松山櫨(はぜ)復活奮闘日記

失われてしまった松山櫨の景観を復活させようと奮闘していく日々の記録。

認知症予防に芯づくり

2014-08-27 07:41:17 | 和ろうそく芯ものがたり
就労支援施設・藍カフェを紹介してくれたのは、くるめ起業会で知り合った「くるめ後見パートナー」深町哲也さんです。

「くるめ後見パートナー」とは認知症になったの方のための任意後見契約に基づき、財産管理や事務の支援をするサービスですが、最も力をいれているのが認知症予防講座です。

今の日本では認知症予備軍800万人!
認知症になって症状が進んでからでは遅すぎることがいっぱいありますが、認知症は予防をすることができます。

認知症予防に必要な要素とされるのは4つ。

1,野菜、魚、果物を中心とした食生活
2,一日30分以上の運動
3,早寝早起き、酒・タバコを控える等の生活習慣
4,絵を描いたり編み物等、頭と手先を使う

この4番、芯作り作業にぴったりです。

認知症予防のために、作業療法の一環として芯作りを行えば、芯の安定供給→和ろうそくの安定供給と販売につながっていきます。

今は、ほとんど善意と熱意で有志3人が続けているものの、いろんな事情で忙しかったりして、芯の製作が追いつかない場合がたびたびあり、苦慮していました。

和ろうそくを作って販売し、広めること。それは櫨の景観を守ることに繋がります。

まだまだ道は遠いですが、いろんな方の協力と支援のおかげで、今日も一日、前に進んでいます。

就労支援施設・藍カフェへ その2

2014-08-23 06:34:39 | 和ろうそく芯ものがたり
今回、障がい者の方の作業に芯作りはどうかと紹介され、就労支援施設・藍カフェを訪れました。
芯作りは家の中でやる作業であり、時間にとらわれずマイペースに続けられる点がメリットです。

とはいうものの、人間は十人十色。
向き・不向きもありますから、実際に試してもらうことが必要です。

私は芯作りの作業道具一式を持っていきました。

藍カフェでは、耳が聞こえない高田さんを紹介され、芯作りのやり方は、紙に文字で書いたり、パソコンの画面を通して説明しました。高田さんはカンの良い方で、唇の動きで理解することもありました。

一緒に芯巻き作業をしている様子です。


とても器用な方で、私の指先を熱心に見ているうちに、コツをすぐに飲み込んでいきました。
実際、私自身がやり始めた時と比べたら、ずっと早く上手にできそうです。

芯引きと芯巻き。
2つの作業用の道具一式を渡して、しばらく練習してもらうことになりました。
二週間後にできた芯を評価して、うまく続けられそうだったら、いよいよ本格運転です。

就労支援施設・藍カフェへ その1

2014-08-22 09:47:18 | 和ろうそく芯ものがたり
久留米市にある就労支援施設・藍カフェに行ってきました。
かわいい外観です。
建物自体はかなり古そうですが、中に入ると、壁にはこんなアートが。


そして入り口には


ここで、障がい者の方たちがいろんな作業ををしていらっしゃいます。

ここの方たちに、和ろうそくの芯づくりをお願いすることにしました。
芯づくりはちょっとしたコツと技術がいりますが、基本的に単純作業だし、なんといってもマイペースで続けられます。

作業として、気に入っていただけるといいんですが。


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芯づくり、続けること

2014-08-19 07:49:28 | 和ろうそく芯ものがたり
画像は和ろうそく用の芯。
芯作り職人の吉牟田さんが作ってくれたばかりの芯です。

日本独特の和ろうそくの美しい灯りを支える芯になります。

この作業はちょっとしたコツと技術がいりますが、作業賃金はほんのわずか。
たまに「よくそんな、お金にもならんことをするね。」と、やや憐れみに近い表情の目で言われることもあります。

確かにこの作業を「労働」と考えると、あまりにも単価が低すぎてやってられません。
以前は、仕事として頼むことすら、私としては申し訳ない気持ちでなかなか言い出すこともできませんでした。

