松山櫨(はぜ)復活奮闘日記

失われてしまった松山櫨の景観を復活させようと奮闘していく日々の記録。

櫨の魅力展 2014

2014-09-29 08:10:27 | 今後の予定
10月から11月にかけて、「櫨の魅力展2014」を開催することにしました。

2008年の八女での櫨の灯り展、アクロス福岡での櫨の魅力展を経て、民藝工藝の館どいざきで毎年趣向を変えながら展示を行ってきましたが、ようやく少しずつ方向性が見えてきたような気がします。

今回は、いろんな偶然と出会いが重なって二個所で実現する運びになりました。

10月15~19日は愛媛県内子町の中芳我邸ゲストハウスで。
11月18~30日は福岡市の民藝工藝の館どいざきで。

四国での櫨の魅力展は初めて!
特に内子町は櫨蝋の町として観光地なので、櫨のもう一つの魅力である「櫨染」の展示は楽しんでいただけるんじゃないかと思います。

こちらがちらしの裏側です。


10月15日から11月30日はクラウドファンディング「きびだんご」のプロジェクトに挑戦します。

支援していただくサポーターのために、一生懸命考えて作って来たセレクトアイテムを特典として提供します。
もちろん、先日から取り組んでいる石鹸のサンプルも!

プロジェクトは徐々に報告していきますので、どうぞこれからもお楽しみに!



第三回 櫨フォーラム報告

2014-09-28 09:15:28 | 復活奮闘日記
9月20日、朝倉市フレアス甘木にて「第三回櫨フォーラム」が開催されました。

画像は荒木製蝋合資会社の荒木眞治社長。
会場に櫨の枝を持参してこられました。櫨の実のつき方を解説しながら、どうやって櫨の実をもぐのかを実際に説明していただきました。

櫨の実を枝からチョキンと切ってしまうと、その枝から実は3年ぐらいならないこと。
実がついている時には、来年の芽の準備がもうできているからであること。
そういった実の採取についてあまりに何も知らず、ただ枝を切って実を採取する人が多くて困っていること。

基本的なことですが、櫨の実の採取は櫨蝋産業の根幹に関わることです。

また熊本廣文さん、朝倉市より植樹の報告がありました。

接ぎ木が成功しているかはあまり芳しくない内容でしたが、少なくとも答えを得られているというのは進歩です。

午前中は櫨蝋を使った石鹸作りWSでした。講師は(株)ツツミプランニングの河北龍志氏。


この日のWSではオリーブ油、パーム油、五島の椿油を使った石鹸を作りました。


製法は石鹸の基本であるコールドプロセスです。
石鹸といえど、良い原料ばかりを選んで作っていて、贅沢な石鹸になりました。

NPO法人あさくらの会では、「朝倉石鹸」として1200円で販売しています。

また、第三部では滋賀県から大與の手がけ和ろうそく職人大西明弘さんがお話をされました。
最近出回っている、怪しげな和ろうそく左と、櫨ろうそく右を比べています。


やたらと煙が出ている和ろうそくは、なにやらいろんな材料が混ぜられている様子。ちょっとパラフィン系の合成ろうそくのような燃え方です。
こういう質の悪い和ろうそくが身体にも環境にも悪く、和ろうそくの価値を貶めているとわかっていても、価格が安く大量生産できるので市場には出回っています。

本当の櫨の和ろうそくとの違いを、私たちももっと伝えていかねばならないと思いました。

最後に山口より花柳寿寛福さんがプロジェクタで、和ろうそくの世界の話を発表されました。

日本舞踊の花柳流からアプローチする和ろうそくは、和ろうそくをどう使うかという視点に立つと大変興味深いものがあります。

5年前、八女市明永寺で地元高校生と一緒に「八女のちょぼくれ」を作り上げました。
山口では地元の学生と一緒にイベントを行い、和蝋燭の輪が広がっています。

今回の櫨フォーラムは、櫨をテーマにいろんな世界の方が集まり、それぞれの立場から提案いただきました。
朝倉櫨フォーラムは最終回となりましたが、櫨フォーラムを通じて、いろんな地域の方たちと仲良く繋がったのは大変意義深いことだったと思います。

この櫨の灯りの輪が途切れないように、活動をつないでいかなくちゃと改めて思った一日でした。

「まいにちまいむ」に掲載されました

2014-09-19 22:15:26 | 復活奮闘日記
北九州で発行されている毎日新聞の「まいにちまいむ」に、先日中間市で行った和ろうそく作りの様子が掲載されました。

