「甘酒(あまざけ)」を知らない方は少ないと思いますが、勘違いしている方が意外と多いのかもしれません。
私も10年ほど前まではそうでした。子どものころの冬の寒い日、母親が酒粕を湯で溶いて沸かし砂糖と生姜汁を加えたものを飲ませてくれました。凍り付いた体が一気にポカポカになり、少しテンションが上がった記憶があります。酒粕に残ったアルコールの効用でした。それから数十年、その飲み物が「甘酒」だとずっと思っていました。
10年ほど前に酒蔵さんで造りの体験をした時です。そこで飲ませていただいた飲み物はまったくの別物でした。麹の自然な甘みと香りがとても心地よく喉をスルスルと通り抜けていきました。「これは何ですか?」と聞くと、「甘酒」ですとの答え。「では酒粕を沸かせたものですね」というと、「いいえ違います」ときっぱり。酒粕を沸かしたものは、そのまま「粕沸かし」というのだと教わりました。
本来の「甘酒」とは、麹で作ったお粥のようなものです。ですからアルコールはまったく含まれません。昔は冬場に日本酒を造る酒蔵の副業として夏場に作られていたそうです。「甘酒」にはビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、葉酸、食物繊維、オリゴ糖やシステイン、アルギニン、グルタミンなどのアミノ酸、そして大量のブドウ糖が含まれており、これらの栄養はいわゆる栄養剤としての「点滴」とほぼ同じ内容であることから、「飲む点滴」といわれています。
「甘酒」というネーミングがいけないという見方もあります。酒の一種、いわゆるアルコール飲料だと思われても仕方ありません。「麹ドリンク」という言い方がトレンドだという話を聞きました。なかなか良いネーミングだと思いませんか。
さらなる勘違いは、「甘酒」を温めて飲む冬だけの飲み物だと思っていたことです。
俳句では「甘酒」は夏の季語です。かつては夏バテを解消するための栄養ドリンクとして重宝され、江戸時代には「甘酒」の行商は夏の風物詩だったそうです。
そのことは、美味しい「甘酒」を冷やして飲んでみると納得できます。
信州北八ヶ岳山麓・千曲川上流、標高800メートルの高原の町、佐久穂町八千穂にある「黒澤酒造」さんは、自然で無添加の「甘酒」を作り続けている酒蔵さんです。先日エスポア加盟店の有志と訪問しましたが、美味しい日本酒が霞んでしまうほど、「甘酒」が人気を集めていました。
地元佐久穂産米100%でつくった蔵元手造り「あまざけ」。
原材料:米麹 のみ。
黒澤酒造さんは、冬場につくった麹を冷凍保存しているため、1年中この「あまざけ」を作ることができます。
さらに、もっとグレードを上げた「甘酒」がこちら
隣町である小海町産の「紫黒米(しこくまい)」を玄米のまま加えた甘酒「玉響(たまゆら)」です。
原材料:紫黒米、米麹 のみ
紫黒米とは、種皮や果皮にアントシアニン系の紫黒色を含む品種のことです。これは、飲むというより、紫黒米のモグモグプチプチとした食感が味わえるなんとも楽しい甘酒です。例えると、やさしい甘さのぜんざいを食べているようです。一度お試しあれ。
皆様も、自然派の「麹ドリンク」で今年の夏を元気に乗り切ってみてはいかがでしょうか。(O.K)