しかし以前、同じ芯巻き職人の堀さん、吉牟田さんから言われました。

「労働して単にお金をもらうことより、「やりがい」のあることをする方が大事」

もちろん、お金は続けていくために少しは必要ですが、人の役に立つことをする喜び。
それは何事にも代えがたいことだと言います。

私も櫨に関わっている根本は、自分自身に活動の中にやりがいを感じているからです。

活動を始めて7年。
お金のニオイを嗅ぎつける人達が、ふと寄ってきては首を振りながら素早く去っていく中で、本当に志の近しい仲間が、緩く繋がりながら応援してくれています。

「お金はほんの少し。でも人に喜んでもらいたい。」

和ろうそくの芯作りは、そんな思いがこもっています。


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灯芯草を引く_準備

2010-07-22 23:03:27 | 和ろうそく芯ものがたり
いよいよ明日から福岡三越で本格実演(?!)です。

灯芯草の引き台が出来て、灯芯草もあります。あとは引いて髄を出すだけ。

さっそく準備に取りかかってみましょう。

といっても乾燥した灯芯草は、そのままでは引くことはできません。しっかりと内部まで水を染みこませることで外側と内側を分離させやすくします。

灯芯草の長さは1メートル前後あり、少々扱いにくいので、半分に切って使うことにします。

50cmぐらいだと台所の流しに収まります。あとは水を流して十分に湿らせます。


しかしこれだけでは表面が濡れただけ。内部まで染みこんでいません。

濡れタオルでくるんでやります。


それを黒いビニール袋に包んで準備も万端です。

内部まで染みこむ時間ですが、今は夏場なので3~4時間あれば大丈夫なようです。
湿らす時間は、早すぎず、遅すぎずって感じ。

これで準備はOKです。

いよいよ髄の引き出しです。


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一歩を踏み出すこと

2010-07-14 23:01:34 | 和ろうそく芯ものがたり
昨日からずっと大雨が続いています。
明日、KBCでTV放映されると予告してましたが、この大雨のニュースで延期になったそうです。
ま、特に急ぐネタではないし。金曜か来週になりそうです。

さて、今日は大與さんに手がけしてもらうため、最後の「正徳芯」を送りました。

これからどうしよう?

ふと、そう思った時、以前、正徳さんが言われたことを思い出しました。

「あなたも巻けばいいじゃない。」

まさか!不器用な私なんか、どう考えても正徳さんには及ばないし、それに他のことをやってるし忙しいし…。そりゃ体験ぐらいだったら、真似事みたいにできるかもしれないけど、本格的にするなんて、とてもとてもムリですよ。

いろいろと言いつのって、芯巻きをしようとしなかった私ですが、ことここに至って、なぜ私は今まで芯巻きをしようとしなかったのを考えるハメになりました。

理由はいくらでも思いつけます。しかしどんなにたくさん理由があっても、今となってはそれが全て言い訳に思えてなりません。

正徳芯がいつか終わるってのは、ずっと前からわかっていたはずなのに。

正徳さんからはこうも言われたことがありました。

「芯巻きは簡単よ。最初のうちは難しいけど、少し続けて練習すれば巻けるようになる。」

「あなた、もう何回も話したんだから、やり方はわかるでしょう?まだ巻かないの?」

思い返すと、私はずっと背中を押されていたのでした。

今までの多くの方との出会いのおかげで、私の目の前には芯を作る材料が揃っています。

あとはやるだけ。一歩を踏み出すだけです。

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さようなら、正徳芯

2010-07-13 23:00:03 | 和ろうそく芯ものがたり
先月、正徳さんから「病気なので、もう芯は巻かない。」と言われました。

正徳さんは79才。

少し前まで結構お元気だったので、まだまだしばらく芯巻きが続けられるのではないかと楽観的に構えていた私ですが、一ヶ月経った今、病状も芳しくなく芯も巻ける状態ではないとのことです。

認めたくなかった事がついに起きてしまいました。

時間は誰にでも平等に流れているものです。人は誰でも年をとるし、今まで出来ていたことが出来なくなる日が来る。アタマではそんな当たり前の事を理解していても、感情では納得がいきません。