中間市では初めての櫨の体験教室だったせいか、皆さん興味しんしんでした。
また出張の機会をいただければ喜んで行きたいと思います。


今日から秋のまち旅受付開始

2014-09-17 07:13:19 | 会からのお知らせ
今日から秋のまち旅の受付開始です。

まち旅も、なんと今回で10回目!
最初はこうした体験観光プログラムのパッケージというものが初めてだったので戸惑うこともありましたが、今ではすっかり定着しました。

久留米の観光といえば、この「まち旅」ですね。

秋のまち旅の期間は10~11月まで。
久留米と近隣を部隊に、様々なプログラムを楽しむことができます。

そして当委員会からのプログラムはこれ!


櫨染(はじぞめ)です。
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櫨の木の芯材を使った「櫨染(はじぞめ)」は、古くから富と幸せをもたらす色として愛でられ、平安時代より天皇陛下の衣の色「黄櫨染」にも使われてきた色です。ちくご松山櫨復活委員会では、今回は無漂白・天然綿の首巻き(29 × 170)を櫨染し、希少な櫨のはちみつを味わうティータイムはいかがですか。
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天然綿の首巻きはkonoitoさん(うきは市)のです。

2014/11/09(日) 13:00~14:30
参加料金 4,300 円(ハーブティーセット付)

11月受付分になるので、9月24日12:00から予約開始になります。
もうしばらくお待ちください。

WEBで予約できます。こちらです。

予約電話はこちら。 0942-31-1730(久留米まち旅博覧会事務局)
※汚れてもいい服装で。

10月開催のプログラムもめじろおしです。
久留米ならではの心温まる旅にどうぞおいでください。

オフィシャルサイトはこちら。
オフィシャルブログはこちら。

オフィシャルブログには今までの様子がたくさん記事に投稿されています。

櫨の石鹸プロジェクト その8 石鹸マイスター

2014-09-15 09:19:54 | 櫨ものがたり
9月初旬、いよいよ最初のかけらをもとに、まるは油脂で櫨の石鹸の次なる試作が始まりました。

画像はまるは油脂で20年の経験がある石鹸マイスターが櫨蝋に水酸化ナトリウムを加えて、湯煎しながら鹸化反応をおこしているところです。

鹸化反応が落ち着いてきた頃、林社長と北尾さんが鍋をのぞき込んでいます。

この画像を見る限り、普通の石鹸の作り方なので、誰が作ってもなんの変哲もないように見えますが、実はここに至るまでが大変だったそうです。

石鹸マイスターに聞いてみました。
私「櫨蝋だけで鹸化させていくって、やはり大変だったんですか。」
石鹸マイスター「他の油脂と同じようなやり方でしていると、すぐにガチガチに固まってしまって。」

他の油だったらこうとか、そんな固定観念を頭からいったん全部外す必要があったと言います。

私「そんなに櫨蝋って他の油脂と違ってたんですか?」
マイスター「はい。全然違いましたね。」

20年の経験があっても、櫨蝋は予想外のシロモノだったそうです。
その櫨蝋の性格を見つけ出すまでが手探り状態でした。

戦中戦後に作られては消えていった悪質な石鹸は、こうした櫨の性格が理解されないままに作られていたからではないかと思われます。

私「見つけ出すための、何かヒントとかはあったんですか?」
マイスター「ずっと前に他の、ちょっと変わったある油脂で作った時の、自分の経験が1つだけ手がかりになりました。」

考えてみると、油脂の種類は動物性・植物性、世界中にいろんな油脂があるので、数えると軽く60を超えます。最近では手に入りにくい鯨油でも少量だけ実験として石鹸を作られたそうです。

林社長は言いました。
「いろんな石鹸を作ったからといって、それがすぐに利益には結びつかない。でもいつも似たような素材で作っていても、そこから進歩しない。外から依頼されたモノは、それが変わったものであればあるほど、次の石鹸に生かすことができるし、なにより勉強になるからね。」

