エピローグ

終楽日に向かう日々を、新鮮な感動と限りない憧憬をもって綴る
四季それぞれの徒然の記。

バンコク・NOW「洪水・・・人が溢れる街で」

2011年02月20日 | ポエム
バンコクの街角でぼくは、めくるめくような連想に捉われたのだった。



車が溢れ沸騰する街角で、ぼくは排気ガスに噎せかえりながら瞑想した。






        洪水・・・人が溢れる



      人が溢れる
      洪水が前にある
      自転車やバイクや
      それから
      人いきれや排気されるガスの
      腐った臭いが充満している街角で
      ぼくはきみと
      気の遠くなる口づけを交わしたのだった
      洪水の人の波は
      ぼくときみの二人には気づくこともなく
      通り過ぎ
      流れ去った

      ぼくはいま
      きみと手を繋がなかった事実に
      途方もない後悔を抱きつつ
      身を委ねている

      きみの手の甲や指が荒れていて
      悲しくなったとき
      きみの二の腕の思いもよらない柔らかさに
      埋もれてしまいそうになったとき
      きみを抱きしめた腕が滑らかさに
      震えたとき
      きみの項に口づけして甘さを感じ
      うっとりとしたとき
      いつまでも時間を忘れて唇を
      重ね続けたとき
      繰り返し繰り返しきみのくちびるを
      吸いつづけたとき
      いつのまにかきみの胸の膨らみに
      手がのびたとき

      きみはいやいやをしながら天使になって
      ぼくを包みこんだのだった

      この国の精霊たちが
      ぼくときみを引き離しても
      ぼくはきみを愛したことを
      忘れない
      ずっしりとした重みをもって
      ぼくはきみの存在と
      きみを抱いたときの感触を
      忘れることはない

      きみと二人で渡った
      川の流れが尽きても
      ぼくはきみを愛したのだ

      川が
      思いでという孤独を流し去っても
      きみはここに留まる
      ぼくの記憶というここに

      人が流れ
      それが洪水となっても
      ぼくはきみの思いでの中に留まり
      流されることはない

      いつまでもきみを抱き続けるのだから






だがしかし、ここはクルン・テープ「天使の都」である。
涅槃仏が口角を上げてぼくを見下ろしてほほ笑んだ。



きみを愛したのは間違いでなかった・・・と語りかけてくる。
天使の声で。
そう!笙の音色で云おう、ぼくはきみを愛したのだ。






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                     荒野人