あの最高の和ろうそくがなくなってしまう。

そう考えるだけで、私は暗い気持ちになりました。

思えば三年前、あまりにきれいに巻かれた芯をはじめて見た時、それが名もなき内職仕事として扱われ、無名のまま、誰からも忘れ去られようとしていることに、憤りのようなものを感じたものです。

和ろうそくは櫨蝋、手がけ製法とともに、芯が重要な役割を果たしています。

あの和ろうそく独特の揺らめきは、芯がなくてはならないからです。

だから、皆さんに芯の重要性を知ってもらいたかったから、芯を主役の和ろうそくを作りました。

正徳さんが巻いた芯だから「あさくら正徳芯」、その芯を使った和ろうそくを「正徳芯和ろうそく」。

おそらく、「芯」が主役になった和ろうそくは史上初だと思います。

その正徳芯がなくなる。

すなわちそれは「正徳芯和ろうそく」がなくなる事を意味します。

「正徳芯」という名前を継いでいただける方がいないかと、一ヶ月間探してきましたが、ついに断念せざるをえませんでした。

「正徳芯和ろうそく」は在庫がなくなり次第、販売終了します。

本当に残念です。


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芯引き台

2010-07-11 17:29:43 | 和ろうそく芯ものがたり
これが灯芯草の中から髄を引き出すための芯引き台です。

朝倉市では既に芯を引く人がいなくなっており、芯引き台の現物も失われていたために、奈良県安堵町歴史民俗資料館の協力を得て引き台を複製しました。

朝倉方式では丸太に刃を上に向けて刺すやり方でしたが、奈良ではこのような芯引き台が伝わっています。

芯を引く人は台の上に座布団を敷いて座ります。昔は正座してやってたんでしょうね。要するに自分の体の重みで引き台を固定するわけです。私は椅子に引き台を置いて、その上に座布団を敷いてから座って作業しています。

刃の先端が尖っているので少々扱いに注意が必要です。

おおざっぱな私は何度も手首が触れて小さな切り傷だらけになりました。

しかし刃の側面はむしろ柔らいカーブになっていて、中の髄を切り刻まないようにしています。

安堵町に残る芯引き台は見れば見るほど機能的にできていると思います。人間工学的にもよく考えられてるんじゃないでしょうか。

複製を作るにあたっては、今の時代にこういうの作れる人がいるだろうかと不安がありました。
台はともかく、刃は非常に特殊な加工が必要です。

きっと「なんですか、これ?」と妙な目で見られて説明するのに一苦労するだろうなぁと、気が重いながらも刃の加工をしてくれる人を探してみると、意外にも地元・田主丸町に住んでいる方が得意ということで頼むことにしました。

偶然でしたが、なんとその方の隣の家はろうそく職人が住んでいて、芯引きも見たことがあると言われていました。おかげで、用途のイメージがきちんと理解できたため、刃を芯引きしやすいよう見事に加工していただきました。

あまりの加工の素晴らしい刃を見て、私は息を呑みました。

「昔、隣で手がけでろうそくを作りよったよ。よく覚えとる。」とその方は言われました。

伝え聞くところによると、そのろうそく職人の家は、昔の立派な職人屋敷のようで風情があったということです。

もちろん、その家は今はもう跡形もありません。

加工していただいた方は思わぬところから当時の和ろうそく職人の風景を思いだして、懐かしさがあふれてきたようでした。

私はこの刃の加工の出来映えに、目に見えぬ応援が込められているような気がしました。


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今度は雑誌の取材

2009-10-15 23:49:37 | 和ろうそく芯ものがたり
先日、雑誌の取材を受けました。

生協の雑誌「クリム」だそうです。なんと今回は取材記者に加えてカメラマンが来ました。

大きなレフ板を部屋に設置して、正徳さんの作業風景やろうそくに火を灯したりと、かなり本格的な撮影になりました。

私としても感無量。芯巻きを通じて和ろうそくや櫨にまで言及できるわけだし、きれいな写真として後世の記録に残ると思うと、活動してきて良かったなという思いでいっぱいです。