石鹸マイスターは液体の様子を見ながら、しばらく攪拌した後、手袋を外して鍋の石鹸溶液を舐めました。

私がびっくりして息をのむと、林社長が味で石鹸の状態がわかるんだよ、と説明。

水酸化ナトリウムは劇物ですが、鹸化反応によって物質が変わります。その途中の状態をちょっとだけ舐めて確かめるのだそうです。

石鹸づくりの経験が浅いと、鹸化が終わってないままに舐めてしまうため、舌がビリビリと悲鳴をあげるそうで、その苦い経験を繰り返しながら成長していくのだとか。

マイスター「んん。まだもう少しかかりますね。」

時間をかけて鹸化させ、あとは熟成です。熟成が終わって乾燥させた後、この石鹸の匂いに合う特別な香りをつけます。

私「良い石鹸ができそうですか?」
マイスター「まだわかりません。皆目見当がつかない。」

そ、そりゃそうでした。

櫨の石鹸づくりはまだまだ一歩踏み出したばかりなのです。

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ただいま試作石鹸が熟成中なので、この石鹸プロジェクトの話もいったん小休止です。
今後の進展はどうなるでしょうね?

櫨蝋で一番良い石鹸を目指すプロジェクト、今後もどうぞお楽しみに!

櫨の石鹸プロジェクト
その1 櫨蝋の使い道 はこちら。
その2 石鹸と零戦 はこちら。
その3 酔狂な試み? はこちら
その4 汚名返上へ はこちら
その5 最初のかけら はこちら
その6 匂いを香りに はこちら
その7 「炭鉱」に込められた香り はこちら

櫨の石鹸プロジェクト その7 「炭鉱」に込められた香り

2014-09-15 07:28:40 | 櫨ものがたり
2013年10月、福岡産業デザインアワードの会場に北尾菜保子さんはいました。

炭鉱施設をまちづくりに生かす取組を続けている福岡県大牟田市の「大牟田・荒尾炭鉱のまちファンクラブ」が、地元の風景をイメージした「香りのサシェ(匂い袋)」を会場で展示していました。

北尾さんは先祖の実家が大牟田にあるそうで、同ファンクラブの立ち上げから関わってきた副理事長です。

「香りのサシェ」は北尾さんのプロデュースでした。

サシェは三種類。ペパーミントで爽やかな「有明海」、ラベンダーで花の名所をイメージした「三池山」。そして、私が入手したのは白檀を使って落ち着いた大人の香りに仕上げられた「炭鉱」です。

香りはよく記憶に刻みつけられると言います。
幼い時の母の匂い。路地裏の匂い。学校の理科室の匂い…。

私はふと、「炭鉱」と名付けられたサシェに、香り成分が取れるまで何十年もかかる白檀を使ったのは、なぜだろうと疑問を持ちました。ペパーミントとラベンダーは割と一般にも馴染みがある香りですが、わざわざ貴重な白檀をセレクトしているのは何かワケがありそうな気がしました。

三池炭鉱は福岡県大牟田市、熊本県荒尾市にまたがる日本最大の産出量を誇った炭鉱です。かつては20万人が働き、1997年廃坑となってから今では合計6万人の人々が去りました。

地下深く網目状に、遠く海の底まで続く坑道。激しい炭鉱労働、400人を超える死者を出した大爆発。労働争議。

近代化する日本を支えたまち、それが大牟田・荒尾のまちなのです。

私も随分昔、前職で炭鉱・鉱害の仕事に少し関わったことがあり、研修見学で炭鉱に入ったことがあります。

炭鉱の少し奥に入っただけで、どんどん蒸し暑くなってくる坑道の空気の匂いや、支える杭、白いカビ群など、それはもう何もかも圧倒され、息苦しくなるほど強い印象を持ちました。

大牟田・荒尾は炭鉱のまちです。廃墟となった社宅、さび付いた巨大な機械が、がらんとした道路から遠くに見えるものの、今ではそれらの施設はほとんど崩壊しつつあるとニュースで知りました。

北尾さんのプロデュースした「炭鉱」には、そうした人々の失われた時間と場所の記憶を、歴史を重ねてきた白檀の香りによって蘇らそうとしているのではないかと思い到った時、私は北尾さんの故郷に込める思いの強さを感じました。

入手して一年たった今でも、サシェは部屋に置いてますが、十分香りを楽しむことができます。

北尾さんは、最初は他の一般的なアロマセラピストと同様に、自身の肌のアレルギートラブルが原因でアロマケアに目覚めたそうですが、そこから先の探求の道のりは大変なものがあります。詳しくはこちら。

