日本演劇教育連盟(演教連)の事務局長を長らく務め、今年一般社団法人に移行してからは理事をされている市橋久生さんからはがきとお菓子が送られてきました。10月26日に開かれた佐々木博さんの『日本の演劇教育』を読む会(いずれブログで紹介するつもりです)に参加した折、ようやくミニコミ「啓」100号を手渡しすることができました。その「返信」といえるものです。
演教連で「啓」をとりわけ丁寧に読んでくれたのは冨田博之さん、石原直也さん、そして市橋さんということになります。
なお、この絵はがきは素敵な淡いトーンの馬車のある雪景色ですが、写真家は市橋織江さんで久生さんの姪御さんです。
■市橋久生さんからのはがき
「啓」発行100号達成おめでとうございます。43年にも及ぶお二人の情熱にただただ感服しています。ガリ切りの時代から思うと、歳月の長さ、社会の様相の変化に、いまさらのように感慨をおぼえます。毎号お贈りいただき、本当にありがとうございました。お礼申し上げます。
これからまたいろいろな活動をされるのでしょうが、当面は展覧会ですね。ご成功、ご盛会をお祈りします。では、次は会場でお目にかかります。おからだにお気をつけて…。
市橋さんは私と同世代で、元中学校の社会科教師でした。昔から詩作をされていて、早世された友人と私家版の詩集を出されています。詩作は継続されているようで、雑誌に掲載されることもたびたびあるということは、以前ブログで紹介したとおりです。そして、時々演劇教育の仲間に「詩・駄作」と謙遜されてメールで送られてきます。このメールはもったいなくてなかなか削除できません。そこでコメントも含めて2回分の詩を転載させてもらいます。
●2019年9月15日 「詩・駄作⑨」
土曜日、地元の保育園のまつり。
荒馬座が毎年協力して27回目とか、初めて行ってみました。
父親たちの働きぶりが意外なことでした!
日曜日、与野(さいたま市)のギャラリーのイベント。
近隣のいくつかの福祉施設の人たちの手作り物産の販売や作品展示、
協力する人たちのピアノ演奏やダンスなどでにぎわいました。
店主は沖縄出身の女性、沖縄料理の店で、高橋哲哉氏の連続講座や
こんにゃく座萩京子さんのコンサートなど、
興味を惹くさまざまなことを開いています。私も時折のぞいています。
時に自分で自分に活を入れないとボーッとしてしまいそうです。
というわけで、また駄作。どうぞ読み流してください。
はずむ杖
夕方の商店街、せわしく人が往き来する
ゆるやかに坂をなす通りを
白い杖の女が
口もとに笑みをうかべながらやって来る
夏の初めの風が吹く、ブラウスの袖に
少女が寄り添っている
水色のリボンをゆらめかせながら
買い物かごを下げて
少し前で、男の子がはずんでいる
母親の手をしっかりと握って
顔を突き出すようにして
雑貨屋の店先に、目が吸い寄せられる
足が止まる
白い杖が止まる
水色のリボンの揺らめきが止まる
頬をくっつけるように佇む二人に
ふりかえった男の子の
まっすぐな視線が美しい
声がはずむ
小さな笑い声が
しゃぼんだまのように宙にとぶ
夏の初めの風が吹く
ありふれた風景のなか
しあわせが
はずんでいる
●2019年10月15日「詩・駄作⑩」
みなさんこんにちは。
台風、犠牲者や被災者が大勢出てしまいましたね。
落ち着かない時間を過ごしています。
いろいろ考えてしまいます。
青年
駅へ向かういつもの朝
申し訳程度の緑がよそおう街
往来を縫って自転車が駆けてくる
褐色の青年がペダルを踏んでいる
ハンドルに伸びた腕
前傾姿勢の背筋を伸ばし
脚が伸びる
車輪がアスファルトをとび跳ねる
ほのかに雨の匂いをはらんだ空気
美学を欠いた大通りを
けさもすれ違う青年
異国の雑然とした街で
前方を見据える目
けさの空は
はるかな母国に広がっているだろうか
時おり見上げては故郷の木陰を想い起こし
頬をよぎる風に家族団欒のひとときが蘇る
すれ違う子どもたちの通学風景に
弟や妹の何気ない癖を思い出しては微笑む
排気ガスや建設音、投げ捨てられた空き缶に
町の匂いを懐かしむ
今日もか、今日はか
どこでどんな一日を過ごすのだろう
働きやすい職場だろうか
誇らしく仕事はしてるだろうか