最近は芯巻きをしたいという方もチラホラ現れていて、いずれ芯巻き教室が実現できるかもしれません。そうなると正徳さんの後継者育成にようやく進めます。

ただ芯巻きの場合、問題なのは和蝋燭の需要の問題です。芯巻きをする人が増えても、和ろうそくの需要が伸びなければムダになってしまいます。芯巻きの技術を伝えていくためには、もっともっと和ろうそくの良さを知ってもらうしかないわけです。

櫨の活動をするようになって、どんな事も同時に動かないといけないことに気づきました。芯巻きの後継者育成、和蝋燭の需要の掘り起こし、そのためのパッケージデザイン、販売経路の確保、イベントなどなど。

車輪をいくつも同時に回さないと前に進まないように、活動は多角的な面を同時に動かさないと前に進んでいきません。

「一元化されたコンセプトで戦略的に動かなければならない」

最近、とある人から聞いた言葉です。今までは単純に製品を作って売るだけで精一杯でしたが、今後は新たな展開が必要になってくるのかもしれません。

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正徳さん、取材です

2009-07-28 15:46:07 | 和ろうそく芯ものがたり
今日は西日本新聞社文化部のMさんが、あさくら正徳芯の取材に来られました。

和ろうそくと芯について、詳しくお話を聞きたいとのことで、正徳さんと芯との関わりや、正徳さんの芯を使った和ろうそく作りの経緯やらを語っていきました。

ふと思い出したのが、二年前。

正徳さんと出会った頃、私は正徳さんや芯の話を何かに残さなくちゃいけないという思いから、いろんな新聞社に取材をしてほしいと電話したことがあります。

そしたら、とある人からこう言われました。

「おっしゃる事はわかります。…でも、ろうそくの芯っていったら、ほとんど見えないですよね。」

見えない部分だから、わかりにくい。だから記事にもしにくいといった口調で、結局取材の話もなく、当然記事にもなりませんでした。

今回のM記者は和ろうそくに対し非常に興味を示してくれた上、芯の大切さを深く理解してくれました。

和ろうそくの芯は、確かに外からはあまり目立たないし、芯巻き作業も年寄りや女性の内職扱いで、さして重要ではないと見られてきました。しかし、よくみるとそこには日本人の持つ美意識が込められています。

芯をクローズアップした記事が活字になることで、この小さくとも大切な日本の文化が伝わるといいなと願っています。

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30号の和ろうそく完成

2009-05-09 17:14:45 | 和ろうそく芯ものがたり
30号の和ろうそくが完成しました。すごいボリュームです。
なんかもう、蝋がたっぷりって感じ。重さもどっしりとしています。比較のために2号ろうそくを横に置いています。

芯の切り口あたりをアップで見てみましょう


年輪というか、塗り輪がよりはっきりとわかりますね。美しく仕上げられています。

この30号は家庭の仏壇では収まりきれない大きさなので、寺院用です。芯の大きさからいって非常に大きな炎になるでしょうね。おそらく何らかの法要の時に灯していただけることになるでしょうが、その炎、いつかぜひ見てみたいもんです。

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30号のろうそくの芯ができた

2009-04-27 00:01:39 | 和ろうそく芯ものがたり
30号の芯ができました。

見ての通り、いつもの2号ろうそくの芯に比べると、随分でかくなりました。

「これはさすがに難しかったわ。やり直した芯もあるわよ。」と正徳さん。

芯の上部は二重巻きをしていますが、スムーズに下へ降りて一重と重なっているあたり、さすがの名人芸です。見れば見るほど迫力のある芯です。規格どおり、きっちりサイズを合わせて巻いてくれたおかげで、並べてみても太さが揃っています。

これに蝋を手がけすると、どんなろうそくができてくるんでしょう?