櫨の石鹸に一番ふさわしい香りをつけるための、強力な助っ人が見つかりました。

その8 石鹸マイスターにつづく


櫨の石鹸プロジェクト
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その2はこちら。
その3はこちら
その4はこちら
その5はこちら
その6はこちら

櫨の石鹸プロジェクト その6 臭いを香りに

2014-09-14 08:55:56 | 櫨ものがたり
櫨蝋を天日干しにして白蝋にしているところです。(荒木製蝋(合)敷地内)

櫨の実を搾っただけの生蝋を砕いて、こうして広げます。しばらく干してると白くなってきますが、日光に当たってない下側の部分は変化しないので、時々ひっくり返す必要があります。

この作業は二ヶ月間続き、かなり手間をかけて作られていきます。

ビニールハウスの中に入ると、むせそうになる程、白蝋独特の匂いがします。

白蝋の匂いは慣れるとなんでもないのですが、いろんな人に白蝋の匂いを嗅いでもらったら、9割が「臭い」と言われました。

櫨の石鹸は白蝋がメインで作るので、この白蝋の匂いをどうするかによって石鹸全体の印象が変わってくるでしょう。

私は香りについてちょっと調べてみました。すると面白いことがわかりました。

動物のフンの匂いの主成分である「インドール」は100%不快なフン臭。しかし0.001%アルコール溶液に希釈すると、香りにコクを与えてジャスミン、クチナシの独特の香りになるという不思議。

女性にとって最も魅力的な香水だとされているシャネルの香水にも、もちろん入っています。フンの臭いが。

良い香りというものは、いやな臭いを含まないとできないとは面白いものですね。

となると、白蝋の臭いは良い香りにつながる可能性があるわけです。

白蝋の臭いを理解した上で、良い香りを引き出してくれる人、セレクトして配合してくれる専門家が必要です。

アロマセラピストは女性起業家に多い職業ですが、本当にアロマに詳しい専門家となると、数はかなり限られてきます。

これから作る新しい櫨の石鹸のために、幾多のアロマセラピストから選ばないといけません。

そう思うと、自然に私の頭に浮かび上がってきた方がいます。

炭鉱の町にルーツを持つアロママイスター・北尾菜保子さんです。
http://www.nahokos.info


その7につづく

櫨の石鹸プロジェクト
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櫨の石鹸プロジェクト その5 最初のかけら

2014-09-13 09:16:22 | 櫨ものがたり
櫨蝋を天日で干して不純物を取り除き精製加工したものを、白蝋といいます。

昔はみやま市、柳川市には多くの白蝋製造者がいて、敷地にズラリと白蝋を干している風景があったそうです。付近を通りかかると、真っ白な白蝋が日の光に当たってキラキラと眩しいくらいやった、そう言われる方もいます。

今はそんな風景はありません。白蝋はわずかな敷地の中で天日干しをされています。

その白蝋をまるは油脂化学(株)の林社長に渡して一ヶ月ほどが経ちました。

その時点では補助金のことは頭になく、櫨の石鹸を目指して少しずつ試作をお願いしていこうという心づもりでした。

ある日、「できたよ、矢野さん」と言われて持ってこられたのが、小さな石鹸のかけら(画像)でした。

一目見ただけで、以前作っていた石鹸に近い物ができてることに驚きました。

「これ…、櫨蝋…だけですよね?」
「うん。櫨蝋100%。現場で苦労したみたいだよ。」

小さな石鹸のかけら。

ここに行き着くまでに何度失敗したことか。
何度やってもガチガチに固まって石鹸になってくれなかったそうです。

普通の企業だったら、たいして発注もしてくれなさそうな相手の商品のために、時間をかけて実験を続けるなんて、コストの問題からあきらめるところです。

そこが、まるは油脂化学が他の企業と違うところでした。

「ウチはどんなモノでも石鹸を作ってきた。あきらめない。」

まるは油脂化学は創業80年。
数え切れないくらい様々な材料を使って石鹸に仕上げてきました。その長い経験が、櫨蝋を石鹸にする道を導き出したのだと思います。

櫨蝋を100%使った石鹸も、必ずできると断言していました。

最初の試作でできあがった、小さな石鹸のかけら。

私も、まるは油脂化学の林社長も、これならできる!と確信しました。

しかし、まだ石鹸に仕上げるには、もう一つ問題がありました。

香りです。

その6につづく

櫨の石鹸プロジェクト
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櫨の石鹸プロジェクト その4 汚名返上へ

