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情報セキュリティ、消費者保護、電子政府の課題等社会施策を国際的視野に基づき提言。米国等海外在住日本人に好評。

海外における新型インフルエンザ感染拡大の最新動向と新たな研究・開発への取組み(N0.1)

2009-06-04 12:24:09 | 海外の医療最前線

 

CDC:Images of the H1N1 Influenza Virus(2010.3.26)から引用

Last Updated: March 5,2021

 2009年4月30日以降、本ブログでは、世界的な新型インフルエンザ感染拡大にあわせ、わが国のメディアが十分にフォローしていない海外およびWHOといった国際機関の正確な情報の提供に努めてきた。


 日々のブログ内容更新の方法について検討していたところ、6月2日の朝日新聞「文化」欄で京都大学佐藤卓己准教授による「熟慮要する危機報道」と題した投稿を読んで、改めてわが国の知識人といわれる人のレベルの低さを感じた。(筆者注1)
 その点は別として、「ポリシー・アナリスト」である筆者があらためて本ブログで特定のテーマを連載する目的は毎回読んでいただくと理解できると思うが、著しい収入格差、医療格差、情報格差等および21世紀の人類が解決しなければならない疫学・感染症研究のモデル実験がまさに地球規模で始まっているのである。先進各国はその分析に早い時期から国をあげて取組んできている。

 この連載ではWHOや各国別に研究・開発の最新情報を取り上げて紹介し、この問題は決して個別国だけでは解決し得ない問題であること、多くの国の利害を乗り越えながら国際的な研究機関のコラボレーションの取組みが不可欠であるという考えを広く日本でも広げたいと感じたからである。なお、筆者は従来から取組んできた海外主要国の公的機関、研究機関との情報ネットワーク(通信社や一般メディア以外)の構築がほぼ完成したことも今回の取組みの背景にある。(筆者注2)

 なお、この連載は全14回にわたる(その他に関連ブログもある)。2019年新型インフルエンザ(COVID-19)の世界的流行が長期にわたり、終息の目途が立たない中であらためて人類のインフルエンザとの戦いの歴史を振り返りる意味で時々刻々と変わる情報を、筆者が専門外ながら追った模様を伝える意味で今回、見直したものである。(筆者注2-2)

1.わが国の最新情報
 2009年6月3日現在の厚生労働省の発表では、日本の新型インフルエンザ感染者数は、394人(前日比+9人)である。各都道府県別発生状況は厚生労働省サイト「新型インフルエンザに関する報道発表資料」で確認できる。
 なお、本ブログで紹介してきているとおり、毎日厚生労働省は国内発生情報を公表するが、公的な海外情報は国立感染症研究所サイトのみである。しかし実際調べるとなるとそう簡単ではない。今後の話もあるので順を追って説明しておく。
 例として首相官邸HPから入る場合で説明する。(6月4日午前8時時点) (筆者注2-3)
首相官邸を開く
②画面右「新型インフルエンザへの対応」を開く
③画面下「関連リンク」の中から「厚生労働省」を選択、クリック
④厚生労働省画面右「国立感染症研究所感染症情報センター(IDSC)」をクリック
(画面右に「世界の状況WHOフェーズ 5」とあるがこれは今「フェーズ5」であると言うだけの内容である。)
IDSCの「インフルエンザパンデミック(Pandemic Flu)」の画面右「インフルエンザ関連:新型インフルエンザ(ブタインフルエンザA/H1N1)」をクリック
⑥「世界の報告数(WHO発表)」の画面にたどり着く。

 ただし、その情報は2.で説明するとおり、WHOの最新情報(6月3日発表分)ではない。最新情報はあらためてWHOのホームページに直接リンクするしかない。一方、米国CDCや英国(保健省健康保護局:HPA)の専門サイトはWHOの発表と数字と同期が取れている。また欧州疾病対策センター(European Center for Disease Prevention and Control:ECDC)域内の加盟国と域外の国の情報を分けてまとめている。その他フランス政府のインフルエンザ専門サイト「インフルエンザ・パンデミック(PANDÉMIE GRIPPALE)」は世界の各地域を分けて独自の統計や拡大傾向を分析している。特に、同サイトにリンクするフランス国立公衆衛生監視研究所(Institute de Veille Sanitaire)の収集情報に基づく最新感染世界地図をみたら前記佐藤氏はどのようにコメントするであろうか。

2.WHOの最新発表情報
 WHOの公表感染者数(2009年6月3日世界標準時6時現在)(update43)のデータに基づき累計確認感染者数が100人以上の国のみ紹介する。(多い順に並べ替えた) IDSC訳
全体の数字は66か国、累計感染者数は19,273人(うち死者は117人)である。

「国名」、「累計感染者数」、「6月1日比増加数」、「一部の国の専門サイトへのリンク」の順に記載した。

①米国:10,053人(+1,078人):CDC、②メキシコ:5,029人(+0)、③カナダ:1,530人(+194人): PHAC(公衆衛生庁)、④オーストラリア:501人(+204人): DHA 、⑤日本:385人(+15人)、⑥英国:339人(+110人):HPA(健康保護庁) 、⑦チリ:313人(+63人)、⑧スペイン:180人(+2人)、⑨パナマ:155(+48)、⑩アルゼンチン:131(+31)(筆者注3)

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(筆者注1)そこに見られる現状分析(原文を引用したいが某ブログが紹介しているので略す)は非科学的でかつ専門分野の「メディア史」から見ても研究者としての基本線がずれているとしか言いようがない(自説に都合の良い引用しかない)。
いちいち個別に反論を書いている時間が勿体ないので省略するが、同氏はWHOを初めとする海外の各国の取組みの厳しい現状をどの程度理解されたうえで発言されたのか、極めて疑わしい(今回のH1N1報道と関東大震災時の「流言蜚語(りゅうげんひご)」と同一の問題として比較する等現状認識が甘いし、研究者としての国際的視野に基づく自己検証機能が明らかに欠落している)。重ねて言うがWHOの事務局長マーガレット・チャン氏の総会スピーチや米国CDCのアン・シュカット部長の記者会見での発言をあらためて読み直して欲しい。

(筆者注2)平日平均300近い主として欧米等からの情報受信のピーク時間は、午前0時から3時頃である。睡眠時間はどうするのか・・「企業機密」である。この情報ネットワークにより日本にいながらにして海外メデイアと同時タイミングで最新情報がリアルタイムで入手できるし、海外のデスカッション・グループとの情報共有も可能となるのである。)

(筆者注2-2) わが国の厚生労働省はCOVID-19への対処などに参考とすべく2011年3月31日までのH1N1に関するすべての情報をまとめたサイト「新型インフルエンザA(H1N1)pdm09 対策関連情報」を立ち上げている。

(筆者注2-3) 2009年6当時のアクセス手順であり、2021年3月時点でWHOやIDSC原アーカイブ・更新データにあたる手順(URL)を以下概観する。なお、IDSCサイトではWHO原文と訳文が同時に確認できる。

【WHO】

https://www.who.int/csr/don/archive/year/2009/en/

【IDSC】http://idsc.nih.go.jp/disease/swine_influenza/rireki.html

(筆者注3) この時期、南半球にあたるオーストラリア、チリ、アルゼンチンの感染者数の増加が気になる。この点はフランスの“Info’pandémie grippale”も指摘している。

〔参照URL〕
http://www.who.int/csr/don/2009_06_03/en/index.html

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