あとは大與さんにこの芯を送ってできあがりを楽しみに待つことにします。

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30号のろうそく

2009-04-26 07:53:12 | 和ろうそく芯ものがたり
30号のろうそくを作って欲しいとの依頼がありました。
30号…。いつも正徳芯和ろうそくの5本入りで販売しているろうそくは2号ですから、非常に大きいろうそくを作ることになります。用途は寺に奉納するとのことでした。

さっそく正徳さんに相談して、30号のろうそく用芯を依頼しました。
「30号というと、丈はどのくらい?」と正徳さん。
「ええっと、23cm…みたいです。」と私。
「センチじゃなくって、寸で言うのよ。全部寸で合わせてるんだから。」
「ええっと、(3.3で割れば…)7寸です!7寸!」

「芯巻き棒があるかしら。6.5寸ならこないだ巻いてたけど…。」
「それでいいんじゃないですか?」
「だめよ。もし芯が細すぎたら、余計に蝋を塗らなきゃいけないし、炎も違ってくるでしょう。」

正直、長ささえ合わせてたら、適当にできるんじゃないかという安直な考えが頭をかすめていきましたが、確かに言われる通り、30号なのに20号程度のろうそくができてしまってはいけません。しかも、芯が小さすぎると、蝋だれをおこす危険性もあります。手がけをしてもらっている大與さんに、あわてて聞くことにしました。

「30号の芯の太さを教えて下さい。」
「一番太いところで13mm。一番下の穴の直径は10mmです。」

芯の穴が10mmもあるろうそくなんて、滅多に見ることもできません。どんなろうそくができるんでしょう?

正徳さんちには太さが1cmの芯巻きの棒はなかったので、すぐに近くの商店街の手芸屋さんへ急行しました。甘木の商店街はほとんどシャッターが閉まっていて、昼間でもちょっと暗い感じなんですが、手芸屋さんは開いています。中では年配のおばあちゃんたちが数人集まって帽子を作っていました。

正徳さんと私は10mmの太さの編み棒を見つけました。

編み棒の形をチェックしながら、
「ふ~ん。これならいいやろ。でもこの編み棒のラインだと芯を巻いた後、棒を引き出す時にやりにくいからサンドペーパーで削らないと…。」
側で聞いていた店員さん、
「何?削る?だめよ、削っちゃだめよ!コーティングしてあるんだから、毛糸が引っかかるでしょ!」
正徳さん
「??。これはね、編み物するんじゃなくて、ろうそくの芯を巻くためにいるのよ。」
店員さん
「ああ。ろうそくの芯ね。わかったわぁ。」

私は内心、ろうそくの芯巻きと言ったら、店員さんがすぐに納得していたことに驚きました。さすがは芯巻きの町、甘木?

帰り道、正徳さんが懐かしそうに言っていました。
「昔はね、編み棒がなかったんだから、大きい芯巻きの棒がいる時は、竹を削って作ってたのよ。父がいつもそうしてた。」

昔は何かを作るための道具は全て手作りです。今はハンドメイドのお店で調達。便利になったといえば便利なんだけど、個人のスキルとしては、随分衰えてるんだよなぁと複雑な思いがしました。といって、私が竹を削って芯巻きの棒を作ってたら、1本のろうそくを作るのに半年ぐらいかかってしまいそうだし…。

芯巻き棒を調達したので、後は紙です。書道用の半紙で7寸。幅を芯巻き棒に合わせて切ってOKです。

「じゃあ、棒を調整してから巻いておくわね。できたら連絡するから。」と正徳さん。

さてさて、今までの中で一番大きいろうそくの芯です。どんな芯ができあがるのか楽しみになってきました。

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ばさら日本史

2009-02-23 21:20:06 | 和ろうそく芯ものがたり
やっぱり日本にはスゴい先生がいるんですね。
日本史の海内先生からメールをいただき、「櫨蝋から和ろうそくを作る。」という話を聞いた時、こりゃまたもや新たな風雅人が現れたなぁと思って、HPを拝見させていただきました。

ばさら日本史というページ。

な、なんと銅鏡とか縄文編布とか正倉院宝物・漆胡瓶まで!実際に作ってらっしゃるんです。も、もう、どっひゃ~~って感じ。「講義」とか「暗記」中心の歴史学習ではなく、歴史モノを作ることで、より生きた日本史を勉強するという実践の日本史なんだそうですよ。ああ、私も埼玉県に生まれて海内先生に日本史を習いたかったなぁ。そうすれば日本史大好きになっただろうに。