2014-09-12 09:19:22 | 櫨ものがたり
どんなものでも石鹸を作る。チャレンジする。

そのポリシーを持つ石鹸会社が、まるは油脂化学(株)です。

まるは油脂化学(株)は1932年(昭和7年)創業。久留米市で天然素材にこだわった無添加石鹸の製造を行っており、久留米で生み出される良品といえば、ここの石鹸をあげる人も数多くいます。

まるは油脂の創業当時、石油も物資もない頃に、なんと櫨蝋で石鹸が作られて市場に出回っていたそうです。

第二次世界大戦は石油争奪戦とも言われています。皆が石油に目を向ける中、時代から置いてけぼりになった櫨蝋。天災にも戦争にもほとんど影響受けない樹木は、当時はまだ多くの木が残っていて、ふさふさとした実をつけていました。

私は元製蝋業の方から、油脂不足の中で、櫨に目をつけて石鹸を作り始める人が数多くいたと聞いたことがあります。

しかし、なぜそのまま櫨の石鹸が作り続けられなかったのかはわかりませんでした。

どうして櫨の石鹸は作られなくなったのか。

まるは油脂化学(株)の林社長に聞くと、
「あの頃は、素人が勝手に知識もないのに石鹸を作ってたんだよ。櫨蝋はたまたま手っ取り早く使える油脂だったからね。」

当時、櫨蝋で作った石鹸は鹸化もまともにできていないドロドロとした悪質な石鹸ばかりだったそうです。

「ウチの会社は、そんな質の悪い櫨蝋石鹸を止めさせようと、他の材料でがんばって作ってきた会社なんだよ。」

悪い櫨蝋石鹸。

ただでさえカブれることで憎まれっ子の櫨が、石鹸となっても憎まれて歴史の渦に消えていたとは。

「あの頃は、みんなが櫨蝋というものをわかってなかった。きちんと櫨蝋を理解して作れば、良い石鹸ができるかもしれない。」

まるは油脂は創業以来、ありとあらゆる油脂で石鹸づくりをしてきました。

そしてそのポリシーは、
「どんなものでも石鹸をつくる。チャレンジする」です。

悪い櫨蝋石鹸をやっつけようと戦った石鹸会社が、80年の時を経て、今度は櫨蝋で一番良い石鹸を目指すことに同意してくれました。

今こそ、櫨が罵られてきた汚名を返上する時です。

「80年前にできなかったことにチャレンジする。原点に戻れるね。」

林社長は私が渡した試作用の櫨蝋を鼻に近づけて、匂いをかぎました。
「うん。油脂のいい香りがする。」

櫨蝋ときちんと向き合ってくれる社長が、そこにいました。

その5につづく

櫨の石鹸プロジェクト
その1はこちら。
その2はこちら。
その3はこちら

櫨の石鹸プロジェクト その3 酔狂な試み?

2014-09-11 05:57:29 | 櫨ものがたり
目的は、一番良い石鹸を作ること。
私はぼんやりとした夢から具体的な計画に向けて、最初の段階から見直すことにしました。