人々は親しくしてるだろうか
この異文化の国
わが町
青年の目の輝きに出会いたい
美意識は何を誇りにしているのだろう
駅に向かう朝の街路
複雑な気持ちを置き去りにして
褐色の青年が駆けてゆく
演教連で「啓」をとりわけ丁寧に読んでくれたのは冨田博之さん、石原直也さん、そして市橋さんということになります。
なお、この絵はがきは素敵な淡いトーンの馬車のある雪景色ですが、写真家は市橋織江さんで久生さんの姪御さんです。
■市橋久生さんからのはがき
「啓」発行100号達成おめでとうございます。43年にも及ぶお二人の情熱にただただ感服しています。ガリ切りの時代から思うと、歳月の長さ、社会の様相の変化に、いまさらのように感慨をおぼえます。毎号お贈りいただき、本当にありがとうございました。お礼申し上げます。
これからまたいろいろな活動をされるのでしょうが、当面は展覧会ですね。ご成功、ご盛会をお祈りします。では、次は会場でお目にかかります。おからだにお気をつけて…。
市橋さんは私と同世代で、元中学校の社会科教師でした。昔から詩作をされていて、早世された友人と私家版の詩集を出されています。詩作は継続されているようで、雑誌に掲載されることもたびたびあるということは、以前ブログで紹介したとおりです。そして、時々演劇教育の仲間に「詩・駄作」と謙遜されてメールで送られてきます。このメールはもったいなくてなかなか削除できません。そこでコメントも含めて2回分の詩を転載させてもらいます。
●2019年9月15日 「詩・駄作⑨」
土曜日、地元の保育園のまつり。
荒馬座が毎年協力して27回目とか、初めて行ってみました。
父親たちの働きぶりが意外なことでした!
日曜日、与野(さいたま市)のギャラリーのイベント。
近隣のいくつかの福祉施設の人たちの手作り物産の販売や作品展示、
協力する人たちのピアノ演奏やダンスなどでにぎわいました。
店主は沖縄出身の女性、沖縄料理の店で、高橋哲哉氏の連続講座や
こんにゃく座萩京子さんのコンサートなど、
興味を惹くさまざまなことを開いています。私も時折のぞいています。
時に自分で自分に活を入れないとボーッとしてしまいそうです。
というわけで、また駄作。どうぞ読み流してください。
はずむ杖
夕方の商店街、せわしく人が往き来する
ゆるやかに坂をなす通りを
白い杖の女が
口もとに笑みをうかべながらやって来る
夏の初めの風が吹く、ブラウスの袖に
少女が寄り添っている
水色のリボンをゆらめかせながら
買い物かごを下げて
少し前で、男の子がはずんでいる
母親の手をしっかりと握って
顔を突き出すようにして
雑貨屋の店先に、目が吸い寄せられる
足が止まる
白い杖が止まる
水色のリボンの揺らめきが止まる
頬をくっつけるように佇む二人に
ふりかえった男の子の
まっすぐな視線が美しい
声がはずむ
小さな笑い声が
しゃぼんだまのように宙にとぶ
夏の初めの風が吹く
ありふれた風景のなか
しあわせが
はずんでいる
●2019年10月15日「詩・駄作⑩」
みなさんこんにちは。
台風、犠牲者や被災者が大勢出てしまいましたね。
落ち着かない時間を過ごしています。
いろいろ考えてしまいます。
青年
駅へ向かういつもの朝
申し訳程度の緑がよそおう街
往来を縫って自転車が駆けてくる
褐色の青年がペダルを踏んでいる
ハンドルに伸びた腕
前傾姿勢の背筋を伸ばし
脚が伸びる
車輪がアスファルトをとび跳ねる
ほのかに雨の匂いをはらんだ空気
美学を欠いた大通りを
けさもすれ違う青年
異国の雑然とした街で
前方を見据える目
けさの空は
はるかな母国に広がっているだろうか
時おり見上げては故郷の木陰を想い起こし
頬をよぎる風に家族団欒のひとときが蘇る
すれ違う子どもたちの通学風景に
弟や妹の何気ない癖を思い出しては微笑む
排気ガスや建設音、投げ捨てられた空き缶に
町の匂いを懐かしむ
今日もか、今日はか
どこでどんな一日を過ごすのだろう
働きやすい職場だろうか
誇らしく仕事はしてるだろうか
人々は親しくしてるだろうか
この異文化の国
わが町
青年の目の輝きに出会いたい
美意識は何を誇りにしているのだろう
駅に向かう朝の街路
複雑な気持ちを置き去りにして
褐色の青年が駆けてゆく