海内先生が今までに挑戦したモノ作り歴史グッズは30近く。いずれも興味深いものばかりです。この最新の教材として「はぜの実からロウをとる」というテーマと、和ろうそくを作るというテーマで実践されています。

みようみまねで芯巻きまで挑戦するとは。灯芯草の髄を止めておくのには真綿が良いそうですと伝えたら、繭玉を使っているなんて、スゴすぎる。今までの実践の蓄積がより高度なモノ作りへ進化しているわけです。幅広く勉強することが、より一つの道を深めていくことを目の当たりにして、私も改めて勉強になりました。

さて、今まで正徳さんの芯巻き画像は詳しく載せていませんでしたが、ここで初公開することにします。私も海内先生に刺激を受けました。芯巻きの詳細な部分をアップ写真で紹介しますので、今後芯巻きをやってみたい方はぜひ参考にしてください。

どうぞ!
1、和紙(半紙でも代用できます)を編み棒にくるりと巻き付けます。先端は編み棒通りにひねって閉じておくのがミソ


2、灯芯草の髄を数本置いて、1の先端を上に置きます。


3、髄の端っこの部分を人差し指で織り込んでいます。


4,親指できっちり巻いていきます。押しつぶさず緩すぎず。


5,長さが足りなくなったら継ぎ足しましょう。


作業工程は単純ですが、慣れるまでが難しい。しかし一度慣れてしまうとテレビを見ながらでもやれるので、案外楽しいんじゃないかなと思います。正徳さんも芯巻きは大好きと言ってました。今、私は簡単なカップキャンドルをみんなと一緒に作りながら、櫨の話をしていますが、いずれは芯巻き工程も含めた体験教室をやっていきたいですね。

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今年の灯芯草

2008-07-16 23:43:24 | 和ろうそく芯ものがたり
筑後市で灯芯草を生産している井口さんから連絡が入りました。
今年の灯芯草を収穫したとのことで、写真もいただきました。
ごらんの通り、青々とした立派な灯芯草です。

灯芯草については以前のエントリで書いているように、
栽培は平安時代にまで遡り、名前のとおり燈芯として使われてきました。
畳イグサとして使われるコヒゲは、この灯芯草を品種改良して硬く太くなったものです。
しかし「改良」というとまるで良くなったかのように聞こえますが、
こちらを見てください。
見かけは硬くて太くて立派な畳になるコヒゲですが、海面組織自体は灯芯草の方が優れているのです。

品種改良したからといって、良くなるわけでもないというのは、
例えるならば、親子の大工がいたとして、
子供が親の年齢になって親との技術を比較した場合に似ています。
どちらが優れているかを比べても、単純に甲乙つけるのは難しいでしょう。
どちらも一長一短の個性やクセがあるからです。

これは櫨の品種「松山櫨」についても言うことができます。
伊吉櫨は内山伊吉という人が松山櫨を品種改良して作ったものですが、
質が向上したのかというと、実はそうでもないのです。
色合いや粘りなどの個性が違うというだけで、単純に比較して質が上がったと断じることはできません。
伊吉櫨は、松山櫨から生まれた別の個性の品種ととらえなければなりません。

さらに話は続くんですが、竹弓についても同じ事がいえます。
最近は竹弓の中にカーボンを入れたものが主流になっているそうです。
こちらを見てください。
竹弓を強固にして、形を整えようとした挙げ句、
本来の竹の良さが半減した弓になりました。

こういったことは、まだまだ他にも言えることです。
昔は川の土手に多くの櫨や桜が植えられ、洪水から田畑を守ってきました。
ところが現在の川辺を見ると、味気ないコンクリの三面側溝になって、
櫨や桜は伐採され、川辺に生息していたメダカも消え、周辺の地下水にも影響を与えています。
これが「改良」なんでしょうか。

人間が苦労して技術改良したものが、
実際よく比較すると単純に「改良」にはなってないのだということを知ると
前進ばかりしていないで、たまには振り返る事も大切だなとつくづく思います。

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