診断士の先生からの質問は続きました。
「石鹸のメーカーはどこにするの?」

難題です。

以前、小ロットで製作してくれる石鹸メーカーをいくつか紹介されて、あたってみたことがありますが、「櫨蝋」という素材が大問題になりました。

市場には様々な石鹸が出回っています。一般的には、お茶石鹸とか、柿渋石鹸とか、シルク石鹸とか、石鹸なんて簡単にいろいろできるじゃん、と思われるかもしれません。

しかし、それらの石鹸は、ベースの石鹸素地に何らかのお茶とか柿渋エキスなど、目的別にエキスを混ぜることで、石鹸のパターンを変えているに過ぎません。

ベースの石鹸素地には、パーム油、オリーブ油、椿油、牛脂…といろんな油脂が使われているのが一般的です。

ところが、櫨蝋という油脂を使った石鹸素地は、ほとんど作られていない…というか、皆無なのです。

櫨蝋の石鹸を作るということは、石鹸素地を変えることであり、石鹸づくりの根本を変えるということ。

それがどんなに難しいか。

大企業であれば簡単に自社で実験研究を重ねてできるかもしれませんが、
私の場合、石鹸作りはメーカーにお願いするしかありません。

私はいくつか小ロットでも作ってくれそうなところをあたりました。
しかし、わかったことは、櫨蝋主役の石鹸素地は通常の作り方では全くできないということでした。

櫨蝋と他の油をうまく配合して作ると、かなり良い石鹸ができますが、その石鹸では一般的な石鹸との差は大して変わりなく、櫨蝋は脇役になってしまいます。

櫨蝋が脇役でも、結果的に良い石鹸ができればいいじゃないかと言われる方がいるかもしれません。

しかし、私は良い石鹸ではなく、一番良い石鹸を作りたいのです。

以前販売していた石鹸がまさにそれ。

その石鹸は一般的な石鹸と明らかに違っていました。あの使い心地の良さは最高でした。特に泡立てネットで泡立てた時のモチモチ感はたまらなく気持ちよくて、他の石鹸では全然物足りないのです。だからこそ、手作りの形の悪い雑貨石鹸でしたが、ファンがついていたのです。

以前使って頂いていた櫨の石鹸のファンが満足できる石鹸を作りたい。

それは櫨蝋を主役にした石鹸です。

その思いは強まることはあっても、なくなることはありません。

以前の石鹸のレシピがわかればたやすいことでしょうが、レシピは石鹸の命。作った人の魂が入っています。

自分が新たに作る石鹸レシピは、自分で見つけ出さねばなりません。

そんなわけで、新しい素材「櫨蝋」で新しい石鹸を作ることは、ある意味、酔狂な試みともいえるし、冒険ともいえます。

そんな冒険に乗っかってくれるところ、そうそうあるわけもないのです。

ただ一社を除いては。

それが、まるは油脂化学(株)さんでした。
http://www.nanairo.co.jp

その4につづく

その1はこちら。
その2はこちら。


櫨の石鹸プロジェクト その2 石鹸と零戦

2014-09-10 06:49:03 | 櫨ものがたり
その日、私の補助金申請書を見た中小企業診断士の先生から聞かれました。

「この書類だと、石鹸の内容は全て石鹸メーカーのおまかせになってるね。」

「はぁ。私は櫨蝋をいっぱい使ってくれさえすれば、内容とか香りとかはメーカーにおまかせしようと思ってます。私はそのあたり、あんまり詳しくないし。」

先生は少し間をおいて、おもむろに口を開きました。
「私は最近、零戦の話を読んだんだよ。」

一瞬、私は面くらいました。
なんで石鹸の話してるのに、零戦の話?

先生は続けました。
「零戦はね、軍が要求書というものを出して作ったものなんだよ。それまでメーカーが作ったものをそのまま使ってたんだ。」

それを聞いて、なんだかガツンと殴られたような気がしました。

当時、他国の戦闘機よりも格段に優れていた零戦。初期の米英の戦闘機と優勢に戦い、米国戦闘機に「ゼロとドッグファイトを行なうな」という指示があったのは有名です。

それは使い手である軍の要求通りに作って何度も改良を重ねたから良いものができたのです。

私の脳裏に、すごい迫力で画面を横切っていく零戦の勇姿の映像が浮かんできました。「永遠の0」です。

もしメーカーにおまかせしてたら、零戦は日本海軍の主力戦闘機としてあんなにも活躍できたでしょうか。

いくら良い材料を良いメーカーで作ったからといって、あいまいな指示だったら、テキトーな商品しかできないに決まっています。

私は自分がいかに考えなしに行動していたかと思うと、とても恥ずかしくなりました。

その3に続く。

その1はこちら

櫨の石鹸プロジェクト その1 櫨蝋の使い道

2014-09-08 23:16:41 | 櫨ものがたり
櫨蝋の使い道は?といえば、和ろうそくが一番先にイメージされます。
しかし、割合から言えば、図のように和ろうそくは13%しかありません。

櫨蝋は櫨の実を搾ったままの「生蝋(しょうろう・きろう)」と精製加工した「白蝋(はくろう)」と大きく二種類に分けられ、未精製の「生蝋」は和ろうそくの原料となり、それ以外は全て「白蝋」になります。

つまり割合からいえば、実質的な櫨蝋の主役は「白蝋」です。

白蝋はその多くが海外に輸出され、貴重な天然油脂として医薬品や化粧品、工業用品の原材料になっています。ほとんど表舞台に立つことはなく、その特性が知られることもないのが現状です。

