元・還暦社労士の「ぼちぼち日記」

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労基法16条(労働契約不履行の損害賠償予定・違約金の禁止)は民法420条と対比すれば分かりやすい

2017-02-11 09:44:56 | 社会保険労務士
 民法では契約自由の原則により、債務不履行につき損害賠償額の予定するのみならず裁判所はその額の増減はできない(民法420条)

 労働基準法においては、労働者等の労働契約の不履行により、例えば労働者が使用者の指示どおり行わなくて使用者に損害を与えた場合などにあっても、違約金や損害賠償額予定をすることを禁止している。これは、労働者がこれらの違約金や損害賠償額を支払わされることを恐れて、労働関係の継続を強いられることなどを防止するためである。

 労働基準法16条
  使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。

 この条文は、民法との対比で考えると分かりやすい。
 民法420条
  1、当事者は、債務の不履行について損害賠償の額を予定することができる。この場合において、裁判所はその額を増減することができない。
 ・・・・・・・・・・
  3、違約金は、賠償額の予定と推定する。
  
 まずこの民法420条1項であるが、債務の不履行について、賠償すべき額をあらかじめ定め、実際発生した額がいくらかを問わず、予め定めた額によって支払わせることができるという規定である。これは損害額の証明が容易でないから、予めその額を定めるということであるが、契約自由の原則からお互いの契約であればそれもありとしたものである。しかも、裁判所の判断をもってしても、その額を増減してはならないとしているが、これは契約自由の原則を貫くとともに仮に増減を許すとすれば、結局のところ実際の損害額を算定する必要に迫られるからとしている。また、3項は、違約金は、賠償額の予定と推定するとしている。

 しかし、労働契約においては、この契約不履行に対して、損害賠償の予定も違約金も定めてはならないとした。かって、労働関係において労働者の足止め策に利用されたので、これら身分的拘束力を伴うこれらのものを、労働契約(=民法の特別法)では禁止したものである。労働契約では、資本関係において弱い労働者の保護を図るため、これらの禁止は大きな意義をもつものであるし、形を変えてこの条文の重要性が新たに見直されている。(⇒労働者の海外研修や留学の費用を負担し、一定期間勤務することを条件として、この期間勤務しない場合は返還を求めるなどが、この違約金に該当するかが争われている。)

 なお、労働基準法16条の後半のくだりにおいて、単に「契約してはならない」とあるが、その禁止の対象を「労働契約」に限定していないことから、契約の相手方は必ずしも労働者とは限らず、親権者又は身元保証人が違約金等を負担する契約や、労働者の負担する違約金等を保証する契約等も禁止されている。

 参考 人事総務検定2級テキスト LEC東京リーガルマインド
    口語民法 山川一陽他共著 自由国民社
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