲や検査項目・検査頻度については、実際に現場で作業にあたっていらしゃる人のうち、行っている業務が関係のあると思われる方で、まだ確かめていない方は、是非その部分をひもといて見てください。その業務内容が具体的にどの範囲か、どのような健康診断の項目をすればいいのかが具体的に示してあります。前回説明の6か月の1回の特定業務従事者の健康診断とは違って、本当にどの作業かどの工程なのかが分かるように具体的に記載されています。この条文を書いた方の力の入れようが分かります。

 
 なお、6か月に一回の特定業務従事者の健診もこの有害業務の特殊健康診断もともに、健診を実施しなかった場合の罰則は、50万円以下の罰金になっています。 (労働安全衛生法66条)




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健康診断、6か月に1回必要な特定業務従事者とは?

2011-08-03 05:39:02 | 社会保険労務士
 就業規則~健康診断のその2~について

 
 健康診断のうち、深夜業務等の特定業務従事者の健康診断は、1年でなく6か月以内ごとに1回づつ行わなければならないことは、前回説明したところです。それでは、その業務とは、深夜業務の他に何があるのでしょうか。次のとおりとなっています。

 
 1 多量の高熱物体を取り扱う業務及び著しく暑熱な場所における業務
 2 多量の低温物体を取り扱う業務及び著しく寒冷な場所における業務
 3 ラジウム放射線、エックス線その他の有害放射線にさらされる業務
 4 土石、獣毛等のじんあい又は粉末を著しく飛散する場所における業務
 5 異常気圧下における業務
 6 削岩機、鋲打機等の使用によって身体に著しい振動を与える業務
 7 重量物の取扱い等重激な業務
 8 ボイラー製造等強烈な騒音を発する場所における業務
 9 坑内労働
 10 深夜業務を含む業務
 11 水銀、砒素、黄りん、フッ化水素酸、塩酸、硝酸、硫酸、青酸、カ性アルカリ、石炭酸その他これらに準ずる有害物を取り扱う業務
 12 鉛、水銀、クロム、砒素、黄燐、フッ化水素、塩素、塩酸、硝酸、亜硫酸、硫酸、一酸化炭素、二酸化炭素、青酸、ベンゼン、アニリンその他これらに準ずる有害物のガス、蒸気又は粉じんを飛散する場所における業務
 13 病原体によって汚染のおそれが著しい業務
 14 その他厚生労働大臣が定める業務

 
 となっています。(則13条1項2号)

 
 それぞれの仕事場にいらしゃる皆さんは、ああ、あれかと思われる方もいらしゃるかもしれませんが、全く関係のない職場にいらっしゃる方は、何のことと首をかしげる方もいらしゃるかもしれませんね。

 私が思い浮かべるのは、身体に著しい振動を与える業務というのがありますが、山林伐採に使うチェーンソーやコンクリートを砕くときに用いる削岩機を使用する業務があります。これは、振動を身体に与えるため、長年使用しているといわゆる職業病になる可能性があります。 

 
 これらの業務は、1年に1回の一般の定期検診と同じ項目ですが、6か月以内に1回実施しなければなりません。

 この特定業務従事者の健康診断と次回に紹介する有害な業務従事者の「特殊健康診断」は、別です。有害業務の特殊健康診断は、健康診断の項目も違ったのをしなければなりませんし、頻度も3か月以内に1回というのもあります。



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健康診断を受けない社員にどう会社は対応すべきか?

2011-08-01 04:39:31 | 社会保険労務士
就業規則~<健康診断編>~について

誰もが一目を置く、ある部門でのエキスパートがいました。酒が好きというよりは、しゃれた店で飲むのが好きといった人でした。肝臓等の内臓が弱っていたわけではなかったと思いますが、健康診断になると、その日は休まれる方でした。私が勤務し始めの頃でしたから、もう40年近くなる昔の話です。今では、健康診断となると、人事課も最重要項目に位置付けていますし、従業員の意識も向上して来ていますので、昔ほどではなくなってきています。