この白蝋を活かして櫨の魅力を伝えることができれば…。

そんな思いで私は櫨蝋のワックスを販売していますが、昨年まで雑貨石鹸も販売していました。ところが大変好評だったにも関わらず、残念ながら製造元である個人の都合により製造中止になってしまいました。

すでにリピーターになっていただいた方達からの声を聞くたびに、なんとかしなくちゃと心が揺れてきましたが、先立つものがないと商品開発はできません。

今までは、すでにあるものを受け継いだり、ちょっと工夫を凝らすことで商品にしてきましたが、石鹸となると話は違います。

石鹸のきちんとしたものを作ろうとすると、最低でも1,000個のロットが目の前に立ちはだかってくるからです。

もし売れなかったら、たくさんの在庫を抱えるハメになります。

しばらくの間、お金の算段もないのに夢のように考えが行きつ戻りつしていると、たまたま補助事業の公募を知りました。

「小規模事業持続化補助金」上限50万円です。

もしこの事業に採択されたら櫨蝋の化粧石鹸を作る夢が現実化されます。

迷う必要なく、さっそく商工会議所のセミナーを受けて書類作りに取りかかりました。

採択されるかどうかはわかりませんが、書類を作ることは夢を現実的な計画にする作業ともいえます。

石鹸を望むお客さんからの声を心の励みに、私はせっせと作った書類を診断士の先生に見せました。

しかし、先生は怪訝そうな顔で私に質問してきました。

その2に続く

よくばりミルキィ

2014-09-07 09:06:57 | 復活奮闘日記
9月6日(土)にKBCで放映された「よくばりミルキィ」です。
依布サラサさんと秋本かおりさんが、和ろうそくの芯作りから挑戦していただきました。

和ろうそくの芯の作り方にとても驚きながら、芯引きをして、ミニろうそく作りも。

とても楽しそうに体験していただいてよかったです。



きれいに灯っている様子も。



この秋、できたばかりの櫨染の帯あげも。
実はこのTV撮影のために福岡市に住む荒木美加さんから事前にお借りしていたのでした。

数分間でしたが、スタジオでToggyさんにもコメントしていただいて感謝感謝です。


KBC「よくばりミルキィ!」に出演

2014-09-05 09:56:58 | 今後の予定
明日、9月6日(土)9時30分~10時30分のKBCテレビ「週末まるごと!よくばりミルキィ!」で、和ろうそく作り体験を取り上げて頂くことになりました。
HP http://www.kbc.co.jp/tv/milkey/

先日、取材された時に依布サラサさんと秋本ゆかりさんと一緒に写真を撮ってもらいました。
お二人とも、TVで見る以上に、とても可愛かったです。
一緒に和蝋燭を作って、櫨のはちみつもパンと一緒に食べてもらいました。

どの程度映るかよくわかりませんが、福岡近辺の方は、よかったらご覧ください。

第三回櫨フォーラムのお知らせ

2014-09-01 18:08:50 | 今後の予定
9月20日(土)、朝倉市において「第三回 櫨フォーラム」が開催されます。
櫨の関係者が一堂に集まり、交流を深めてきた櫨フォーラムも、いよいよ今回で最終回となりました。

一回目には朝倉での櫨の歴史と植栽への提言、二回目は植栽の実績報告と接ぎ木技術の講演、櫨蝋クレヨンの初ワークショップ、そして今回は櫨苗育成の実績報告と櫨の伝え方をテーマにしました。

午前中の第一部には櫨蝋で手作り石鹸のワークショップを行います。石鹸は作ってすぐにお持ち帰りはできないので、参加者はあらかじめ8月に作っておいた石鹸を持って帰ることができます。材料費は1,000円です。石鹸の材料はかなり贅沢な内容になっています。講師は(株)ツツミプランニングの河北龍志氏です。

午後からの第二部は櫨植栽報告櫨の実収穫の現状と課題の報告があり、第三部では、櫨を様々な視点から語ってもらう時間にしました。

一つ目は河北氏からの化粧品開発会社から見たモクロウについてのお話。
二つ目は伝統の和ろうそく職人が語る櫨蝋。
三つ目は日本舞踊家が使う灯りの演出としての櫨蝋。

それぞれ違う方面からの櫨のお話が満載の一日になります。

櫨染の作品や櫨の関連商品も展示販売します。どなたでも参加できますので、どうぞおいでください。