 
 しかし、そういう輩がやはりいないとも限りません。単に面倒くさいからとか、自分は健康に自信があるからとの理由があるかもしれませんが・・・。そういう場合には、事業者はどう対応すれば良いのでしょうか。

 事業者にも労働者にも、健康診断を受けさせる、あるいは受ける義務を労働安全衛生法(以下、「安衛法」と略す。また同規則を「安衛則」と略します。)ではうたっていますが、もし実施しなかった場合に、罰則(50万円以下の罰金)の適用を受けるのは事業者のみです。しかも、労働契約法5条では、使用者に安全配慮義務を課しています。労働させる場合は、「その生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮」をしなければなりません。そのため職員に故意または重大な過失があることが明らかな場合を除き、使用者は損害賠償の責任をのがれることはできません。(民法415条)、健康診断を受診させないことは、これにあたると考えられます。事業者のみに罰則、安全配慮を求める不公平な法律だとの声も聞こえてきそうですが、労働者を使用しながら、事業を行っている事業者には、それなりの社会的責任があると考えねばなりません。

 さて、従業員が何らかの理由により、受診しない場合は、どうするか。就業規則に受診しない場合は、懲戒の対象になることを明記する方法があります、これが即、そのまま懲戒処分になるというわけではなくて、会社としてそれなりの姿勢を見せることが必要です。いわば、健康診断を受けないことが、「軽い」ものではなく、もし受けていれば、あれだけ長期の休みにならなかったのに、とか、あるいは、不幸にして死亡してしまった場合は、会社に多大な迷惑をかけてしまうということを、就業規則で認識させ、健康診断を重要視していることを示すべきです。従業員は、自分の体の問題だけではなく、労働契約を結んで働いている以上は、ちゃんとした労働をしなければならないのです。

 また、会社の健康診断を規定した就業規則を見ますと、前お話ししたかもしれませんが、一年に一回の定期検診(安衛法66条1項、安衛則44条1項)しか規定していないものがあります。一般の昼間に普通に働いている労働者のみの就業規則には、この規定でOKですが、看護婦さんとか放射線技師といるようなところでは、問題です。深夜勤務をしたり、X線関係の機械を常に扱っています。
 4週間に1回勤務するような深夜勤務の場合は、定期の健康診断は6月に1回必要(安衛則45条1項)ですし、放射線技師の場合は、一般の健康診断とは、別途の項目が(安衛法66条)必要になってきます。
 これらの従業員がいる場合は、就業規則も1年に一回の健康診断だけでは、不十分です。

 これらの、1、健康診断を受けない従業員、2、6か月に一回の深夜業務従事者等への「特定業務従事者の健康診断」とX線関係等の「有害な業務従事者」へ「特殊健康診断」 の対応を規定したモデル条文を見つけましたので、ここに紹介します。
 前に引用させていただいた、御社の「就業規則」ここが問題です!(北村省吾、桑原和弘共著、実務教育出版)からの「この規定なら安心」というモデル条文です。

 (北村・桑原先生何回も引用させていただきごめんなさい。北村先生には、CD講座でお世話になり、おかげさまで社労士受験に合格することができました。ありがとうございました。合格してからも実務についても、いろんなところの著書でお目にかかっております。まことにありがとうございます。)

 なお、モデル条文の2項の予防接種については、私は、病院に勤務していた折、B型肝炎の抗体検査をしたのち、同肝炎の予防接種をした経験を持っております。


第○条<健康診断>
1 会社は、社員に対し入社の際及び毎年1回(深夜労働その他労働安全衛生規則第13条第1項第2号で定める業務に従事する者については、6か月に1回)、定期に健康診断を行う。
2 前項の健康診断の他、法令で定められた有害業務に従事する社員に対しては、特別の項目についての健康診断を行う。また、必要のある場合には、社内全員または一部に対して臨時に健康診断を行い、あるいは予防接種を行うことがある。
3 社員は、正当な理由なく前各各項の健康診断及び前項の予防接種を拒むことはできない。
4 会社が行う健康診断を、特段の理由なく受診しない社員に対しては懲戒処分の対象とする。

 

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